夜明け9-2
「大将、お疲れ様でした。今日はとんだ骨折り損でしたね」
「あぁ。しっかりとくたびれ儲けたよ」
マークを労ったのは六番隊隊長のワンダだった。第三駐屯地に戻ったマークはそのまま夕食時の食堂に向かうところ、同じく食堂へと向かっていたワンダと出会い共に歩いた。道中、ミロイとのやり取りを簡潔に話し終わったところだ。
「ミロイさんは知らぬ間に動くことがあるんで俺等も驚かされる事があるんすよ。まぁ、真っ先に察知するのはスマツさんなんすけどね。予告なく急に演習始めたり結構迷惑な時もあるんですわ」
極度に猫背なワンダはポケットに両手をしまったまま足を引きずるように歩く。しかし不思議と足音はほぼ聞こえない。面倒くさがりが研ぎ澄まされると足を動かす事さえ最小の力に抑え、最短の距離で歩くようになったそうだ。
「ミロイ大将とは俺も古い付き合いだからある程度は知ってるさ。今回、話すら聞いてもらえなかったと言う事は何か策があるんだと思うんだが」
「その想像がつかないって感じっすか」
「あぁ。南基地にそれなりの増援を行うのは恐らく確実だろう。だがこの北基地まで強化する兵力があるだろうか。もしもう北基地内でテコ入れをしたなら相当早い判断だと思うんだよ」
「あの人の場合やりかねない、いや、もうやっちゃってる可能性大ですわ」
「それだと良いんだが…とにかく今、諸外国の状況は確実に良くない方向へ進んでいる。氷が溶け始めている訳だ」
食堂の入り口を入ったところで食事の乗ったお盆を運ぶタックがこちらに気付いた様子で居た。
「た、大将!?お、お疲れ様です。いらっしゃってたんですか?言ってくだされば迎えに行きましたのに」
「お疲れさん。それには及ばないよ。いつもありがとう。タックもこれから食事か。たまには一緒にいいかな?ワンダにもさっき会って一緒に…」
マークが振り返るとワンダの姿はなかった。周りを見渡すと既に厨房の前で注文をしていた。
タックは苦笑いし、三人分のテーブルと椅子を確保した。マークはワンダの奔放さに呆れて頭をポリポリと掻いた。
「タック。駐屯地内の状況は変わりないか?スマツが居ないんで迷惑をかけるが」
「は、はい。今のところは特段変わらずですね。海軍基地の方は少し動きがあるようですが」
「やはりか。どんな風に?」
「えっと、船の配置が若干変わりました。少し間隔を空けてますね。あとは人員が徐々に増えているように思います」
パンを千切りながらワンダが話に入る。
「取り越し苦労でしたね。あの人の嗅覚は犬並みだ」
タックは驚いた表情で言った。
「あ、あの人ってミロイ大将ですか?犬だなんて失礼ですよ。でも何故北基地の強化を?」
マークは少し間を置いてから話した。
「今回のアミーユの件、どうにも怪しいんだが、もしバスが攻められる事があればそれは北からだ」
パンを千切りながらワンダはマークに聞く。
「ですからそれは何故です?」
「アミーユでの革命には裏がある。その裏側にいるのは推測でしかないが、恐らくピーリクだ」




