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オレンジボイス 〜底辺声優(♂)ですが、女装して美少女の声を演じています〜  作者: 乙希々


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22/111

優秀な姉? と愚弟のソナタ ①

「──弟が大変ご迷惑をお掛けしました!」


 夜の交番にて、ひたすらお巡りさんの前で謝る我が姉──神坂三鈴かみさかみすず、二十七歳。


「ほら、何してるの! 登輝くんもさっさと頭を下げなさいっ」

「すす、すみませんでした……」


 そんな姉から、ぐいぐい無理やり頭を押さえつけられる、愚弟の僕。


「いえいえ、弟さんは特に罪を犯したわけではありませんので……」


 そう、お巡りさんの言う通りだ。僕はただ単に店先で、知り合い(ここ大事)の女子高生に挨拶がてら声を掛けただけであって、それを痴漢と勘違いをしたアルバイト店員が110番通報し、あれやこれやと駆けつけた強面の警官らに「ちょっと君、交番で話を聞こうか」と、お決まり文句で任意(ここも大事)同行させられただけである。


 ちなみにくだんの女子高校生──アイドル声優の〝小倉もも〟に至っては、騒ぎの合間にいつの間にやら店内から姿を消していた。


 それは当事者としてどうだろう。


 ……でもまぁ、同じ業界の身としては、あまり表立った行動を避けたいのは分かる。それが警察沙汰なら尚更だよな。ま、そのおかげで僕もすぐに無罪放免って訳。何しろ被害を訴えるべき人物が現場に居合わせていないのだし。


「──今日は散々だったね……お姉ちゃんは登輝くんのことを信じてるよ?」


 交番から離れたところで一度立ち止まった姉が、僕の右腕にしがみつきながら言った。


「ね、姉さん、今日はありがとう。僕の身元引受人になってくれてさ」


 と言いながらも、そんな何処ぞのバカップルみたいな腕組みから、何とかして抜け出そうとする僕。とはいえ、細身で華奢きゃしゃだけど、身長が170センチ近くある姉を、160センチちょいの非力な自分がジタバタ足掻いても、簡単に振りほどけないのがツラいところだ。


「もう登輝くん、なんで今まで言ってくれないのかなぁ〜。言ってくれたらいくらでもお姉ちゃんのを触らせてあげたのに〜」

「言ってる意味がわかんないんだけど!?」

「ええ〜、お姉ちゃんの方が高校生のなんかよりも立派だよ? それでまた登輝くんが痴漢で逮捕されちゃったら……」

「そもそもそれが誤解だって……つうか、全然僕のこと信じてないよね?」


 その見た目こそは、ふわりとしたセミロングの目鼻立ちが整った美人顔で、リクルートスーツをバッチリ着こなしたバリバリのキャリアウーマン──って、感じだけど……まぁ、実際に東京の一流大学を卒業し、そのまま都内の一流会社に就職した極めて優秀な姉ではあるが、一応は血の分けた唯一無二の僕から言わせてもらえば、ただのショタ好きなオタク女子にしか見えない。


 そうは言っても、結局そんな姉のおかげで、実に職業があやふやな僕であっても、意外とあっさり警察の任意聴取から解放されたのも事実だ。もしも緊急に姉が駆けつけてくれなかったらと思うと今更ながらゾッとする。たとえ冤罪とはいえ、下手すれば所属事務所に解雇されていたかも知れない。


 そうこうしているうちに、姉は僕の二の腕を絡めたまま、空いてる手をブンブンと振り走行しているタクシーを呼び止めた。


「今日はこのままタクシーで家まで帰りましょう」

「え……本当に?」


 それは正直助かる。タクシーで帰宅など、今の自分では金銭的に無理。かと言ってこのまま満員電車を乗り継いでアパートまで帰るのもしんどい。だからここは素直に姉の好意に甘えよう。



「──ええと、なんで姉さんが僕と一緒にアパートの前で降りてんの?」

「ん、もちろんお姉ちゃんが登輝くんの部屋に泊まるからだよ?」

「なるほど……って、泊まるの!?」


 それから何故か浮足の姉と連れ立ってアパートの階段を上った。


 こういうときのために女装関連の諸々は普段から押し入れの奥底に隠してあるのでそのへんは安心だ。だから突然の姉の闖入ちんにゅうにも慌てる必要はない。今までの失敗を活かした教訓だ。


 この僕が女装しながらアイドル声優をやっている事実は、決して姉に知られてはならない。


「──つうか、夕飯なんも買ってないけど」

「だったらウー◯ーで頼みましょ。お姉ちゃんが何でもおごちゃうから」

「え……マジで?」


 と、和気あいあいとしながら、僕は部屋のノブに鍵を差し込んで……、


(あれ、鍵が開いてる……鍵を閉め忘れたっけ? って、電気が付いてる──)


 で、ゆっくりとドアを開けた──が、すぐに閉めた。


「あれ、登輝くん。中に入らないの?」

「へ? あ、ああそうだ、ねね、姉さん下着とか歯ブラシとかあるの? 無かったら近くのコンビニで買ってきたほうがいいんじゃ──」

「じゃじゃーん! 何とお姉ちゃんはお泊りセットをちゃんと用意してるのです!」


 と言いながら、勝手に部屋のドアを開けようとする我が姉君。僕はそれを無理やりさえぎる。


「ねぇー、そんなに慌ててどうしたの? エッチな本だったら、お姉ちゃんは別に気にしないよ?」

「それだったらこっちが気にするわっ」


 ガチャリ──、


「もー、さっきから一人で騒がしいわね。帰ってきたのならさっさと中に入ってきなさ、」


「!?」

「え……誰?」

「…………あ」


 僕、姉、そして部屋から顔をひょっこり出した──東雲。


 そのまま三人とも、その場で凍りついた……って、どうすんのこの状況!?

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