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スピリット  作者: 猿飛
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睨み合い1-3

15年前、世界大戦が勃発した。

世界地図を見て西側に位置する大国[ノア]と東側に位置するこれまた大国[マルベス]を主とする戦争だった。


過去にも幾度となく戦争が起きてきたがそれまでに類を見ない規模の争いであった。被害は過去随一となり、全世界が悲哀と疲弊を味わった。ここから国際的平和を求め、人類自身による滅亡を阻止するべく国際連盟が発足した。各国首脳が毎年会議に出席し互いに協力・賞賛し、時には牽制・非難をし何とか均衡を保っている。


事の発端はノア、マルベス両国の密偵活動が表面化しそれぞれの主張が発言から行動へと移っていったのだった。


ノア国は王を頂点とした朝廷と国民から選出され首相を頂点とした議会、教皇を頂点に置く国教・宗教団体の[ラーム教]。三権によって国政が行なわれ、歴史上一番安定した統治を行ってきた。しかしこれが崩れる出来事が起きた。ラーム教の司教である一人の男が副首相を殺害、その後自害した。議員が集まる議事堂にて定例会議が行われている最中、この男は乱入しこう叫んだ。

「議員の中に密偵が潜り込んでいる!そいつはこの国の情報を東の大国マルベスへ漏洩させているのだ!これは紛れもない事実であり、確固たる証拠も得ている。この場で名乗り上げよ!さもなくば…さもなくば!!」

こうして副首相に詰め寄り現実を把握しきれていない間にナイフを突き刺し、抜き取った血まみれのナイフで自らの喉を掻き切った。

その場に居合わせた者はあっという間の出来事に呆然とし、間を置いてから混乱が始まった。このテロを引き起こした司教は国内で名のしれた人物で、新聞に度々取り上げられ、著書もいくつか発行されていた。世間的認知度も高く、衝撃は瞬く間に国全土に知れ渡った。この司教が言い放った確固たる証拠はその後、くまなく調査されたが発見されなかった。


そして同時期、マルベスでも異変が起きた。

マルベスは一切の統治を国王が行う完全なる王国だ。しかし王の即位については世襲に限らず、現国王の独断と偏見によって決定される。嫡男に継がせる者もあれば自分が見込んだ信頼に値する者を選ぶ王もかつてあった。そして王に男女の限りはなく女王の時代もあった。

マルベスで起きた事件は当時の第一王子が護衛軍の総隊長を暗殺、国王を監禁。その後籠城し玉座を譲る事を要求。各方面からの説得や妥協案も聞き入れず、国王が承認、したかに思えたが国王側の策略にはまり追い詰められた。第一王子は実父である国王に裏切られたことに失望しマルベス城が建つ崖から身を投げた。第一王子の反乱を招く引き金となったのは国王が水面下で領土拡大と奴隷獲得を目的とした進軍を企てていた事だった。マルベスは建国以来、奴隷制度をいかなる状況においても認めず法律により禁止しており、国王は今回法改正を進めようとしている噂があった。そしてその情報を流したのはラーム教の司祭であり、後にこれは誤報であることが判明した。

マルベス国はラーム教を国教とするノア国の謀略とし、宣戦布告を行うこととなる。


ノア国は猛反発、冤罪を主張もこうなっては聞き入れられず自衛の為として相対する事を決断。協力国にも働きかけ守りを固めた。マルベスも連合を結成し直接対決の地を勝手にも両国の中間に位置しどちらにも属さない第三国の[ピーリク]とし侵攻を開始する。ピーリクは大海に浮かぶ島国で永世中立国を宣言している。東西から大国に挟まれるように反発も虚しく戦火にのまれていった。


ラーム教は布教活動としてマルベスへも宣教師を派遣していた。そして国を統べる王族にじりじりと近づいた。

マルベス国はラーム教が近頃怪しげな動きを見せていたこともあり、密偵をノア本国へ派遣。しかしその密偵の中にラーム教信者が逆に忍び込んでいた。


全てラーム教の企てたシナリオだった。

ノア国では<ラーム教にマルベス国の密偵が潜んでいた>と対立意識を植え付け、マルベス国では<ノア国教のラーム教が第一王子を洗脳した>と思い込ませた。


その結果、東西の大国が激しく睨み合った。

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