闇12-6
「ドゥさん。ここは一旦落ち着きましょう。今の状況で戦うのは得策じゃあない。この闇夜が逆に不利になってしまった。退きましょう」
ライズは勝算がないと判断し退却をドゥに勧める。
「おいおい、逃げろってのか?そもそも、ここまで来て逃げられるのか?」
「それはどういうことです?」
「気持ちの問題もあるけどよぉ。状況的に見てもう退路は塞がれてるんじゃねぇのかって話だ。俺の勘だが奴らは俺らに逃げて欲しいんじゃねえかな。言っとくが俺の勘だ」
ドゥは思った。わざわざこのスンク軍の眼前に姿を現すものだろうか。マーレン軍の様に物陰から飛び道具で遠距離攻撃をしてくるのが一番無難。弓矢を使ってはいるが見える位置からの急所を狙った攻撃だ。今確認出来ているのは二人。あとどれくらいいるだろう。もう回り込まれているかも知れない。ならやり合うか。
ドゥは今までこんなに考えて戦った事はなかった。このライズが来てからだ。経験に基づく知識と思考が向上している事を自覚し、少し可笑しくなった。
「ライズさんよ。もう少しおしゃべりしてみようか」
「な、何を呑気な…でも、貴方からそんな提案を受けるとは。嬉しいです。少し、ですが」
ドゥはニヤッとし、ブライらに向き直る。
「ブライ、とか言ったな。てめぇら何がしてぇんだ?」
ブライは構えていた弓矢を下ろす。
「さっき隣の奴が言ったろ。戦わなくていいように戦う」
「それは分かった。俺等を滅ぼす気か?」
「それはお前ら次第だ。やる事やってはい、すみませんでしたじゃ済まねぇぞ」
ドゥは冷静だ。
「お前はアミーユの奴か。ってなるとやっぱり復讐だよな。綺麗事言わずにそう言えよ」
ブライが徐々に熱くなっているとフラッグは察し、割って入る。
「そもそもそなたらは何故アミーユを襲った。動機は何だ」
「生態系の維持だ。それ以外は無い」ーーーーー
マルベス領の三国、マーレン、スンク、ルボンにはそれぞれマルベス国からの圧力がかかっていた。標的はアミーユだ。
スンクにはアミーユをいち早く侵略すればアミーユの統治ならびに種族、国家の安全保障をすると提案されていた。マーレン、ルボンに遅れをとった場合はマルベスの完全統治下とし、国内への軍隊駐屯、政治介入、年貢の様な厳しい増税等、植民地化を行うと脅された。今までは貿易や同盟条約など友好関係にあったが、スンクという地名、人種、歴史を丸呑みにしようとしている。戦う事で、失う物よりも得る物の方が大きいと判断しスンクは刀を抜いたのだった。
一方、マーレンへはルボン国がアミーユ国と同盟を組んだ上で侵略を企てていると噂を流した。アミーユはノア国領なのでルボンは謀反を起こす事になる。四国随一の軍隊を持つマーレンへ討伐を命じた。その暁には経済支援の強化、貿易緩和、そしてアミーユ国の統治を委ねるなど、手厚く保障するといった内容で半ば泣きついてきた様な提案だった。マーレン国としてはここで成果を挙げ、恩を売り、領土を拡大する絶好のチャンスだと意気揚々にルボン国を侵略した。
そのルボン国へはマルベスより朗報が入った。
四カ国の中で最も貧しいルボンは自国内でひっそりと自給自足を行なっていた。だが経済面は危機的状況で国内は貧富の差が如実に表れていた。国王を中心とした貴族は市民から目を背け悠々自適な生活を送る中、一部地域はスラム化し、強奪、暴漢、薬物使用で荒れ果てた。そんな状況を見かね、マルベスからの経済支援並びにマーレンから軍隊による食料をはじめとした物資の供給と医療・農業・建築業を中心に人材派遣を行い、国内情勢の立て直しを図るというのだ。疲弊しきったルボン国民は他国の関与を疑問視したが、現状打破には必要な措置だとそれを受け入れる。まさか戦争を仕掛けられるとは努々思わなかった。その結果、手も足も出ず滅ぼされたのだ。
マルベスは敵国ノアに比較的近いこの四カ国、更にバスを含んだ五カ国を手中に収め睨みを利かせノア国を徐々に追い詰めようと企んだのだ。




