前哨戦10-1
「スマツ隊長。もうじきバスへ到着ですが一つ気になる事が」
「ラーク少佐。なんでしょう」
「先程からジャン大佐が見張り台に登ったきり降りてこないのです」
「あぁ。そうですか。彼は高いところが好きでね。それに目も利く。どれくらい降りてこないですか」
「そうですね。かれこれ小一時間かと」
「んー。なるほど。分かりました。声を掛けてみましょう」
「着港準備の最中、申し訳ないですが。私も何度かお声がけしましたが返答も無くて」
スマツは見張り台に向かった。船内外で慌ただしく準備に追われている隊員達を確認し声を掛けながら少しばかり不安を感じた。そして見張り台の下に着くと、
「隊長。着港を遅らせたほうがいいかもしれねぇ」
と、下からでは姿を確認できないがジャンの声が聞こえた。
「ジャン大佐か。何か見えるか」
「バス方面に向かう船を何隻か見たんだが、どうも様子がおかしい。徐々に船同士が近付いているし、数も増えてきてる。恐らく船団だ。貨物船じゃあなさそうだぜ」
スマツは一気に思考回路をフル回転させた。アミーユからであればここに来るまでに何らかの異変を感じていただろう。それにアミーユ調査については先方に気付かれていないはず。と、すると何処の国だ…むしろ国なのか。ジャンがわざわざ船団と言うからには海賊の様なゴロツキではなさそうだが…陣形を使って攻めてくるのであれば他国の海軍。
「隊長さんよ。一悶着ありそうだな、こりゃ」
「各隊員に告ぐ!着港準備を始めたところ申し訳無いが少し寄り道をする。確定ではないが他国から侵略の可能性が見つかった。警戒態勢に入ってくれ」
準備中の隊員達からざわめきが聞こえる。
「て、敵襲?戦争か?始まるのか?」
「俺の目からじゃ何も見えないぞ。だいぶ離れてるのか」
「バス目前じゃないか。大丈夫なのか」
スマツは表情を変えず続ける。
「慌てるな!狼狽えるな!恐らくまだ向こうに我々の存在は気付かれていない。だが不安は相手に伝わる。今の状況では気配でバレるぞ。冷静に、なるべく平静を保ったままゆっくりと航路を変える。堂々としておけ!」
「おー!」
ーーーーー
「ミロイ大将!1時の方向に船団を確認!確認できるだけでその数10、そこを中心に散開してもう10程向かっているようです!」
「まぁまぁの数で来ましたね。もう少し誘き寄せます。各船待機し、準備を万全にしておいてください。相手の陣形を如何に素早く理解出来るか。チェスと同じです」
その伝令は陸軍第三駐屯地にも速報で舞い込んだ。
「やっぱり北から来たか!各隊海岸へ向かうぞ。私はガレオンのところに行く。陸地を踏ませるなよ」
マークは馬に跨りバス王城へ向かった。ガレオンに伝令を依頼し、自分はまた第三駐屯地へ戻る。恐らく南からも何隻か襲撃に来るだろう。しかしそっちは囮だ。本格的なぶつかり合いにはならない筈だ。




