吹雪く4-5
一息ついたラフスはボンを呼んだ。
「ボンさん。そろそろ向かおうかと思うのですが」
奥にあるキッチンからボンがひょこっと顔を出した。
「はい。では参りましょうか」
身支度を整えて二人はコテージを出た。外は凍てつく寒さで否が応にも首を竦めてしまう。
「ラフスさん。少しばかり急いだほうが良いかもしれません」
ボンは空を睨みながらラフスに言った。少し雪が降り出してきていた。ラフスは頷き歩き始めた。
「先程の御者の話ですが、ボンさんは彼の顔を見ましたか?」
「いえ。ただ、何と言うか…俯き加減でボソボソと話していたので少し気になりました。今思うと、単なる人見知りとは違ってあまり顔を見られないようにしていたのかもと」
「そうですか。まぁそこまで深く考えることでもないのですかね」
少し早足で二人は墓標を目指した。あと10分ほどで着くだろうか。
進むに連れてなのか、雪の粒が大きくなり降り方も強くなってきた。
「ラフスさん。このまま降り続けばもしかすると今日お戻りになるのは難しいかもしれません」
「私もそんな気がしてきました。弱ったな」
雪が積もり始め足取りも重たくなってきた。雪は更に強まり視界がどんどん悪くなっていく。少し風も吹き出しバチバチと顔に雪が当たる度に感覚が無くなっていく。そんな中、二人は目的地に着いた。
「ボンさん。彼には悪いがすぐに済ませますのでここで待っていてください」
「その方がよろしいかと。承知しました。お気をつけて」
ラフスは一人で墓標に向かった。彼とはユティンの事だ。せっかくの花束だがこの雪ではすぐに埋もれてしまうだろう。すまないと心に思いながらラフスは墓標の前に積もった雪に花束を挿し、拝んだ。早々に切り上げボンのもとに戻った。
「お待たせしました。すぐにコテージに戻りましょう」
二人は元来た道を引き返した。ついさっき歩いてきた足跡はすでに無くなっていた。
強まる雪と風に体力を奪われながら何とかコテージに戻ってきた。中に入るとどっと疲労が押し寄せるのを感じた。ボンが雪を払いながら言った。
「今温かいコーヒーを淹れますので暖炉の前で体を暖めてください。やはり、今日はお泊まりになられた方が無難ですね」
「そのようです。ご迷惑をお掛けしますが今夜は厄介になります」
「迷惑だなんてとんでもない。しかし酷い天気だ。ここまで酷いのは何年ぶりだろうか」
窓の外は雪で覆い尽くされ何も見えなくなっていた。先程より更に強さを増し吹雪き始めていた。そしてラフスの不安も加速して大きくなっていた。




