父さん ついにアイドルデビューするんだ -04
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ログライブハイパーフェスでシークレットゲストとして耶摩シダレが出た。
しかも3Dモデル初お披露目もあった。
このことは日本だけではなく全世界のSNSのトレンドに入ったくらい話題になった。
会場でも休憩時間になっても観客のどよめきは収まらず、興奮の様相を見せていた。
そんな中、僕は控室に戻り、出演が終わった父さんを待った。
しかし数分経っても、父さんは戻ってくる気配がなかった。
スタッフやメンバーと話し込んでいるのかなと思い、僕は廊下に出た。
すると
「父さん!?」
廊下の途中で倒れこんでいる父さんを発見した。
「タケシか。すまんなちょっと手を貸してくれないか」
「わ、分かった」
僕は父さんの身体を腰から持ち上げる。
「痛くない? 大丈夫?」
「ああ、アドレナリンが出ているのかライブ中は痛みは不思議と無かったんだ。だが、終わった後にどうにもな」
「痛みがあるんだね。分かった」
僕は父さんの目の前でしゃがみ込む。
「じゃあ背中に乗って。病院に行くよ」
「うむ」
父さんが僕の背中に覆いかぶさる。
「よっ」
父さんを背負い立ち上がる。
……軽いな。
「タカシ、いつの間にか大きくなっていたんだな」
父さんがそう呟いた。
その言葉で実感する。
「そりゃもう20歳ですから」
昔、背負ってもらっていた父さんを背負えるようになった。
大人になった。
だけど。
今でも父さんの背中は大きいままだ。
「ねえ、父さん」
僕は出口に向かいながら、父さんに話しかける。
「ライブ楽しかった?」
「うむ。楽しかった」
「Vtuberなって……ログライブに入ってよかったと思った?」
「うむ。本当は最初はどうしようかと戸惑っていたのだがな、今ではよかったと思っている」
「そっか。……ねえ、父さん」
僕は笑顔で、父さんに告げた。
「さっきの父さん、最高にアイドルやっていたよ」
「その言葉は素直に『うむ』とは言えないな」




