思惑6-7
「レノ様。おかえりなさいませ。本日は少し遅かったですね。お食事になさいますか。それともご入浴されますか」
「ただいま。とりあえずどっちも大丈夫かな。食事はまた声をかけるから部屋に持ってきてほしい。入浴は自分のタイミングで勝手に入るよ」
「承知しました。何なりとお申し付けください。ではごゆっくり」
レノは自分の部屋に着くなり机に向かった。あの地下室の地図を覚えている内に記録しておきたかった。今日はほとんど収穫がなかったが構造が分かっただけでも御の字である。ひとまず三部屋ずつ三列の計九部屋がある事。入り口は一つ。隠し通路などもあるかも知れないが今のところは倉庫の様に使われていた場所だと仮定しよう。物が何もない部屋があったところから見て用済みになった事は確かだ。他の部屋も調べていつ、誰が、どんな目的で、何をするために使っていたのか。地図を描き進めるたびにワクワクが止まらない。
ニヤつきながらペンを走らせているとノックが二回した後にすぐ扉が開かれた。
「おい、レノ。今日はこの時間までどこに居たんだ」
入ってきたのは兄の[ゴッグ]だった。
「ゴッグ兄さんか。今日は少しだけ冒険してきた」
「そのようだな。顔がニヤついてるぞ」
ゴッグは呆れ顔で腕組みをしていた。
「仮にもお前は王家の血統なんだ。あんまり派手な事や危険な事をするなよ。どんな奴らが居るかも分からないし、狙われる可能性なんて大いにあるんだから」
「分かってる。聞き飽きたよ。俺の趣味がたまたま冒険だっただけさ。過去の王族や貴族だって色んな冒険をして新たな発見をしてきたんだ。むしろ正統な育ち方だろう」
レノは現マルベス国王ジャスティンの五男であり、兄のゴッグは五つ年上の四男だ。他に三人の兄が居るが長男のフラッグは若くして既に亡くなっている。レノはフラッグを認知する前に亡くした為、記憶はない。
「レノ。あくまで噂だが父上が近々王位継承をするかも知れない。順当に行けばスティル兄さんだが、色んな憶測が飛び交ってるみたいだぜ」
[スティル]は次男でレノとは十五も歳が離れている。年齢的にも経験的にも申し分ない。ただこの国の王位は現国王の信任で決まる。時期国王は誰になるかは現国王のみぞ知るところだ。
「まぁ俺にはあまり関係無い話だよ。父さんからはそんなに愛されていないだろうし。俺が国王になっちゃったらこのマルベスは混乱で荒れ狂うだろうよ」
レノは地図を描きながら他人事の様に傍観している。物心付いた時から父に目をかけられた記憶はほぼ無いに等しい。だからこそ自分のやりたい事に没頭出来ている。
「まぁそう言うなよ。可能性がゼロな訳じゃない。じゃ、部屋に戻るよ。あまり夜更かしするなよ」
「今日は眠れそうにないな。それほど興奮しているんだ。眠れたとしても夢の中ですら冒険してしまいそうだ」
ゴッグは溜め息を吐きながらレノの部屋を後にした。




