闇12-7
「質問を変えよう。何故マーレン国を攻める」
フラッグの質問にドゥは面倒くさそうに答える。
「あのなぁ。それ、お前等に関係あんのか。負け犬がしゃしゃり出てくんじゃねぇよ」
ブライは食いしばった歯から出血しそうだ。
「答えたくないなら答えなくていい。俺等はなんと言われようと目的を達成出来ればそれでいい。質問ばかりで悪かったな。お前等は質問ねぇか?最期だからなんでも聞いてやるぜ」
ブライの挑発にドゥは乗りかけたが、自制し穏やかに返す。
「いや、質問は無ぇ。忠告はある」
「そうかい。上から目線が気になるが聞いてやるよ」
「一つ。お前等はここで俺等を倒せない」
ブライは鼻で笑ったが、フラッグは真顔だ。
「二つ。マーレンはお前等にくれてやる。倒せるならな」
フラッグは真顔だ。
「三つ。俺等の船を取った気でいるかも知れねぇが、お前等の船は大丈夫か?俺はそれが気掛かりでならねぇんだ」
ブライは真顔になった。そしてライズもドゥを見たまま硬直している。フラッグは恐る恐るドゥに尋ねる。
「そなた。何故そんな事を憂う?」
ドゥは飄々と答える。
「いやいや。ただ気になったんだ。お前等が上陸するなら西側だよな?だが先に俺等の部隊が上陸してた。そいつらを倒してここまで来たって言うならお前等も安心だ。でもよ。俺等の部隊が生きてたら?俺等の部隊に第二陣があったら?マーレンがその間に西側を防いでいたら?逃げ場がないのはお前等。そうだよなぁ」
ブライとフラッグは不安を抱いた。しかし、そんな事はあるはずがない。全てドゥの妄想、仮説に過ぎない。
ドゥは続ける。
「そういう不安要素を俺達は考えるようになった。考えられるようになった。それは覚えておけよ。脳筋集団に知恵がついたら…う〜恐ろしい」
これまでのスンクとは明らかに違う。力には知恵で対抗する事が勝ち目だと考えていたデスガルゴンに、スンク軍が巨人化し覆いかぶさるように思えた。
「とりあえず俺等は船に戻る。この戦いは目的が見えねぇ。マーレンの奴らを倒せばこの四国は俺等のもんだと思ってた。だがお前等が来た。こんなんなら戦い始める意味もねぇ。だよな?ブライさんよ」
敵を前に力ではなく言葉で抑え込まれたブライはわなわなと震えている。ここで矢を射っても殺す事は出来ない力の持ち主。それに、侮っていた知恵の面であっさりと丸め込まれた。このままみすみす見過ごしてたまるか…と思うが良い方法が浮かばない。
溢れ出す怒りと悔しさ。どこにも吐き出せないでただ立ち尽くしていた。その時だった。
「ならさ、一つ提案してもいいかな」
ブライの背後からライトが現れた。
「お、お前、下がってろって言ったじゃねぇか…何しに…」
ライトはブライを無視して続ける。
「その前にさっきあんたが言った三つの忠告に答えてあげるね。まず一つ目の、ここであんた等に勝てないってのは贔屓目に見ても有り得ないね」
「どういうことだ」
聞き返したのはドゥではなくライズだった。
「このまま引き返してもいいけど、船、もうないよ」
フラッグはライトを二度見した。ライズはドゥの前に出る。
「君。もう一度聞くぞ。どういうことだ?船がない?沈めたとでも言うのか」
「まぁ待ってよ。二つ目のマーレン軍を倒せたらこの国をくれるってやつ。それも無理だ」
皆が皆、混乱し始めた。ブライは恐ろしくなってライトに駆け寄る。
「おい、ライト。いくらはったりとは言え、見え見えの嘘じゃはったりにならねぇぞ」
「そう言われてもなぁ。嘘じゃないし」
ブライは頭を掻きむしる。フラッグは何とも言えない表情だ。
「三つ目の僕らの船がどうこうってのは心配に及ばず、まだ西の海岸で待機してるよ」
ライズは抑えきれずに大声を出した。
「君は何なんだ!?これは戦争だぞ!子供の喧嘩じゃない!根拠もないでたらめは…」
「でたらめじゃない。事実だよ。確かめてみたらいいよ。自分達の船に戻ればいい。僕達の船を見に行けばいい。マーレン軍を"探せば"いい」
「待て。マーレン軍を探すとはどういうことだ」
「本隊はもう居ないよ。逃げたんだ。君達の船を奪ってね。その理由は僕達がマーレン軍の船を焼いちゃったからっていうのと、東海岸に君達の船が停まってて警備が手薄ってのを僕達が教えたから」
ライズの額は血管がはっきりと浮き出ている。
「貴様ら…何がしたいんだ!掻き回すだけ掻き回して…どれだけ人が死んでいると思っている!」
「その逆でしょ。もう戦う目的がなくなったんだからここで終わり。そうでしょ?大将さん」
ライトはそう言いながらドゥを見た。ライズもドゥに振り返る。
「それじゃあ何か。俺等が逃げ場ねぇってことか。降伏しなきゃお前等とマーレン軍にやられるわな。そういう事だろ?」
ライトはにやりと笑う。




