影武者11-7
「"軍師"さんよぉ。本当にこのやり方でマーレンに勝てんのか?俺らは馬鹿だから理解出来ねぇんだわ」
スンク本陣はマーレン東側から上陸するべく航路を進んでいた。
「マーレンは知能というアドバンテージを持っていると思い込んでいます。それが我々スンクのアドバンテージにもなっているという事を彼らは思い知らされるのです」
「そんなもんなのか。これほど退屈な戦いは今までした事ないぜ」
スンクを統べるのは族長の[ドゥ]。ゆったりと進む船の上、船長室の中の大椅子にだらしなくもたれ酒を飲む。
「何と言うか、こう、滾らねぇんだよな。酒もいつもよりか沁みねぇ。なのにどんどん酔っちまう。あれが足りねぇんだよ。あれ。なんだっけ?あれ」
"軍師"は表情一つ変えずにじっとマーレンの地図を見続けながら仕方なく相槌を打つ。
「アドレナリンですか」
「そう!"アナドレリン"だ!どうすりゃいい!?」
「…はぁ。まるで禁断症状の様に欲しますね。今回の戦いでそれは期待出来ません」
「何でだ!?そんなんじゃ勝っても煮えきらねぇ!」
"軍師"は呆れた顔で地図からドゥへ目線を移した。
「こんなところで、こんな相手でそんなの出されちゃ困るんですよ。あなたは何を目指しているんですか?この四国大戦に勝てば満足ですか?貴方がたが勝てば勝つほど戦わなくて済む世の中になっていく。相手が居なくなるんですよ」
ドゥは"軍師"の言葉以上に、自分を通り越して遥か先を一点に見つめているかの様な真っ黒な瞳が恐ろしかった。自分とは正反対の冷めきった瞳を持つ男に怯えてしまった事を自覚した。
「た、確かにそうだな。そうなっちゃつまらねぇ。最強にはなるまでが楽しい。なっちまったらそれ以上は無ぇもんな」
「今回の戦いは例えるなら人類が二足歩行する事くらい至極当然で、簡単で、何の影響も及ぼさない程のものなのです。あなたが酒を飲んで寝ていればその間に終わります。日常に過ぎないのです」
この男…この先何をしだすか分からない…
「それとドゥさん。私の事を"軍師"と呼ぶのは今後止めていただきたい。私には[ライズ]と言う名前がありますので。お願いしますよ」




