すれ違う7-2
しばらく箱に入って息を潜めていた。運び出され移動した後に再び静かになった。
「もうそろそろいいか。ゆっくり開けるぞ」
ブライはひそひそと言い、ライトは無言で頷いた。
だが一向にブライは蓋を開けない。真顔のまま動かず気味が悪かった。
「何してるの。早く出ようよ」
ライトが何度か話しかけたが返答はなかった。
沈黙が続き、不意にブライが言った。
「まずいな。上に荷物を重ねられたらしい。全く動かねぇ」
諦めてからどれくらい経ったのか考えるのも諦めた。縮こまった態勢で各所筋肉は固まり痺れもなくなり感覚が消えた。
そんな時に外からガタガタと音がした。誰か来た。
「くそっ…こっちもだ。ちくしょうめ」
「やっぱり思った通りだ。ハナから騙すつもりだったんだ」
「卑怯なんてもんじゃねぇぞ。あいつらは人間の姿をした悪魔だ」
声は複数あった。ガタガタと漁るような音が続き、憎む言葉も共に続いた。
そして二人の入った箱に近付く。音が大きくなり振動も感じた。
「このでけぇ箱も見かけだけだろ。なめやがって」
その後、箱に衝撃を感じた。苛立って蹴飛ばしたのか。二人は息を殺しただじっとする事しか出来ない。
「おい、このでけぇの。重いぞ。蹴ってもビクともしねぇ」
「食料に見せかけて石ころでも詰めたんじゃねぇか。まぁとりあえず開けるぞ」
ギシギシと箱が軋んだ。そして刺すような光で目が眩んだ。
「…おい、おめぇら。こりゃどういうことだ。人間だ」
ブライとライトは箱から引きずり出されて後ろ手に拘束された。
頭にバンダナを巻いた三人組がそれぞれバールを持ちこちらを睨む。その中の一人が話しかけてきた。
「てめぇら何者だ。何でこんなとこに居た」
右手に持ったバールの先を左手のひらにパチパチと叩きながらその男は言った。ブライが答える。
「大層な出迎えに感動したよ。ちなみにこんな歓迎をする習慣でもあるのか?この国は」
「おいおい。招かれざるものがやけに威勢がいいな。頭は悪そうだが歓迎されていない事は分かっているらしい」
三人は顔を見合わせ笑った。ライトは苛立ったが何も出来なかった。
「それにしても汚ねぇ格好だ。戦場からでも逃げ出してきたのか?それとも普段からそんな汚ねぇのか」
「よくわかったな。答えは前者だ」
へらへらしていた三人の顔つきが変わった。
「て事はお前らアミーユから来たのか。あぁそうか。なるほどそういう事か」
「それなら何だってんだ。見世物にでもするか」
ブライは静かに三人を睨んでいるように見えた。だが体に力はこもっておらず落ち着いていた。
「そんな事して何の得がある。おめぇらを見世物にしたところで俺等の気持ちは晴れねぇ。今すぐには思いつかねぇがもっと有効な使い方があるはずだよな。うん。多分そうだ」
常に中心で喋っている男は一見その日暮らしの低俗に感じたが意外と冷静沈着だった。
「まぁよ。とりあえずリーダーのとこ連れてくか。なぁ」
そう言って他二人の同意を確認した。他二人はへらへら笑いながら何度も頷いた。こちらは見た目通りな様だ。
「うし。じゃ行きましょうかい」




