すれ違う7-10
「ラフス様!ご無事で何より。こちらへどうぞ」
差し伸べられた手を握り、ラフスは洞穴から出た。その手の正体は秘書の[ウェイン]だった。
ここに来る前、最後に顔を合わせたのは彼だったな。花束を用意してくれたんだ。
「一体何があったのですか。昨夜の吹雪でラフス様はお戻りになられないと思いまして。何かあっては一大事とコテージに向かったら焼失しており…ラフス様の事ですから絶対に逃げおおせたと信じておりました」
「君のような優秀な秘書に恵まれて私は幸せ者だ。本当にありがとう」
「勿体ないお言葉…冥利に尽きます。まずは宿舎に戻りましょう」
「あぁ。実は手足の感覚があまりないんだ。何時間も雪の中を歩いたからね」
「そうでありましょう。して、こちらのお方は」
他の捜索隊員の肩に腕を回したユティンが洞穴から出てきた。彼も相当疲弊している。
「彼は友人であり命の恩人だ。一緒に連れ帰ってはくれないか。身元は私が保証する」
「そうでしたか。承知致しました。馬車へどうぞ」
二人は毛布に包まれ馬車に揺られた。道中は疲労で深い眠りに落ちた。名前を呼ぶ声で目を覚まし、馬車を降りると宿舎に到着していた。
「ご友人には来客用の部屋をご用意しました。本日はゆっくりなさってください」
到着したのが何時頃かも分からなかったが部屋に戻るやいなやベッドに倒れ込んだ。酷い一日だった。命からがらとは正にこの事か。
ラフスはそのまま食事も取らず一晩を越した。途中何度かコテージが爆発した際の記憶で飛び起きたがはっきりと目が覚めたのは翌日の早朝、日の出の頃であった。
「やぁ。調子はどうだ。少し落ち着いたかな」
ラフスはユティンの居る部屋のドアをノックし、声を掛けた。
「もし、落ち着いていれば少し話がしたいのだが」
数秒沈黙があった後、ドアの鍵を開ける音がカチャリと聞こえた。そして開いたドアの向こうにユティンが立っていた。
「大丈夫だ。中で話そう」
ユティンはラフスを部屋に招き入れた。昨日はローブを来てフードを被っていたのであまりはっきりと姿を見られなかったが、長髪に白髪が混じり、頬は痩せこけているものの改めてユティンだと再認識した。
「昨日の一件、本当にありがとう。感謝するよ」
「いや、いいんだ」
二人は部屋の中央にある向かい合ったソファにそれぞれ腰を下ろした。
そのまま沈黙が続いた。何から聞けばいいのか、何を聞いて良いのか分からなかった。口を開いたのはユティンからだった。
「今になって私が姿を現した事については疑いしかないと思うが聞いてくれ」
「あぁ。いくら君でもどれほど信じられるか、信じていいのか、自信がないが教えてくれ」
「まず私がなぜ今生きているかだが、あの日の事を話そう」
彼が殺人者となったあの日の出来事。




