吹雪く4-1
「ラフス様。明日は命日でございますね」
「あぁ。迷惑をかけるが宜しく頼む」
現ノア国副首相のラフスはネクタイを緩めながら秘書に言った。明日は友人の命日だ。そして新聞によると明日は初雪のおそれがあるらしい。確かに今日は冷え込む。
先程まで多くの新聞記者に例年の如く激しく詰め寄られたのもあってか、どっと疲労を感じ酒が飲みたくなった。鏡に映る自分を見つめた後、飾られていたバーボンとグラスを二つ手に取り副首相室唯一の窓際に並べた。雲の切れ間から時折見える月明かりに照らされ、グラスに注いだバーボンが煌めく。ラフスは片一方のグラスを持ち、置かれたままのグラスにキンと乾杯をして一気に飲み干した。
友人の墓は人里離れた山の中腹、ひっそりと木々に隠れ建てられた。その山には管理人が生活するコテージがあるだけで、登山道もなく、人が寄り付かない。ラーム教の司教まで上り詰めた人物の墓がこんな辺鄙な所にあるなんて誰も思わないだろう。むしろ、埋葬されている事すら信じられないだろう。それほどの大事件を引き起こしたのだから。
「謀反人の命日に毎年墓参りをする行為は議員として適切ではないとの声が年々大きくなっておりますが、その点についてどの様にお考えか?」
毎年この時期にされるお決まりの質問だ。回答も毎年同じ。
「彼は結果的に大罪を犯した反逆者ではありますが、それ以前に私の友人です。誰からも弔われないのはあまりに悲しい。弔う者がたまたまノア国議員の私であっただけの事です」
「先日アミーユで起きた革命について…」
「マルベスとの冷戦状態からこの先動きは…」
「ノア国の国内の自給率が…」
常に質問攻めされる身である事に慣れを覚えてきたが、今日明日ばかりは解放される。と言うよりかは自ら拒絶する。そう、明日はユティンの命日だからだ。




