夜明け9-5
ノヴァは意を決してヴィーノに問うた。
「ヴィーノは次期国王だと言っていたな。だが第一王子のフラッグ様が亡くなられて順番としては第二王子のスティル様が就任するんじゃ?」
ヴィーノはコレクションの古い盃を眺めながら答える。
「順番としてはな。だが父上はまだご存命だ。その内に誰かを指名した場合はその類ではない。そうだな?」
「ま、まぁ。法律上はそうなるな。最近は床に伏せていると聞くが、重い病気を患っているとか」
「その様だが口の聞けないほど重篤ではない。それまでに確実に新国王を任命される」
「何故そこまで言い切れる?」
「スティル兄さんは母親が違うからだ。ゴッグ兄さんとアラン兄さんも違う。フラッグ兄さんと私は正妻である母君[シャロン]の子だ。つまり正当な血筋なのだよ」
「とは言えジャスティン国王の子息である事は事実だろう?正妻でなくとも血は継いでいる」
「城外でどんな憶測が語られているかは知らないが王族というものは出生がとてつもない枷となる事がある。それが世継ぎの際だ。本人たちはそう思っているかも知れないが一番気にしているのは役人や政府、国民なのだよ。偏見と言われてしまえばそれまでだがその偏見によって支持率は大きく変わる。王になったとて変えられない事実を背負っていかなければならない」
そう言われるとそうかも知れない。その偏見を払拭出来るほどの手腕が無い限り周囲の風当たりは強いだろう。
「そういうもんなのか。ただ単に王族に生まれれば地位も金も約束されたエリートで羨ましがるばかりだったが。これも偏見か。すまない」
「いや、いいんだ。至極当然の意見だよ。バカでかい城に住んで常に上等な食事が提供される。洋服もそうだ。常に誰かが世話をしてくれる。だがそうでない者も中にはいるのだ」
「そういやヴィーノは何故抜け出したんだ?気に障るかも知れないが生まれてこの方、君の話題は聞いたことがないんだ」
「それはそうだろう。私は表に出ないよう監禁されているからな。しかも地下室だ。酷い話だと思わないか?それにしてもこの盃の造形は目を瞠るものがあるな」
「監禁?何のために?」
「今言ったばかりだろう。聞いていなかったのか?表に出さないためだ」
「それは聞いていたが。なぜ表に出れないんだ」
「名目上は次期国王だからだ。勝手に動き回れては困るのだろうな。だが実際は次期国王にさせないためだろうな」
「矛盾してるな」
「そうだな。だがこれは父上とスティル兄さんの間で決められた事なのだよ」




