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ブレイブマン・イレギュラーズ  作者: 尾沖泣栗
20/25

名誉挽回同盟

数字が漢字だとかアラビアだとかの統一は諦めました、いつもの

「ローディーさん!」


地面に伏すローディーへ駆け寄り、即座にスカートを引きちぎる。それを布代わりにするが、肩口から丸々腕がなくなってしまったので何処で巻けば止血が出来るか分からなくなってしまった。


「終わったか?……ローディー、どうした?」


「ッ、カージェス!早くこちらへ!」


ソレこそがどこまでも愚かな行為かさえ想像もせずに、焦燥にまみれた声を放ってしまう。


「はぁい、御嬢様。下名が参り……おっと。」


「なんだ!?なにがあっ……ローディアス?」


「う、嘘でしょ……?」


目が集まった。


天使と、不老者と、鳥人の。


『…………っぎゃ』


「カージェスッ!!」


不老者は命令とさえ取れないソレを聞き、的確に動き出した。わずかに地面に残った泥。それが機微を見せたと同時に不老者は足の裏で踏みつける。


『…………ぎゃぎゃ』


誰一人としてミスを犯さなかった。捕食者は的確に魔物を食い殺し、本来ならばソレが復活することなどあり得なかった。不老者は指示を最速で理解し、最善の手を打った。天使も鳥人も、そして地に伏す存在者も。誰一人として欠けていては成立しなかったオペレーション・ダミーフッシャーは、ただ一歩だけの敗走を期した。


「……渡り、鳥……。」


はじめから、オペレーション・ダミーフッシャーには見落としがあった。だから、最善の手を尽くしたところで結果は変わらない。


『ぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃ』


散らばった泥が集まり、空に向かって汚れた翼を広げる。まるで、大空の自由を知る鳥のように。


「『そして天使は顕現する(ラ・シンフィスタ)』!」


羽ばきによって置き去りにされた羽が主の後を追うように白羽が何枚と舞い上がるが、泥の体に触れると同時に白は侵され池に落ちる。


「クソっ!」


「させませんよ。」


木を蹴飛ばし、空高く飛び上がった不老者が泥の鳥を覆うように両腕を広げる。そこに鳥は突撃するが、べチャリと空で離散して不老者を抜けてまた形を取り戻す。


「ッ、くっそ!」


ついぞ出す手がなくなり誰かの後悔だけが残された。


「……ローディっち。」


片腕を失った存在者を見下ろすように、鳥人は口を開いた。


「ごめん……ウチのせいだ。」


鳥人はさえずる。


「今は責任問題を考えてる場合じゃありませんわ!早く止血を!」


「……狩りが失敗するときは、いつも誰かが死ぬんだ。ウチだって馬鹿じゃないからさ、分かるよ。」


「はぁ?何が言いたいんだよ、それ。……ンなのまるでッ!」


声を荒げる天使の口を血に塗れた羽が閉ざす。


「助からない。ローディっちは、ここで死ぬ。」


「……おっしゃる通りかと。」


誰よりも体を壊すことに長けていた不老者も理解していた。ローディアスのこの状態は、自分では再生の段階に届いていると。


「ッ、私の……約束、は。」


誇り高き捕食者の教示にソレは深い傷を残した。


「……クソッ!」


天使の気高き信仰にソレは罰を突きつけた。


「……。」


不老者の在り方にソレは否定を突きつけた。


「……同盟、だもんね。」


ところで、オペレーション・ダミーフッシャーには大きな見落としがあった。


「……なにを?」


ソレは、泥人形が渡り鳥であった事を忘れていたことでも、捕食者の能力では不安が残ることでもない。


「っぐぁぁああああ!!!!」


チヨコという狩人の可能性をケガで排斥したことである。


「おいっ、やめとけ!」


両腕の羽が上下を繰り返す度に血が伝い、地面にまき散らされる。何枚もの羽が抜け落ちて、様々なものを落としながら狩人は空に舞い上がる。


「っぐぅ、はぁはぁんぐっ……はぁはぁ!!」


一等背の高い木を超えて狩人は猟銃を構えた。左足の爪に銃身を乗せて、右足の爪を引き金にかける。その様は全くもっておかしいもので、銃を撃つというのに狩人はスコープをのぞかない。


「……ふぅ、っ、ふぅー。」


狩人が育ったのは極寒の地。そこでは雨のように雪がふり、生きるためには他を殺すしかなかった。


「っ……。」


あまりの寒さに弓の弦は凍り、引けば切れてしまう。故に猟銃という独自の武器を作り上げたのだが、そこでも問題は生じた。


「……。」


豪雪につき、並の火薬では湿気で使い物にならなくなってしまう。故に、協力な火薬を用いるのだが、銃を撃った際の衝撃が余りにも強すぎるためその反動に使用者が耐えられない。加えて、火薬の爆発は大したもので一度撃てばその轟音により、周囲の生物は皆逃げ去ってしまう。一度でも外せば食事にありつけなくなる世界で、余りにも不便な武器。


「……すぅ。」


余談になるが、齢10歳から狩りに参加し村を出るまでの約15年間、銀世界の狩人は一度たりとも銃弾を外したことはない。


「……弾丸を突きつける(テイク・ユア・ハート)。」


爆音。それ以上の言葉はないほどにその音は凄まじかった。ドカンだとかボカンだとかそんなチープな音ではなく、もっと強烈なそれでいて乾いた音であった。


「……ごめんね、ローディアス。」


その反動をすべて受けて、狩人は空で吹き飛ばされる。ピタリとも動かない羽は未だ鮮血を垂らしながら、狩人を落とす。その遥か先、銀色の鉄に撃ち抜かれた泥の鳥と同様に。


「名誉挽回、できなかったや。」


視界が暗転したのは、地面に激突する前であったか、後であったか。


「……。」


そこは暗いというよりは、光がないというのが正しい表現なのだとおもった。


「……ここは?」


本当にそんな間の抜けた感想がでるのだと、思わず笑ってしまいそうになる。


「……。」


まず立っていたのが分かった。次に前方にいるのが、そして最後には自分が捕われていることが分かった。


「あ〜、なんで忘れてたんだろ。」


「そりゃ、ここでの記憶はここでしか保たれないからにゃあ〜。外にでたら丸っと忘れる……ちゅ〜か記憶の保存先が別口って感じだからにゃ〜。」


手枷につながれた娘一人が、不自然な語尾でこちらへ声をかけてきた。


「そのくせぇ語尾やめろって。にゃ〜にゃ〜にゃ〜にゃ〜、年食ったらキツイんだぞ!」


ソレを咎めるように男一人が声を上げる。


「……僕たちだけ、かな。」


「そうだな。ん?そういやお前、なんでここ来たんだよ?」


「死んじゃったんじゃない?」


「わはは!お前どんくさいもんなぁ!」


腹の底から声を上げて笑う男は足枷に繋がれていた。


「で?腰を据えてくか?」


「やだよ、ココ臭いんだもん。」


自分の目を覆うようにかぶせられた枷に手をかざして力一杯掴む。


「にゃ〜、アタチがサボれるようによろしくにゃ〜。」


「はぁ……もう起こしてあげられないんだからちゃんと起きてよね。」


目を覆う枷を引きちぎると同時に土臭さが鼻孔をくすぐった。


「……うそっ。うそうそうそうそっ!?」


「おや。……もしや同種だったのですか?《《ローディアス》》様は。」


「うおおお!!マジかよ!!……ったく、生き返って喜ぶなんて、天使としちゃ失格なんだぜ。マジで。」


パチりと目を覚まして、両腕を使って立ち上がる。


「……うん?あっ!敵は!?」


「おっ、おぉ……。」


「おお?」


くぐもった嗚咽につられて振り返れば、ボロボロと大粒の涙を流して立っているジェネリアの姿があった。


「うおおおおおん!よかったですわ、よかったですわぁ!」


鼻水を垂らしながら号泣するジェネリアの姿が一気に空気を弛緩させ、もしかしてと思いつく。


「……敵、倒した?」


「ずびっ、うん!倒した!」


鼻っ柱を赤く染めて、チヨコはコクリと頷く。


「ん!」


「へ?」


丸められた三叉の足がスッとこちらに向かって伸ばされる。


「名誉挽回同盟、快挙だよ。」


「……うん。何が何だかよく分かんないけど、倒したんなら快挙だね。」


そこに丸めた拳を突きだして、コツンと軽くはじき合う。


「それで……その、誰か状況を教えてくれない?」


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