始まりの渦3-5
ーーー正義とは何か。定義は無い。過半数が正義と云うのならそれは正義である。その対は悪である。悪とは何か。此れも定義は無い。少数が正義を主張しても悪に屈すればそれは悪になり、悪は正義となる。正義と悪は常に一対なのだ。どちらかが欠ければ其処は正義であり悪である。詰まる所、人間がどちらかに分けている、分けたがっているだけなのだ。そのどちらでも無い所に光は生まれる。光は白か。闇は黒か。必ずしもそうでは無い。勝てば悪は正義と成り、負ければ正義は悪となる。見誤るべからず。その判断は己が下すのだーーー
ラーム教の一節をマークは思い更けに眺めていた。この一節には認めたくないもののこの世の摂理だとして飲み込むしかなかった。常にそうだ。勝者はどんな事をしていても英雄と持て囃されやすい。表面しか知り得ないものにはその表面が全てなのだ。裏側が見えた時、人々は掌を返し拒絶する。その逆も然りだ。
辺りはすっかり日が落ち、家々には明かりが灯っていた。明日は雨が降りそうだ。今夜は眠れるだろうか。
ドンドンドンッ!
玄関の戸を激しく叩く音に少しビクッとした。すぐに声が聞こえた。
「大将!お休みのところすみません!緊急です!」
マークが戸を開けるまで訪問者は戸を叩き続けた。
「今開ける」
戸を開けたそこには一番隊副隊長の[ラーク]が息を切らして立っていた。
「そんなに慌ててどうした。何があった」
「第二駐屯地で不審な人物を拘束しました。ご一緒にお願いします」
「わかった。すぐに支度する」




