夜明け9-3
「あれ、もしかして…レノか?」
ノヴァは屋根の上からこちらに小走りで駆け寄る少年を見た。こそこそと身を隠しながらこちらに向かっている。
「…ったく。あの好奇心は一晩だって抑えられないってのかよ」
「おい、こんな時間によく抜け出せたもんだな」
「わっ。な、何だ君は。君も仲間か」
ノヴァはレノの言動を上手く聞き取れなかった。
「とりあえずよ。誰かに見つかるとまずいからこっちに来い」
レノはいつにも増して警戒している。
「皆そう言うよ。その手には乗らない。そっちに行ったらもっと大勢に囲まれるんだろ」
ノヴァの脳はレノの言動と行動を理解出来ない。
「皆って誰だ。俺は一人だ。ほら、寝ぼけてないでいつものとこ行くぞ」
「い、"いつもの"ってあの部屋か!?やっぱり君も奴らの仲間だな?」
本当にいつまで経っても噛み合わない。おかしくなってしまったのか。
「レノ。俺が誰だか解るか?」
「レノって誰だ。君なんか知らないぞ」
ノヴァは伸ばした右手を引っ込めることが出来なくなった。レノ、だよな。
「やっとの思いで抜け出したのにこんなところで捕まってたまるか。僕を閉じ込めて何がしたいんだ」
レノ、じゃないのか。
怯える"彼"にノヴァは伸ばし続けた手を更に近付ける。
「わかった。誰に怯えているかはわからないが俺は君の敵じゃない。今は味方でもないが、とにかくこっちだ。この先を逃げ回っても海にしか繋がらないぞ」
ノヴァは差し伸べた手をゆっくりと下ろした。そして裏路地へと先に進んだ。
誰だ。見た目はレノだ。声色も、背丈も、仕草もレノだ。でもレノじゃないと言う。おちょくっているようには見えない。本気で誰かに追われている。どういう事だ。
路地を進み突き当たりに差し掛かったところで振り返った。"彼"はノヴァを恐れながら少し離れた後ろをジリジリと付いてきていた。
「レノ。そろそろそのお芝居も終わりにしないか。今日はいろいろあって俺も疲れたんだ」
「さっきも言ったがそのレノってのは誰なんだ。いい加減よしてくれよ」




