闇12-2
「失礼、ドゥさん。そろそろ日の入りです。準備は整ってますね?」
「おう、ライズさんよ。うちの連中は今か今かとうずうずしてんだ。本当に落ち着きがねぇ奴らだよな」
ドゥはいつもの椅子ではなく、地べたに胡座をかいて腕組みをしていた。
「そういうあなたは逆に落ち着いていますね。まだ少し時間があります。お話があれば聞きますよ」
ライズはマーレン国の地図を畳みながらドゥに聞いた。
「あんたはスンクの人間じゃあねぇ。でもなんで俺達の軍師になったんだ」
「それは前にもお話しましたでしょう」
「悪ぃな。俺も出来が良くねぇからすぐ忘れちまうんだ。改めて聞かせてくれや」
ライズは溜息をつきながら畳んだ地図を胸元にしまった。まだライズとドゥの目は合っていない。
「私は確かにスンクの者じゃない。体形や顔つきからして明らかです。戦術を学ぶなかで理想の軍隊とは何かを自分なりに突き詰めました。導き出した答えは様々ありますが、ドゥさん含めスンク軍の能力が私の戦い方に一番近しかった。言い方は悪くなりますが貴方がたを使いこなせるかは私自身の能力の問題です。でもそれができれば戦乱の世で生き残り、勝ち残れる可能性が最も高いと判断したんです。それをあなたは受け入れてくれた。そうでしょう」
ドゥは視線を動かさず、ただ一点を見つめて聞いている。
「聞こえは悪いが私は私が生き残るための選択をしたまでです。貴方がたに協力していただき、それを利用させていただいてます」
「そうだったな。まぁ俺らは勝てりゃいいんだ。勝てりゃ、な」
ドゥはおもむろに立ち上がる。
「ライズさん。俺らが戦う理由を言ってなかったな」
ライズはやっとドゥの目を見た。
「そうですね。一方的に私の思想を押し付けてしまって申し訳ない。お聞かせ願いますか」
ドゥは仁王立ちし両手を腰に当て天を仰ぎ目を閉じていた。
「知っての通りだがスンクは他の国の連中とは違う人種だ。それを誇りに思っている。そしてそれが俺らの生き甲斐であり、使命だ。もし戦争で負ければ奴隷にされて酷使され、人権も取られ、スンク人は絶滅してしまうかも知れない。その瀬戸際だと常に危機を感じている。柄に合わないかも知れねぇが俺もびびってんのよ。何十万年の歴史が消えちまう。怖ぇよな」
ライズは黙っている。
「絶滅していった動物は沢山あるだろうよ。ただヒトが絶滅しちまうってのはまた違った感覚だと思うんだよな」
「まぁ、それは確かにそうかも知れませんね」
「だからよ。負けられねぇんだよな。何も俺達はこの世界を征服したい訳じゃねぇ。生き残りたいだけなんだ。その為にここは一つ、俺らに手を貸して欲しいんだわ」
ドゥは初めてライズの目を見てニッと笑った。
ライズは照れくさそうに背を向け部屋のドアに手をかけた。
「さぁ、出陣しますよ。スンクの力を見せつけましょう」




