表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オレンジボイス 〜底辺声優(♂)ですが、女装して美少女の声を演じています〜  作者: 乙希々


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

104/112

新規カット、ですか?

 ──己の声優人生を揺るがしかねないほど波乱に満ちた『終末アオハル』の最終アフレコ(あとついでに魔女裁判もどき)から、およそ二週間が過ぎた。その間、紆余曲折(詳細は割愛)こそあれ、日々はただ、いたずらに流れていく。


 ……が。


 ついに本日、恐れていた事態が起こってしまう。




「──あの……追加収録、ですか?」

「ええ、制作側からの要望です」


 マジか。


 今朝、腹黒……いや、敏腕マネージャーの柏木さんから連絡が入って、まあ嫌な予感はしていたが、案の定、急いでぎゅうぎゅうの満員電車に駆け込み、周りから好奇の目に晒されながら所属事務所に来てみれば──これだ。


(──やっぱ録り直しか。んでも、よくよく考えれば、いっそ録り直してくれた方が……)


「何でも新規カットを追加するみたいですね」


「……へ?」


 と柏木さんの次の言葉に、僕の能天気で甘々な思考は即座に寸断された。


「し、新規カット──って、録り直しじゃないんですか!?」

「そうですね、新たに五分ほど尺を増やし、それを個別で収録する形になります」

「尺を増やすって……」


 前回の収録で、確かにオールアップ(全部の収録が終了)したはずなのに。いや、まさかとは思うけれど、例の《《アドリブ》》のせい、とか……?


「それも、神坂君が演じる『佐伯比呂』がメインの新規カットみたいですよ? 事務所としては嬉しい限りです」


 比呂がメインの新規シーン、だと? 絶対、あのアドリブ(ざまあ)のせいじゃん。


 しかも、それをベースに公式が新たなシーンを作り出したってこと? んなバカな……。


「えー、本当ですか、やったー(棒読み)」


 とはいえ、胡散臭い笑顔の腹黒メガネに、自分のやらかしを悟られてはならない。事務所解雇、それこそ声優人生が詰む案件だ。


「と、ところで柏木さん、個別の台本とかは、もうもらってますか?」


 てか早く、その新規カットとやらの内容を確認せねば。


「台本ですか? もちろん頂いてますよ」


 柏木さんはそう言って、ファイル(結構分厚くね?)を目の前に差し出した。


 恐る恐るファイルを開くと、びっしりと書き込まれた台詞の数々。つうか、これで五分の新規カット? しかも、ほとんどが佐伯比呂の台詞──モノローグ(独白)ばっかじゃん。


 傷心。


 悲しみ、絶望。


 これらを短期間で仕上げて、完璧にお芝居しろと?


 んな無茶な。


「……分かりました。やります」


 いくら無茶でも、これは僕が招いた事態。責任を持って、自分は最後の瞬間まで最高の「佐伯比呂」を演じ切らなければならない。本当、最後の最後まで容赦ないな制作陣。あと目の前の腹黒メガネも。


「それで、収録はいつですか?」

「明日です、朝からスタジオ入りしてください」

「あ、明日ぁっ!?」


 くそっ、よりによって明日の朝かよ……ってことは練習時間がほとんどねえじゃん。


「じゃ、じゃあ、柏木さん、僕、すぐに帰って台本読みしてきます!」


 急いで台本のファイルを、漆黒の痛バッグに詰め込んで荷物をまとめる。


「はい、頑張ってください。ところで神坂君、今日は一段とキュートな格好ですね〜。何か心境の変化でもありましたか?」

「ないです!」


 速攻否定し、ニヤニヤとイケメンスマイルを浮かべる柏木さんを背に、慌ててオフィスを飛び出した。


「ちくしょう、あいつら(特に某悪役令嬢)、覚えてろよ……!」


 そう、あの悪夢のような魔女裁判で無残にも《《有罪》》判決となった僕は、今後一ヶ月間、外出時には榊美琴さかきみことプロデュースの地雷系フル真っ黒コーデ(魔女だけに)が義務付けられてしまった……のだった。


 それを律儀に守る僕も……まあ、大概だけど。


(ああくそっ、スカート短すぎっ! 走るとパンツが見え──)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ