闇12-1
「おい。ここまで待って出てこないならよ。これはやっぱり難波船じゃないのか」
「そうかも知れないが、アブレイユ様はこちらから仕掛ける事はせず、ただひたすら待てと仰っている。我慢と緊張の糸が切れた時が敗北の時だと」
「そんな事言ってももう八時間だぜ?もし中に人がいるなら食料はどうにかなっても気が狂っちまうだろうよ。ましてや相手はあのスンクだ。こんなやり方してくると思うか?」
「お前の言う事はどれも間違っちゃいないが、我々がやるべき事はただ一つ。相手が動くまでこちらは動かないということだ」
海岸に着いた船は五隻。攻め込むにしても明らかに無謀だ。本当に難波船なのか?だとしたらスンクは別箇所から攻めてくる…?囮なのか、作戦なのか。
マーレン軍はスンク軍のいつもと違う様子に戸惑い、精神的に疲弊し、不安定になっていた。待機状態になってから八時間。集中力も散漫になってきている。こんな戦いになるとは予想していなかった。激しい肉弾戦の根比べを想定し、様々な対策を練った。戦う前にここまでダメージを負うとは夢にも思っていなかった。もしここに彼等が攻め込んでくればひとたまりもないだろう。我々も単なる長距離戦、いわば弓や投石で太刀打ちするのではなく、更に何か作戦を取らなければならないのではないか…これは居ても立ってもいられない。アブレイユ様に報告と稟議を諮らねば。
海岸で陣を張る部隊の中、一人の若者が意を決し本隊はアブレイユ総隊長へ向け持ち場を離れた。




