すれ違う7-6
「失礼。五番隊隊長のスマツだ。ジャン大佐はいらっしゃるか」
スマツはジャンの部屋の扉をノックしたが応答がない。出かけているのか。
もう一度訪ねたが応答はなかった。もう到着はしているはずだが、どこに行ったのだろう。スマツは諦めて歩き始めた。が、もう一度だけ訪ねる事にした。
「ジャン大佐。何度も申し訳ない。スマツだ」
しばらく待つ。すると扉の鍵をカチャっと開ける音が聞こえた。
「どうも、隊長。居留守みたいな事をしてすまない。やはり愚直な御方だ」
「それは褒め言葉か。ジャン。久しぶりだな」
スマツとジャンは同期の仲だ。そして対照的な二人でもある。スマツは入隊時、身長はあるものの細身でか弱く見えた。実際に体力面では酷く劣っていた。一方ジャンは小柄ながら俊敏性、持久力、力強さ、頭脳、判断力と全て兼ね備えたエリートだったのだ。二人の志もスマツは統率力を持ち、もちろん隊長を志願した。だがジャンは自分にその素質はないと殿を務め現在二番隊のナンバー2である大佐だ。二人の共通点は己を磨き上げ、己の立ち位置を理解し、己の力を最大限発揮する事に注力した結果なのだ。
「君が居ると心強い。すぐに頼ってしまいそうだ」
「何を言う。お前は命令する立場だぞ?いつも通り隊長らしく皆の模範として堂々といろよ」
「そうなんだがな。たまには荷を降ろさせてくれよ」
まるで新兵のような気分にさせてくれる。そして目標として常に目指すべき場所に立ちはだかってくれるとスマツは思っている。親友と呼ぶに相応しい男だ。
「ミューイに来るのは久しぶりじゃないか。君はほとんど城下を担当しているから。まぁそれほど頼られる存在なのは承知だが」
「あぁ。そういうポジティブな意見は有り難く頂戴するよ。ただ愚痴を言えばどんな時もそつなく使える奴は手元に置いておきたいんだろ。ガレオン隊長にも散々こき使われてへとへとなんだ」
二人は笑って、成長したお互いを下手ながらも褒め合った。
「今回はただの偵察なんだろ。アミーユの内情はほとんど分からないし」
「そうだな。下手な動きは避けるべきだ。革命軍と政府、国民がどんなバランスなのか。隣国にどんな影響を及ぼすか。かつての四国戦争さながらにならなきゃいいが。マルベス国、ノア国、ラーム教も絡んでいる可能性もある。冷戦が氷よろしく溶け始めているのかもしれない」
「まずは自国防衛だ。その為に出来るだけ情報を集めないとな」
「あぁ。ひとまず今日はゆっくりしてくれ。明日じっくり話し合おう」
「昔話は程々に頼むよ。褒められるのも得意じゃない」
「褒められる前提か。君らしいな。短い期間だがよろしく頼むよ」




