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オレンジボイス 〜女装してアイドル声優になった結果、周りが地雷だらけで詰んだ件〜  作者: 乙希々


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お金がない……。

 ──最強最悪、アイドル声優ヒロインズと女装男子(一応アイドル声優)による女子会という名目の魔女の宴から次の日。


 僕は平日の昼間から、アパートの部屋でだらーんと出しっぱの布団に転がっていた。

 

 ときに、あれから散々だった。今思い出すだけでも胃がキリキリ痛くなる。


 終始、仏頂面&毒舌オンパレードの某東雲綾乃。そして小倉ももに至っては、持ち前のJK(女子高生)スピリットいうか、KY(空気読めない)で場の空気をかき乱すもんだから、もう状況が悪くなる一方で……。


 うーん。それでも東雲にしてみれば、思いのほか自分を慕ってくれる腹黒……いや、可愛い後輩のことは満更でもなかったらしく、かろうじて帰り際に連絡先の交換する程度には軟化したようだけど。


 結局、何とも言えないむずがゆさを抱え、そのまま現地解散、お開きとなったわけだが、結果的にはあれで良かったんじゃないかと思いたい。……少なくとも、百合畑の仲介役としてノルマは果たした。


 ──って、今は悠長な一人反省会をしている場面じゃない。


「ああ……金が、ねぇ……」


 ちなみに今の全財産は二千六百八十二円(あえて漢数字)。ちなみに預金通帳の残高は──察してほしい。


 つまり、生活費が完全に枯渇している。先日、バイトをクビになったのが完全に裏目に出た。唯一の収入源である声優の微々たるギャラも、当然のことながら、まだ振り込まれていない。


 ここ最近は仕事関連(主に女装道具)で出費が嵩んだのも痛い。……くそ、昨日調子に乗って全額負担するんじゃなかった。いくらコスパ最強のファミレスとはいえ、結構な額が吹っ飛んだ。


(……ん、でもまぁ、当面の食費はカップ麺で凌ぐとして、問題は家賃の振り込みだよな──)


 幸いなことに次のアフレコまでは数日の空きがある。スマホをポチポチと日雇いバイトを漁ってみるが、なかなか条件に合うのが見当たらない。こういう時の定番は肉体労働なのだが、あいにく僕のステータスは最弱だ。仕事の選択肢は限られる。


「──お、これだったら、案外いけるんじゃね……?」


『勤務時間要相談。即日払い。歩合によるインセンティブあり。


 ──〝男の娘〟メイド喫茶、花いちもんめ』



「──って、流石に駄目だろこれは!?」


 スマホを布団にぶん投げ、頭を抱え悶える。いくら極貧の崖っぷちとはいえ、これ以上男としての尊厳そんげんを失うのは御免被る。


「………………」


 となれば仕方ない。頼るべきは血の繋がった身内のみ、本当なら「金を貸して」なんて泣きつきたくない。だが「背に腹は代えられない」という先人の言葉を八城雛月やしろひなづきボイスで呟きながら、スマホを耳に当てる。


「もしもし、姉さん? 僕、登輝だけど……今、大丈夫かな?」


『うん、平気だよ。登輝くんから電話なんて珍しいね。どうしたの?』


 良かった。姉さんは営業職という職業柄、急な着信でも反応が早い。この手の交渉(借金)は、文字より声で、直談判した方が勝率は高いはず。


『ええっと……その、姉さんに込み入ったお願いがあるんだけど』


『……もしかして、お金のことだったり?』


「へ……なんで分かるの」


『ふふん、だってお姉ちゃんだもん。登輝くんのことなら何でもお見通しだよ』


 姉弟の絆というより、滅多に連絡してこない弟の用件なんて、厄介ごとに巻き込まれた(痴漢冤罪)か、金銭絡みの二択だと踏んだのだろう。……実際そうだし。


「面目ありません……実は今月の家賃が厳しくて、その……」


『いいよ、OKだよ。お姉ちゃんが出してあげる』


「あ、ありがとう……!」


 助かった。持つべきものはデキる姉だ。これで男の娘メイド喫茶に身売りしなくて済む。


『た、だ、し。一つだけ、お姉ちゃんのお願いを聞いてくれる?』


 お願い? 


 この際だ。仮にそれが「部屋の合鍵をよこせ」的な要求だとしても、応じるしか生存フラグが成り立たない。家賃を滞納すればアパートから強制退去、文字通り路頭に迷う。それにあの東雲でさえ、自由にいつでも不法侵入……てか、忘れてた。奴から早急に合鍵を回収しておかないと、この部屋自体が立ち入り禁止の事故物件になりかねない。


「……部屋の合鍵だったら、いつでも渡すけど?」

「え? 本当に!」

「あ、今のはナシで……」


 今の食いつきを見るに、姉の要求は合鍵ではなかったらしい。だとしたら一体何をさせる気だ。


「登輝くん、明日の晩、ちょっとお姉ちゃんに付き合ってほしいの」

「明日? ……んまあ、特に収録はないから、別にいいけど……」

「良かった〜、それじゃあ明日の18時に、登輝くんのアパートまで迎えに行くね」


 アパートに迎えに来る? 何だかとても嫌な予感がする。


「明日は楽しみ〜」

「へ? 楽しみって……一体どこに──」

「あ、ごめん、そろそろ時間かも、それじゃあねー」

「ね、姉さん……!?」


 ツーツーと、通話終了。


 うん。これで今月の家賃と、当面の生活費は確保できた……。


(──って、これ完全にヤバいフラグが立ちまくってるんだけど!?)

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