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ブレイブマン・イレギュラーズ  作者: 尾沖泣栗
5/25

濁したっていいじゃないか

誤字脱字の修正はそのうち行います。

「それで、目的地は?」


「目的地は崩都ギルザリアでありますが。」


ヒバナへの問いかけに答えたのは首をかしげる蝋人形。


「最終的にはそうだが、妾らにも体力や気力というものはある。野営続きでは体が持たなくなることもあるだろう。まずはギルザリア方面にある街や安全な集落を目印にするべきだ。」


「?あぁ、いえ。是は確かに生物の身体ではないため体力や気力は関係ありませんが、そういった観点からの質問ではございません。」


「む?」


疑念をあらわにするヒバナをよそに、蝋人形は左手で自らの頬を大きく横に押し広げて、空いた右手を肘もとまで喉奥へ突っ込み始める。


「うぇぇぇ!?なっ、何してるんですか!?」


「|ががごぼごがぼがぼばぶ《さがしものであります》。」


「さっ、探し物らしいですよ。」


「え?!言ってることわかんの!?」


やがてその腕が引き出されたころ、手には1枚の紙が握られていた。


「あ、昨日の紙。」


昨日机に置かれていた1枚の紙。その表面は身分を証明するものだった気がする。


「この紙は通行手形の役割をしているのであります。是達はこれによって街や関所を通ることが許可されているのでありますが……非達は裏面を読んだでありますか?」


「え?裏面?」


裏面なんてあったんだ〜。そんなつぶやきに何も答えなかったが、ヘカーテもルーシフェルもヒバナも同じ考えだったのだろう。当然、僕を含めてみんなで蝋人形のもつ紙へ視線を近づける。


「契約書?えーとなになに?」


皆を代表して読み上げ始めたのはヘカーテ。


「この通行手形は国からの支給品ではなく貸し出し品である。紛失や破損をした場合は然るべき手続きにしたがって罰せられる。また、貸し出し費の担保として馬車、騎手代を当てているためそれらの支給はない。そして、この通行手形の所有者であるルーシフェル、ローディアス、ヒバナ、チヨコ、シディ、ヘカーテの上記六名には通行手形の利用料金として崩都ギルザリアの調査を終えるまで毎月……30万ギルグの支払いを命じるぅ!!?」


「はぁぁぁ!?ウッソだろ!?おいまじかよ!!」


蝋人形の手から勢いよく紙を剥ぎ取ったルーシフェルは裏面に顔を近づけてギロギロと素早い動きで書面を読んでいく。


「……ははは、ジョーダンきちーぜおい。」


「時間をかけるには莫大な資金と移動手段の確保が必要な状態であります。今の是達にはそのような手段はないと断定したため、ギルザリアへ直行すると考えていたであります。」


「でっ、でもでもローデっちって馬車の仲介してたんでしょ?なんかいい感じに用意できたりしないかな?」


縋るような目をするチヨコへ差し出せるのは力なく頭を左右に振ることだけ。


「仲介っていっても色々あって、僕がやってたのは馬車が欲しい人と馬車でお金を稼ぎたい人のセッティングだったので……力になれなくて申し訳ないです。」


「藁にもすがれねーってか、どうすんべこれ?」


チヨコとヘカーテ、そしてルーシフェルはアレやコレやと案を投じあっているが、眺めている所どのような案も可決されることなくほっぽりだされている


「三十万ギルグとは如何ほどだ?」


「えっと、イノシシ1頭倒してお肉と皮取ったとして……上手くいけば一万ギルグくらい?だから月30頭以上殺せば返せるけど……そんなことしたら生態系滅茶苦茶だしぃ、そもそも移動費とか食品とか宿泊代とかもあるし……絶望的じゃね?」


3本の足先を、器用に1本ずつ折り曲げて数えるチヨコは次第にうつろな瞳になっていく。


「……ハメられてたんですよ、最初から。」


「へ、ヘカーテ?」


ゆらりと怪しげな雰囲気を纏ってヘカーテは再び頭蓋骨を被る。


「要は体の良い金脈なんですよ私たち!支払いが続けばシンプルに儲かる!支払いが滞れば亜人は使えない無能だと世間に示せる!支払いに手一杯でギルザリアへの偵察がおざなりになれば、国からの温情を貰いながら私腹を肥やす堕落者集団に早変わり!!クソみたいなトリックアート構造のど真ん中なんですよ私たちは!!!」


叫んだ勢いそのままにどこからともなく現れた毒々しく不気味なデザインをした杖で、地面に妙な文様を描き始める。


「ふっ、ふふふふっ!舐めたこと後悔させてやりますよ!こっちは筋金入りのネクロマンサー……足をつけずに人を呪う方法なんて五万とあるんです。けひひひひ……金玉ねじ切ってやる。」


地面の模様が赤く光り始めたのを、どうにか足で蹴り飛ばして模様を消す。


「一旦、一旦落ち着こう!ヘカーテ!強さと優しさは!?」


「……はっ!?すっ、すいませんローディアスさん。私、カッとするとすぐ呪いに走っちゃって……。」


「知りたくなかった二面性だな。」


それぞれが顔色を変えるなか、蝋人形は静かに口を開いた。


「付け加えるならば、支払いは毎月の25日なのであと3日しかないであります。」


「終わりだ、終わり。解散。」


もうどうにでもなれと投げやりにルーシフェルは口を開く。


「ローディアス、ギルグとはこれか?」


ちょいちょいと突かれた肩の方に振り返れば、ヒバナが麻袋を手に屈んでいた。


「昔、たまたま滞在していた村に獣が姿を現したときに倒してな、感謝の印だと村人達から幾らか貰った事がある。基本的に自給自足で旅をしていたのでな、ギルグという硬化の価値はよくわからんが。」


手渡された麻袋はヒバナが持つと小さく見えたが、手渡されると存外重く大きかった。


「じゃあ説明しますよ。ギルグっていうのは王都フレスタット独自の硬化で、色によって価値が分けられてます。この一番小さくて石みたいなのが一ギルグ。その次に多少大きくて銅色のが十ギルグ。そして、銀色のコレが百ギルグ。一際大きい金色のは五百円ギルグ。この黒色のやつは千ギルグで、硬化の中じゃ一番高いんですよ。」


麻袋から一つづつ取り出して、ヒバナに見せていく。……にしても、だいぶあるな。


「ヒバナさん、ちょっとコレ全部出してみていいですか?」


「構わん。もとより金に執着はないからな。返済の足しになるなら使ってくれ。」


「あはは、それは流石に申し訳なさすぎますよ。けど、皆で出し合う目標金額にでもなればいいですけどね。」


そういって麻袋から硬貨を1枚づつ並べていくのであった。


「神様仏様ヒバナ様!!どーか我々貧しい民にお恵みくださぁい!!」


地面に頭を擦り付けて懇願するのはルーシフェル。その横にはチヨコもヘカーテもならんで頭を下げていた。


「まっ、まさか四十九万ギルグあるとは……。」


麻袋の上の方が安めの硬貨だったばっかりに期待していなかったが、いざひっくり返してみればほとんどが黒色の千ギルグであった。


「大きな都にでもすまなければ基本的には自給自足の生活でございますから、村人達が金を余しているというのはよく聞く話であります。」


「にしたって、余しすぎっしょ。……ってほら、シディちゃんも頭下げなきゃ!!」


長く伸びた羽がシディの頭にそっと触れ、その後結構な勢いでグインと頭を押し出す。首だけが曲がりシディの目線が地面を向いているがチヨコはそれに気がついていない。


「なるほど……これが懇願の姿勢でありますね。」


「ひっ!首折れお化け!!」


「是は霊魂種ゴーストではなく擬人種であります。」


「ネクロマンサーがお化けにビビんのかよ……。」


「ですから、是は擬人種であります。」


静かに訂正を繰り返すシディをよそにヒバナは口を開く。


「手元に残った金で馬は用意できるのか?」


「馬一頭だけなら用意できるんですけど、この人数となると二頭は必要になりますね。それに、かなり大きめの荷台も必要ですね。」


「ふむ、その場合は幾らいるのだ?」


目をつぶり、指を折り数えてみる。馬一頭が大体十五万、それが二頭で約三十万……荷台は長旅になるので頑丈な方が良いだろう。手堅くいくなら大体十万くらいが目安になる。他にも旅に必要な道具を諸々加味して……


「ざっと……四十五万ギルグ。」


「ふむ、足りんな。」


そのつぶやきにそれ以上の意味はない。故に現実というものは重々しくのしかかる。


「是から一つ提案がございます。」


「え?シディちゃん?って何その首!?ヤバすぎでしょ!」


「是はヤバすぎではなく擬人種であります。」


自らの頭部を掴んで、思い切り引き動かす蝋人形はバキバキと音を立てて、ようやく首が座る。


「最低金額四十五万ギルグを一晩にして稼ぐ方法がございます。うまくことが運べば、六十……ともすれば百万も視野にはいるであります。」


「そっ、それって合法ですよね?」


「いえ、違法であります。」


蝋人形はおどおどとしたヘカーテの問いかけをバッサリと吐き捨てる。


「おいおい、流石に犯罪者になるつもりはねぇーぜ?」


「どうやら誤解を招く言葉をセレクトしてしまったようであります。正しくは、脱法……格闘賭博であります。」


「格闘……昂ぶるな。」


ニヤリと好戦的な笑みを浮かべるヒバナ。


「フレスタット名物、サーカスですか。殺し以外なんでもありの異種格闘技戦……確かに名目上は演劇なので脱法ですけど、私たちで出場して八百長するってことですか?」


「いえ、出場は是だけです。」


「まて、妾も出たいぞ。戦場が違えばそこには毛色の違う猛者がいるもの……。ペアでは駄目なのか?」


「駄目というわけではありませんが、効率よく稼ぐには是だけが出場する形が理想的であります。」


薄紫の瞳が威圧的に開かれ、蝋人形へ近寄るが蝋人形は目を背けることも、首を曲げることもなく真正面から向かいたつ。


「ふむ、きかせてみろ。話はそれからだ。」


出張で執筆しているので投稿ペースはヤバいです

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