影武者11-3
「何故だっ!何故バス国に仕掛けるような行動をした!?彼らとは寧ろ歩み寄るべきだったのに…!」
ラフスは机を両拳で力強く叩きつけた。秘書らは怯えそこに立つしかなかった。
アミーユでの革命以降、小国の情勢は乱れ始めた。かつての四国戦争よろしく諍いが起き出したのだ。
最も驚いたのはピーリクがバスへ進軍とも取れる行動を取った事だ。直接的な対戦にはならなかったものの今後の行動を意図する動きであった。永世中立国のピーリクが事を起こしたことにラフスは強い憤りを抑えきれない。
「ラフス様。ピーリクが動いた影にはアミーユが関係しているとの情報もあります。共闘したのか、服従したのか、反発したのか…いずれにしても大問題です」
秘書のウェインは恐る恐る発言した。腹の前で手揉みをしながらおどおどした様子でラフスをちらちらと伺う。そのウェインをラフスはギッと睨んだ。
「ウェイン。君にこんな事を言いたくないがそんなのは私も分かっている。だが現実に大変な事が起きてしまったんだ。冷静に分析している場合ではないくらいの事件だ。君なりの対応策はあるのか」
「あ、いえ。その…ノア国としてもそうなのですが"世界会議"で議題とし、各国の意見を共有すべきかと…」
「世界会議?こんな状況で他国がはいそうですかと集まると思うか?定例会議ならまだしも緊急招聘なんぞ寂しい結果になるに決まっている。年一回の定例会議は三カ月前に行ったばかりだ。それにその時もピーリクとアミーユは参加を辞退している」
各国首脳を招集し年一回行われる首脳会議は基本的に王、大統領、皇帝などその国の長が近況報告をし合うパーティーの様な場だ。しかし実際頭を抱えるのはナンバーツー。会議を実行するにあたり、こちらの緊迫感は世界を巻き込む大事になりかねない。常に牽制し合い、憎み、共有し、嫉み、裏切り、寄り添い合い、協力し、我こそはと統一を目指す者同士で溢れる。トップは部下に責任を押し付け面子、体裁、地位を保つ。ラフスは何度かこの会議に出席しているが、ここ最近各国の雰囲気が徐々に重たくなっている気がしていた。牽制し、睨み合い、顔色をうかがい、よそよそしく振る舞う。先の二カ国の様に理由をつけて欠席する国もちらほら出始めた。武力行使、戦争によって何かを得たい国があるという事か。そうなれば二大国を主とした世界大戦が再び始まってしまう。それは何としても阻止しなくてはならない。
「失礼。少しご意見を述べたいのだがよろしいか」
入ってきたのはユティンだった。




