すれ違う7-5
「ミシェル。今日明日だけだがこの部屋を使ってくれ。今日は部屋に夕飯を届ける。明日は派遣メンバーと壮行会の予定だ。明後日には出発となる。あまりゆっくりする時間はないがくつろいでくれ。何か質問は」
「特に無いですが、こんなもてなしてもらう為に来たつもりはありません」
「そうか。気に障ってしまったなら謝ろう。せめてもの気遣いだ。出発後は一軍人として接するから覚悟しておいてくれ。私は妥協しないぞ。他にあるか」
「夕食までいろいろと見学しても?」
「構わない。敷地内なら許可しよう。ただ外出は禁止だ。海軍基地にも入らないように」
「わかりました。ありがとうございます」
「明朝迎えに来る。それまでに何かあれば遠慮せず私の部屋を訪ねなさい。では」
スマツはそう言って部屋を後にした。残されたミシェルは部屋を見回した。恐らく来客用の部屋だろう。隅にあるベッドの上は綺麗にメイキングされた布団、丸テーブルと椅子が二脚、壁際に鏡付きのデスク、入り口の正面に大きな窓が一つ。こんな部屋で過ごしたことがないので落ち着かずにうろうろと歩き回ってしまう。夕食まで二時間程あるだろうか。窓の外は林だった。その向こうは海軍基地だろう。遠くに海も見えた。見知らぬ土地に来て一人になった途端、不安が急激に膨らんだ。想像のつかない未来がすぐそこに迫っている。駐屯地をいろいろ見て回ろうと思っていたがそんな気分ではなくなってしまった。
部屋を出たスマツは派遣チームに呼ばれた各隊員の部屋を訪ねる事にした。大将からもらった人物リストを手にまずは一番隊のラークだ。
「失礼。五番隊隊長のスマツだ。ラーク少佐」
扉の向こうでガサガサと慌てる音がした後、すぐにラークが出てきた。
「これはスマツ隊長。何用でございますか」
「急に訪ねてしまってすまない。挨拶回りにと思ってね。しばらくの間、よろしく頼む」
「わざわざ隊長自らいらっしゃるとは。こちらから伺うべき所、申し訳ありません」
「いやいや、謝る事はない。これは私のやり方だ。出発まではしっかり休んでくれ」
「は。そういえば今後の方針はもうお決まりで?」
「あぁ。ただ今話すと気負ってしまうだろう。アミーユまでの移動中に説明する」
「そうですか。しかしいったい誰が何のためにこんな酷いことをしたんでしょうか」
「私も皆目見当がつかない。しっかりと調べる必要があるな。突然悪かった。また明日会おう」




