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スピリット  作者: 猿飛
22/89

吹雪く4-4

「ラフス副首相。ただいま到着致しました」

御者の声が聞こえてきた。もうそんなに時間が経ってしまったか。

「あぁ。ありがとう。今降りる」

そそくさと荷物をまとめてラフスは馬車を降りた。そこは名も無い山の中にポツンと建てられたコテージの前。山には薄っすらと雪が降った形跡がある。空は分厚い雲に覆われ、空気は切り裂くように冷たい。

「こんなところまでありがとう。雪が降っては帰れないだろう。早めに戻ってください」

ラフスは御者にそう伝え乗車賃に少し上乗せした金額を渡した。そこにコテージから男が一人近寄る。

「ラフスさん。お待ちしてました。今年も忙しい中、わざわざお越しくださいまして。寒いでしょうから中にお入りください」

大柄で顎髭をたっぷり蓄えたこの男は[ボン]と言い、長年この山を管理している。あの事件以降の付き合いだ。

「ボンさん。いつもありがとうございます。今年はそこまで雪も積もっていないみたいですね。しかしここは特段に寒い」

「ははは。夏場はこれほどなく過ごしやすいですがね。今年の雪はこれから本番と言ったところでしょうか。ささ。中で休んでください」

そう促されラフスはコテージに入った。暖炉のパチパチと薪が燃える音がより一層暖かく感じる。思わずふぅと一息吐いた。


ソファに腰を下ろした所にボンがコーヒーを持ってきた。

「相変わらずお忙しそうで。今年はいろいろあったのでいらっしゃるかどうかと思っておりました」

「いやいや。万が一私が首相になったとしてもこの日には必ず来るつもりですよ。コーヒーいただきます。毎年この到着したすぐのコーヒーが楽しみでね」

湯気と共に香ばしい匂いが心を安らかにしてくれる。ボンはラフスの向かいに座った。


「ボンさん。何か変わったことはないですか」

「えぇ。特段変わった事は何も。貴方は少しお痩せになった様に見えますが」

「そうですか?いやぁ私も歳を取りました。食が細くなってきたのは事実です」

ふふっと笑いながらラフスはコーヒーをすする。ボンは尋ねる。

「ところで、今日来た馬車はいつもと違いましたね。御者も初めて見る人でしたが。議員宿舎から直接お出ででしたか?」

「んん?ここまでは宿舎から直接来ました。手配は秘書に頼んだので所属までは分かりませんが。防寒具で顔もはっきり見ていないので何とも…」

「そうですか。組合のマークもなかったので急場で呼んだのかと。特に意味はないのでしょうが」

「そう言われると少し気になってきました。帰りに確認してみましょう。このまま雪が積もらなければいいのですが」

「そうですね。ではお参りに向かう際はお声掛けください。それまではごゆるりと」

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