前哨戦10-9
マーレン首都レグノンにて。
「特段変わった事はないか。些細な事でも逐一報告を上げるように。それを怠った事でこの国の明暗を左右する事態になるぞ」
アブレイユは恐れていた。戦勝国となった今、追われるものとなった今、独立を志すこの国にとって負ける事は万が一にもあってはならないとプレッシャーに押し潰されそうになる毎日を過ごしている。
だがそれを部下や国民に悟られては不信に繋がるのだ。心を休める場所は今この時点ではどこにもない。その最中、不安要素となる報告が入る。
「アブレイユ様。真偽は未だ分かりませんが西側の海岸から報告が何もないとの情報があります。遅れているのか、忘れているのか、定かではありませんが確認をした方がよろしいでしょうか」
アブレイユは考える。西側か。スンクはマーレンの東にある。わざわざ回り込んで攻め入るだろうか。彼等の性質を鑑みて可能性は低い。だが考えを改める可能性もある。
「もう少しだけ報告を待とう。今そちらに人員を割くのは得策ではない。明日になっても報告がなければ調査してくれ。少数精鋭で頼む」
マーレン西海岸。デスガルゴン一行が続々と着岸する。敵は無い。
「リーダーが上手くやってるようだな。何事も無く乗り込めた。ここからは俺らがリーダーを援護しなきゃならない。まずは合流だ。予定通り合流地点に向かうぞ。初めて船に乗る奴らも多い。休める内に休んでくれ」
ブライは各船長に伝え、民兵のコンディションを第一にするよう命令した。せっかくの兵力を一人も無駄にはしたくない。
フラッグの作戦はこうだ。マーレン軍はスンクの進軍、上陸を恐れて東側の警備を厚くする。だがアブレイユは慎重な男なのでマーレン全域に警備網を張る。とは言っても西は手薄になる。そこを漂流者に見せたフラッグが抑えデスガルゴンは上陸。徐々に内陸へ進軍する。首都レグノンは北西寄りにあるのでまずは西側を固める。その間にスンクが攻め入れば警備は東に集中する。その隙に本丸を叩けば後はスンクとの戦いになる。しかし、ここでスンクと戦ったとてどちらもアウェーだ。態勢を整えるために一度引く。我々の目的はマーレンを奪うことではないのだ。あとはスンクの動向を見て流動的に動いていく。最終的な目的は、そう、マルベスなのだ。
フラッグは故郷、家族との対峙を見据えていた。その為にこの四国戦争をどう終結させていくかが重要だと語った。
フラッグは西側の海岸を調査した。港はないがそれなりに長く浜辺が続く。遮るものがないので兵が集まれば内陸へ踏み込むのが難しくなる。
海岸を歩きながらフラッグはある場所を発見した。




