すれ違う7-14
「その後は君も知る様に私の思惑とは真逆に進んでいったよ。本当に自害していたら悔やんでも、悔やみきれない最期になるところだった」
ユティンは笑っていたがそこからの彼の人生は崩れてしまった事に違いないだろう。
「そうかもしれないが。でも今になって姿を現したのはなぜだ?」
ユティンの死が報じられた後、ラーム教に調査が入ったが目立った事件は起きず、政府にマルベス国への情報漏洩を行なった事実もなかった。確かにユティンの思惑とはかけ離れた結果だ。更にはユティン自身への批判が拡がりそれを好機と捉えたラーム教は体制を整え影響力を増していったのだ。結果としてユティンの計画は失敗に終わった。
「君が副首相になった後、いや、正確にはそれまでの過程もほぼ全て陰ながら知っていた。カリスマ的存在になりつつある君を良く思わない連中も同時にマークしていたんだ。それが今回の事件の発端だよ」
「それほどに私を憎む者がいるのか。ラーム教の者か?」
「その辺りが凄く鈍感なのも子供の頃から知っているよ。変わらないな」
「あまり人を疑いたくないんだ。言い方に悪意を感じるよ」
「はは。すまないな。正直に言うと黒幕はシェパ首相だ」
ラフスは懸念していた問題が思った通りだった事に落胆した。やはりそうだったか。
「しかしここまでの事を一国の首相が一個人に?」
「それ程までに今の地位を失いたくないんだろう。それに一個人と言っても君は既に国への影響を及ぼす力と立場を手に入れてしまったんだ。もう少し自分を見つめ直した方がいい」
ただがむしゃらに自分の信じたものを追い求めただけだった。その中にはユティンの死も含まれている。だが今目の前に生きている彼が存在する。私の信じたものは何だったのか。急に何も考えたくなくなってきた。
「ボンさんもはなから首相の息がかかっていたと言うことか。うぅ…何を信じていいか本当に分からなくなってしまった」
「そうさせたのは私の責任でもある。それを償いたいと思って君の前に戻る決心をしたんだ。本当にすまない」
ユティンが独自に調べた情報によると、実際にマルベス国への情報漏洩があった。それこそ当時の副首相が犯人だった。思わぬ形で彼は犯人を裁いてしまった。しかしそれにも共謀者がおり、それがラーム教のものである可能性が高いとの事。確かにマルベス国でも同時期に第一王子が自害した。その事件に関与していると疑われたのもラーム教だ。あの戦争は仕組まれたものだったのか?
地球規模の戦争に発展したのは宗教団体による操作。そんな事があるのか。そしてその宗教を広めたのは我がノア国。それは決して見逃せない。これが事実であれば真相を世に知らしめる必要がある。それが出来るのは誰だ。
私だ。




