闇12-4
「シャル、ここまで来て鉢合わせたのは西海岸の見張りだけだぜ?東は相当守りを固めてるんじゃねぇか?」
西から上陸したスンク軍別隊は二手に別れ、隊長のシャルは王城を目指していた。
「だからと言って王城の警備が薄いなんて事はないだろうよ。こっちの目的は王だ。やり合おうなんて思うなよ?見つからない様にじっくり進むぞ」
「あーやっと外に出たってのになんだか調子が出ねぇな。こんなにあっさりでいいのかい」
東海岸から上陸したドゥ率いるスンク軍本隊は一人も欠けることなく徐々に内陸へ攻め込んでいた。マーレン軍の弓や投石による攻撃を受けながら、正確には受け流しながら距離を詰めていた。
「こいつら、やっと出てきてやったのに全然対応できねぇじゃねぇか。頭数も想定よりだいぶ少なそうだぞ。何やってんだかねぇ」
「恐らく長時間の警戒で集中力を欠いているのと、我々の船が囮だと勘ぐって他の海岸へ散開、調査をしているのでしょう。何ともアブレイユらしいミスです。上手に掌で踊ってくれています」
ライズはゆったりと最後尾を守りながら指示する。マーレン軍は連携が崩れ攻撃の間隔が空き、隙だらけだった。スンク軍のスピードがそれを凌駕し接近戦に持ち込み、一網打尽という状況である。攻め急ぐ事はせず確実にマーレン軍の兵力を削いでいく。
「うぉあー!やられたー!」
スンク軍先頭で叫び声が聞こえる。
「よし!やったか?」
マーレン軍は疲弊しながら放ち続けた矢がやっとダメージを与えたと少し綻ぶ。それも束の間、スンク軍はにやにやと身体に刺さった矢を自ら引き抜いた。
「あのなぁ。こんなんで一喜してたらいけねぇよ。よくもまぁ俺達と戦おうと思ったもんだ」
それを見たマーレン軍の上がった口角は引きつっている。
「本当に戦争やってんのか?反吐が出そうだ」
スンク軍はグイグイと兵を押し上げる。マーレン軍は絶望の淵に立たされていた。
「こんなんじゃ挟み撃ちするまでもねぇわな。はははは!」
東海岸に構えたマーレン軍はあっという間に駆逐されてしまった。後ずさるマーレン軍の向こうにいくつかの人影が見えた。
「あちゃー。合流しちまったみてぇだな。もう勝ち目しかねぇ。おーい!お前ら。待たせた…」
そう言いかけたスンク軍先頭の兵士の額をとびきり早い矢が射抜いた。
月明かりに照らされた丘に立っていたのはブライだった。




