思惑6-9
「して、ラフスはどうなった?」
「は。御者にラフスが戻るまで待機している様、命じましたが予想以上の吹雪となりまして急遽退避したとの事です。ラフスは今夜コテージに宿泊せざるを得ないかと」
「そうか。吹雪が止んだら御者を差し向ければよい。その後は計画通り進めろ」
「は。仰せのままに」
「ラフスめ。そう簡単には倒れぬか。だが長くは持たぬぞ」
不敵な笑みを浮かべるのはノア国首相[シェパ]。首相ながら国内の支持率が思う様に上がらない。
若くして国王となったスウェヴは政治こそ側近に任せきりな部分もあるが歯に衣着せぬ物言いと整った顔立ちでマスコットとしては人気がある。有能な側近達のおかげで支持率は保たれているのだ。また、ラーム教は篤い信仰心を持つ信者によって支持を不動にし政治面でも多大な影響を与えていた。その為、政府は三番手に甘んじる格好となっている。その中でも誠実で国民の声をかけるから真摯に受け止めようとしている若手議員、それがラフスだった。彼は政府の前時代的な構造、保守的な古参議員を抜本的に見直すべきであり、世の中の乱れに巻き込まれぬよう先手を打つ政策、外交に重きを置き国民の安全を第一にと声高らかに提唱している。
「何が総選挙だ。そんなことしたって無意味だ。誰が議員になろうと国民は関心を持たない。外国から攻め込まれれば政府を叩く。物価が上がれば政府を無能扱いする。賃金の底上げ?社会保障?くだらん。声を上げて意見したと自己満足し承認欲求を得たいだけだろう」
シェパは鼻で笑いチョコレートを囓った。
「ラフスよ。お前みたいな"ちゃんとした"奴は今の政府に必要ないんだよ。事を荒立てないでもらいたいね。国王はいずれ綻ぶだろうに。大人しくしていれば良いものを」
シェパはもう一度チョコレートを囓った。




