前哨戦10-10
「リーダーはどこに居るんだろう。もう内陸の方まで行っちゃったのかな」
ライトはブライに尋ねた。ブライは木に登り、太めの枝に腰掛けそこから海を眺めていた。
「いや、そこまで一人で行っていたとしてもどうする事も出来ない。そろそろこっちに来るんじゃねえかな」
「戻ってくる?だからここで休んでるの?リーダーも同じ様に待っていたらいつまでもこのまま?」
「リーダー様はここに来るさ。イケると思っても、ダメだと思ってもここに戻れば対策できる。後者はあまりよろしくないが」
ライトはふーんと言いながら森側を眺めた。すると人影を発見した。
「ねぇ。言った通りになったよ」
「率直に言うが状況はあまりよろしくない。想定外だ」
フラッグは水を一口飲み、皆に言った。
「この海岸沿いを北にずっと辿った。するとある場所を見つけた」
「ある場所?」
ハンが聞き返す。
「あぁ。そこは灯台守が住み込む為に建てられたであろう二階建ての建物だ」
ハンはそれが何か?と言うような表情だ。
「そこには誰もいなかった。いや、正確に言うと生きた人間はいなかった」
一瞬の沈黙。が、すぐにブライが沈黙を破る。
「他にも外国人が上陸してるのか」
フラッグは微動だにせず答える。
「その可能性もあるが、船が見当たらない」
再び沈黙。今度はライトが口を開いた。
「反乱って事はあるのかな」
「無い事も無いだろうが極めて考えにくいだろう。今反乱を起こしたところでスンクも来る事は想定してるはず。わざわざ三日天下を取りに行くだろうか。確率として一番高いのはスンク軍だと思う」
「船が無いとすりゃ人だけ降ろしてったのか。輸送船はその後本体に戻る。挟み撃ちって事だな」
ブライは腑に落ちない様子だ。
「しかしスンクにそんな作戦を考える奴がいるかね。二手から一気に攻め込むならまだしも奇襲みたいなやり方をする様な連中じゃあないだろう」
「だが実際に事は起きている。この作戦が上手くいってしまえば我々より先にスンクが城を攻め落としてしまう。そこに我々が飛び込んでも勝てる見込みは少ない」
皆考え込み、また黙ってしまった。
「俺らがまさか西から来るなんてマーレンの連中は考えもしないだろうなぁ」
「だろうな。さっきの様子じゃ東側に警戒を集中してんだろ。こっち側は余り物みてぇな奴しか居なかった。手応えのねぇ奴らだぜまったく」
「俺らに作戦の能力が付いたら、最強なんじゃねぇの?だははは!」
「おい。"軍師"も言ってたが、楽観的になるのはタブーだぜ。誰かが勝手な行動しだしちゃ取れるものも取れねぇって言ってたじゃねえか」
「でもよ。勝ちゃいいんだろ?戦争なんてよ」
「馬鹿言うな。喧嘩じゃねぇんだぞ。ただ、負けちゃいけねぇってとこで言えばあながち間違ってもねぇがな」
西の海岸から上陸したスンク軍は王城を目掛け進軍していた。だが、目立った行動はせずゆっくりとじわじわ敵の背後を囲むのが目的はだ。最初にこの作戦を聞いた時はやってられるかと思ったが、新しく"軍師"を名乗った奴は出撃前にこう言った。
「本隊は東から真っ向勝負を挑みます。貴方がたの一番得意で慣れた戦い方です。別隊は西から王城を囲むように、手薄になった部隊を殲滅します。ゆっくりと気付かれないようにです。本丸に残るのは王です。その首を取るのに一番重要な特別部隊。王にはなれないが、敵国王を討った英雄にはなれるかもしれないですよ」
まんまと担がれたがこれも悪くない。マーレン軍と真っ向からぶつかるのはリスクが高いのは分かる。いくらスンクでも苦戦するに違いない。生存確率はむしろこっちの方が高そうだろう。
王の首を手に、高々と掲げ、英雄と崇められる光景を想像し、高鳴る鼓動を抑えながら特別部隊は慎重に進む。




