始まりの渦3-9
「た、大将!申し訳ありません!す、直ぐに連行いたします!」
「いや、いい。ちょうどこの娘と話がしたかったんだ」
ガレオンは戸惑う衛兵にまぁまぁと言いながら扉を閉めた。
まだ肩で息をしているミシェルの目は血走っていた。ガレオンはミシェルの両肩に手を優しく乗せ椅子に座らせた。マークの時とは大違いだ。
「ミシェル。昨日と今日でお互いを見る目がだいぶ
変わってしまったな。先ほどガレオンから他の孤児院での事件を聞い…」
「嘘つけ!私にわざと毒入りのスンを盗ませてっ!他の孤児院に配る事も知っててっ!私に全部の罪を着させて…」
わなわな震えながらミシェルはマークに凄んだ。薄っすらと涙を滲ませ両拳は力強く握られたままだ。マークは黙って聞いた。
「孤児院は経費がかさんでいつもギリギリだから、一つにまとめるって噂も聞いた。でも人数が多いしって…こんなやり方…それでも人間か!?」
我慢しきれずガレオンが抑える。
「おいおい…そりゃいくらなんでも言いすぎだ。それにマークがやった証拠はねぇ」
「なんとか言えよ!全部知ってたんだろ!お前がやらせたんだろ!」
ミシェルは泣き崩れその場に膝を着いた。マークは椅子から立ち上がりくるりと壁の方に向いた。
「ミシェル。悲しい思いをさせてしまったな。オレがいながら守るべき者を守れなかった。この世に死んでいい人間はいない。どれだけ残虐で無慈悲な悪党でも、死んで償う事は出来ない。死では解決しない。だがこの世界には争いが起きる。戦う。血が流れる。世界を変えるのはほぼ不可能だ。だから今の世界で血が流れぬように努力する。オレはそうしてきたつもりだ。つもりだった」
「綺麗事じゃない。そんなの。弱けりゃ殺される。強けりゃ弱い者を抑えつける。常に強い者が笑う」
「そうだよな。おかしいよな。オレはその為に戦う。オレの腕は抑えつけるのではなく抱きしめる為に使いたい」
ガレオンはマークの背中しか見えなかったが、涙しているのが分かった。
「スンはアミーユから輸入した物だ。まずは輸入経路を徹底的に調べる。今アミーユはそれどころではないと思うが徹底的に調べる。近々臨戦態勢に入るだろう。敵もジリジリと近寄っている。やられる前に回避する。対峙する前に退避する。世界を動かさなきゃならない。その為に準備してきた」
ガレオンは自身が奮い起っている事に気付いた。早く号令をかけてくれと言わんばかりに身震いしていた。
マークはさっと振り返り、ミシェルの脇をすっと通り、ガレオンの目の前に立った。
「ガレオン。長い準備だったがそろそろ本番だ。焦るなよ」
「…おう。まずは国王に謁見だな」
「あぁ。お目にかかるのは久しぶりだ。献上品を見繕ってくれ」




