始まりの渦3-3
ふと考えた。ふいにこの天井が動き出してそのまま自分に向かってゆっくりと下がり、押し潰されるなんて恐怖を。
ふと考えた。今正に横たわっているベッドが動き出してそのまま地中を目指してゆっくりと下がり、光が届かない深さまで潜る恐怖を。
ふと考えた。夕焼けに染まる空に向かって大きな白旗を持ち、動かなくなった人々の上に登って感情を失った恐怖を。
考えるのを止めた。空は曇り、今日は洗濯物が乾かないことを憂いながら少しばかりの空腹を感じたので。
考えるのを止めた。巻き込まれた戦いで、ただただ我が身を守るために敵か味方かもわからず闇雲に相手を傷付けた事を思い出したので。
ふと考えた。ふと考えるという言葉の「ふ」ととは何なのかを―――
この部屋にはベッドが中央に置かれ、窓は南側に一つ。その窓は風が吹くたびにカタカタと音を鳴らす。テーブルはない。椅子もない。小さめの本棚に本が4、5冊並んでいる。自分がいる。それだけだ。
マークはベッドの上で仰向けに横たわり両手を腹の上で合わせてじっと天井を見つめていた。自分を見つめていた。誰かに見られている気がした。いつもの事だ。その正体を知っている。自分自身だ。
沈まない太陽は無い。そしてそれと入れ替わるように月が昇る。その月も太陽に照らされている。その月明かりに自分は照らされている。
自分がどんなに小さな存在なのかを思い知らされる。
そんなことをふと考えてしまった。




