すれ違う7-1
「これからどこに行くの。この船はどこに着くの」
「着いてのお楽しみだ。今は航海を楽しめ。海は初めてだろ」
ブライとライトは港に停まっていた貿易船に忍び込んだ。貨物室にすし詰めにされた木箱のうち、ひとケース分脇に寄せて身を隠した。楽しめも何も窓はなくただ波の揺れと船体のきしみ音を感じることしか出来なかった。
「あの、何も未来が見えないんだ。僕はあなたの望みや計画を知らない。僕自身の望みややるべき事も分からない。あと、気持ち悪い」
「そうか。それにしても気持ち悪いとは随分な言い草だなぁ。そんなに俺が信用ならんか。顔はそんなに悪くない方だと思うんだが」
「ち、違う。気分が悪いんだ」
「俺と居るのが嫌だってのか。この期に及んでよく言うぜ。なら最初から付いて来なければよかったじゃねぇか」
「そうじゃなくて…う、吐きそう」
「何?吐くほど俺が…っておい!本当に吐くやつがあるか!空き箱あるから持ってくるまで待て」
ライトは初めての乗船で完全に三半規管が狂った。海に吐ければよかったが生憎窓がない部屋に居ること、沢山の命が息絶える場面を見たこと、何故自分がこんな所に居るのかということ、忍び込んでいるので下手な動きが出来ないこと。いろいろが相まって吐き気を催した。だが今までと違うのは孤独ではないと思えることだ。ブライは孤独だと感じているかもしれない。でも少なからず自分の為に慌てふためき空き箱を探してくれ、背中をさすってくれる。優しさがむず痒かったが重りが少しずつ軽くなっていく気がした。そう、今はまだ気がしているだけ。
「船が停まったぞ。甲板を歩き回る音からして多分港だ。走り回っていない。2人入れるどでかい木箱があった。中身は教えられないが。それに入ってもう少し辛抱すれば目的地まであと少しだ」




