靄(もや)13-2
「でも、急にそんな物を持ち出してどうしたんだ?ただ俺に見せたかっただけか?」
ノヴァはレノに聞く。
「あぁ、見せたかったのもあるんだけどそれは口実さ。実はね、"いいもの"を他にも持ってきたんだ。今度は何だと思う?」
「最初にそんな物出されちゃ見当もつかないよ。宝石でもくすねて来たかい?」
レノは一瞬硬まったが頭を素早く左右に振って言った。
「近からず遠からずってとこかな、へへ」
ノヴァは驚いた。
「お、おい。まさか国宝級の物なんか持ってきてないよな?勘弁してくれよ」
「そうじゃない。そうじゃないんだけど、そうかも知れない」
「どういうことだよ。結局何を持ってきたんだ?」
レノは先程同様にポケットからある物を取り出してゆっくりノヴァに見せた。
それは鍵だった。いかにも古そうで、でもしっかりとした成形と立派な装飾がされている。
「これは、何の鍵だい?」
レノは恥ずかしそうに言い淀む。
「こ、これは、その、城のある部屋の、鍵で、えっと」
「城の部屋の鍵?そんなもの持ってこられても俺は一緒に行けないぜ。城の中には俺は入れない。俺にはただの豪華な鍵でしかない」
「そうだよね。持ってきておいて何だけどよくよく考えてみるとそうなんだよ。失敗したな」
「でもさ。ある部屋って何の部屋なんだ?」
レノは言うか言わまいか悩んだ。しかし自慢気に持ってきた手前、言わざるをえなくなってしまった。
「…これは、その。ぜ、絶対今回の事は誰にも言わないでくれよ、」
ノヴァは笑いながら返す。
「いつもそうしてるだろ。心配しないでよ」
レノは生唾をごくりと飲んで言った。
「これはね、"お兄様"の部屋の鍵なんだ」
レノは意気込んで打ち明けたが、ノヴァは真顔だ。
「それで?その部屋にお宝があるの?」
「い、いいかい。これはお兄様の部屋の鍵だ。でも、正確には部屋の鍵じゃあない」
「レノ。一回落ち着いてくれよ。さっきから言ってることがトンチンカンだぜ?全く理解出来ないよ」
「ご、ごめん。正確に言うね。この鍵は"フラッグ"お兄様の部屋の鍵なんだけど、今はガチガチに封じられてて、表からはとても入られないんだけど、裏口がその部屋にはあって、そこの鍵なんだ。これでどうかな」
ノヴァは急に現実味が襲ってきて小刻みに震え出した。
「お、おい、お兄様って、あ、あのフラッグ様の部屋かよ。ていうか、それなら部屋の中は空っぽなんじゃないのか?」
フラッグは父であるジャスティン王に逆らい、自ら命を絶った。あのジャスティン王がいくら息子と言えど反逆者の部屋、私物をそのままにしておくだろうか。
「聞いた話なんだけど、父上もお兄様の物を一切捨てようとしたんだ。だけど、普通に捨てたら周りの目が気になる。お兄様の人気は凄かったからね。そんなところを見られたら反乱が起きるかもしれないと思ったんだって。燃やそうとしても煙が立つし、海に投げ捨てても、漁師なんかに拾われるかもしれない。ほとぼりが冷めたら捨てるつもりだったんだろうけど、部屋の扉に巻かれた鎖や錠は埃と錆で何年も触られてない」
「そうなのか。でも裏口って、普通の部屋に裏口なんかないだろう?台所の勝手口じゃあるまいし」
「お兄様の部屋は二階なんだけど、その部屋にはベランダがあって、昔はそこに非常階段が付いてたんだ。でもお兄様が亡くなってから用途が無くなって取り壊された。ベランダへの扉は鉄製だったし、今やその扉から入る者も居ない。って事で鍵だけかけてあるって訳なんだよ。それがこの鍵なんだ」
「何となく話はわかったんだけど、そのベランダ用の扉にどうやって入るんだ?二階なんだろう?」
レノは頷き満面の笑みで両手を腰に当て仁王立ちだ。
「そこで!ノヴァ、君の力を借りたい!のだ!」




