思惑6-2
「とりあえずよぅ。誰を行かせるんだ?どのくらいの人数を行かせるんだ?いつ行かせるんだ?どのくらいの期間行かせるんだ?移動はどうやって…」
「ガレオン。一旦落ち着け。まずはオレの部屋に戻ろう。いいか。俺だって緊張くらいすんだよ。人の子だ」
二人は王室を出てから1.5倍速で歩いた。マークの両の手の平と首筋は汗ばんでいた。ガレオンは首筋をボリボリと掻き続けていた。
バタンと部屋の扉を閉じた瞬間にどっと重い何かから解放された。
「あぁ。とりあえずお茶を淹れよう。ガレオン。お前もお茶でいいか」
「そうだな。頼むよ。酒を入れたい気分だが逆に喉が渇きそうだ。それに止められずに飲んじまいそうだし」
マークは警備兵にお湯を持ってくるよう頼み、お茶っ葉を用意した。
「で、どれくらい考えてるんだ?」
「あぁ。何も考えていない」
「おいおい。早急にって言ってたよな?どうすんだよ」
「そうだよな。言ってたよな、俺」
マークは両手を腰に当て右足の爪先をトントンと動かした。ガレオンはソファに仰け反りながらはぁと溜め息を吐いた。
「マーク大将。お湯をお持ちしました」
扉の向こうから警備兵が声を挙げた。マークは腰に手を当てたまま扉に向かって歩く。そして扉の前でふぅと一息吐いてから開いた。そこにはミシェルが居た。
「お待ち遠様。大将」
「ミシェル?なんでお前…というか何で軍服着てんだ。俺はまだ入隊を許して…」
「とりあえず中に入ってもいいかな。お茶、飲みたいんだろ?」
マークを退けてミシェルは部屋に入った。げっと言う顔でガレオンはミシェルを見た。
「おい、マーク。ここってこんな簡単に入れるのかよ」
「ガレオン。忘れちゃいけないよ。泥棒だぜ?"元"だけどな」
ミシェルはカップにお湯を注ぎながら鼻高々に言った。
マークは参ったと言わんばかりに頭を掻いた。だが、少し嬉しかった。
「まず俺はアミーユへは行かない。今後も敵が何か仕掛けてきた時に備える必要があると思うんだ」
マークはお茶を啜り、冷静に話した。
「ガレオン。君も王城の警備には必要だ。併せてサンダの騎兵隊もだ。それに、フォールも第二駐屯地が狙われた以上守りを固めてもらう。テスも同様だ。第三駐屯地の方も心配だが今回はスマツに指揮を取ってもらおうと思う」
「奴なら異論はないな。あそこはワンダとタックも居るし」
「あぁ。それにハンの医療チームも少し派遣してもらう。加えてウチのラークと、ガレオンのところのジャンにも行ってもらおうと思う。メルシオの七番隊とロサリオの十番隊は一旦二番隊で面倒を見てくれ。暫くは本丸を守りで固めたいのと装備関係はしっかり確保しておきたい。一番隊は国内各地の調査をする」
「私はどこに所属するんだ?」
ミシェルは真顔でマークに尋ねた。
「ミシェル。本当にいいんだな?」
「興味本位で軍服着たわけじゃないよ。孤児院の子達の無念を誰か背負わないと皆が悲しむ」
「…心意気は分かった。だが背負い過ぎるなよ。お前だけじゃなく俺達も背負う。それでいいな」
「うん。いいよ」
「よし。ミシェルはまず戦い方を教わる必要があるが、諜報員としては優秀だ。それも兼ねてスマツに付いてくれ。彼は軍というものを熟知してる。先生にはもってこいだろう」
「あんまり堅いのは苦手なんだけど」
「そう言うな。スマツも堅いだけじゃないぞ。そこも見て学んでこい」




