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オレンジボイス 〜底辺声優(♂)ですが、女装して美少女の声を演じています〜  作者: 乙希々


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28/112

お金がない……。

 果たして、難あり女〝性〟アイドル声優二人と、これまた訳あり女〝装〟アイドル声優との密かなる食事会、もとい女子会から次の日。僕は平日の昼間から何をするでもなくアパートの部屋でだらーんとしていた。

 

 ときにあれから散々だった。今思い出すだけでも胃がキリキリ痛くなる。


 東雲は例に漏れず平常運行、仏頂面&毒舌だったし、ももちゃんはももちゃんでそんな超塩対応にも一切めげず、持ち前のJK(女子高生)というか、KY(空気読めない)で、常に場の空気かき乱すもんだから、もうどんどん状況が悪くなる一方で……。


 まあ、それでも東雲にしてみれば、思いのほか自分を慕ってくれる後輩声優のことは満更じゃない感じで、かろうじて帰り際に連絡先の交換はしたようだけど。


 てな感じで、なんともむずがゆい空気のまま食事会はお開きとなったけど、結果的にあれはあれで良かったんじゃないかな……自分の役割は最低限果たしたということで。


 ──って、今はそんなことよりも、


「ああ、金がねぇ……」


 ちなみに今の全財産はたったの数千円、預金通帳に至っては、ほぼ残高ゼロ。これでは家賃どころか食費もピンチ。先日バイトがクビになったのがマズかった。今唯一の収入源である声優のギャラもまだ当分入金されないし。


 ここ最近は仕事関連(女装関連)で出費が重なったしな……くそ、昨日調子に乗って女子会の費用全持ちするんじゃなかった。いくらコスパが良いファミレスでも結構な額が吹っ飛んだよ。


(……ん、でもまぁ当面の間、食費は家にあるカップ麺とかで凌ぐとして、問題は月末に振り込む家賃だよな──)


 幸いなことに次のアフレコ収録は数日先なので、スマホでポチポチと日雇いバイトを探してみる。でもなかなかいいのが見つからない。こういうときは肉体労働が主なのだが、当の自分は体力が並の男よりも貧弱なので、仕事の選択肢が限られてくる。


「──お、これだったら自分、案外イケるんじゃね……」


『勤務時間要相談。その日払い。出来高によって割増有り、


 〝男の娘〟メイド喫茶花いちもんめ』



「──って、流石に駄目だろこれは!?」


 思わずスマホを放り投げて頭を抱える。いくら極貧とはいえ、これ以上男としての尊厳そんげんを失うのはご免だ。


「………………」


 となると仕方ない……頼るべきは血の繋がりがある身内のみ、だからといって本当はこんなこと「金を貸してくれ」なんて頼むべきではないけど「背に腹は代えられない」という先人たちの名言を八城雛月やしろひなづきボイスで呟きながら、スマホを手に取り耳を傾かせる。


「もしもし姉さん、僕、登輝だけど……今大丈夫?」


『うん、平気だよ? 登輝くんから直接電話なんて珍しいね? どうしたの?』


 良かった……姉さんは基本営業職なので、こういった急な電話でもすぐに出てくれる。この手の話し(借金)は、メールとかじゃなく、直に会話した方がいいからな。


『ええっと……その、姉さんに込み入ってお願いがあるんだけど』


『……もしかして、お金のことだったり?』


「へ……なんで分かるの」


『へへ、それはわたしがお姉ちゃんだから、登輝くんのことなんて何でも分っちゃうよ』


 実の姉だからはともかく、普段滅多に連絡してこない弟からの頼みなんて、厄介ごとが起きた(痴漢冤罪)か、もしくは金銭絡みだと大体予想はつく……実際その通りだし。


「面目ありません……実は今月分の家賃が厳しくて、その……」


『うん、OKだよ。お姉ちゃんが出して上げるよ』


「あ、ありがとう!」


 助かった……ホント持つべきものは実の姉だよ。これで男の娘メイド喫茶に身売りしなくて済む。


『た、だ、し、一つだけお姉ちゃんのお願いを聞いてくれる?』


 お願い? この際、何でも聞いてあげるつもりだ。たとえアパートの合鍵をよこせとか言われても、まことに遺憾ながらも要求に応じるつもりだ。実際、家賃が未納だと部屋から強制退去だしな……あの東雲でさえいつでも出入り可能だし……つうか、忘れてた。奴から合鍵取り戻さないと今後大変なことになりかねない。


「部屋の合鍵だったら、いつでも渡すけど?」

「え? 本当に!」

「あ、今のはナシで……」


 今の感じだと、姉のお願いとはアパートの合鍵ではなかったらしい。だとしたら一体何だろう?


「登輝くん、明日の晩、ちょっとお姉ちゃんに付き合ってもらいたいの」

「明日は特に収録はないから別にいいけど?」

「良かった〜、それじゃあ明日の18時に登輝くんのアパートに迎えに行くね!」


 アパートに迎えに来る? 何だかとても嫌な予感がする。


「明日は楽しみ〜」

「へ? 楽しみって……明日は一体何処に、」

「あ、ごめん、もうそろそろ時間かも、それじゃあねー」

「ね、姉さん……、」


 これで今月の家賃は何とかなりそうだ。それと当面の生活費も。


 それでも僕は、姉に借金を頼み込んだ後ろめたさよりも、今後自分に降りかかるであろう受難に対しての不安をひしひしと感じながら、通話が途切れたスマホの画面をいつまでも眺めるのであった。


(──って、何かヤバいフラグが立ちまくってるんだけど!?)


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