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スピリット  作者: 猿飛
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始まりの渦3-1

「よぉし。みんな集まったな。これから定例会議を行います。今回の議題は第二駐屯地の設備について意見を出してもらいたい」

マークが言った。この日ガンプー軍は各部隊長を招集し定例会議を行っていた。

議題に上がっている第二駐屯地はバス国最南の[リプール]に設営されている。最近この駐屯地で備品が異様に発注されている事が判明した。武器に限らず、食料、飲料、生活用品など通常の1.5倍計上されていた。小国の護衛軍には財政的余裕もなく、切り詰めた状況が続いていた。


「第二駐屯地は三番隊の管轄だよな。どうなってんだ、フォール」

発したのは二番隊隊長ガレオンだ。年齢はマークと同い年で紛れもなくマークの右腕だ。二番隊は軍全体の統率を図るべく各部隊と密接に情報共有を行い円滑に部隊を展開できるよう調整する。その為、軍内最速の移動速度を誇る。そして局面では味方の窮地を救い、時には敵陣に潜り込み調略活動も行う。戦場を駆け巡り確実な戦略で勝利をもぎ取る。


そして指名されたのが三番隊隊長[フォール]。三番隊は主に先陣を任され突破を図る。力自慢が集結し戦況をこじ開けながらこちらに有利を手繰り寄せる。第二駐屯地は三番隊、八番隊が常駐している。そしてこのフォール、普段は温厚で人見知りでモジモジと小さな声でブツブツ喋る小心者だが戦になると性格が一変する。だが今は戦ではなく会議中だ。フォールが汗を拭いながら話し始める。

「すみません。私もき、気付いたのが二週間前で、それが確信になったのはつ、つい最近です。八番隊と合同捜査を行いましたが部隊内で横領や隠蔽、報告にミスなどは発覚しませんでした」

フォールは話しながら不安げに一人の男をちらちらと横目で見ながら救いを求めた。


視線の先に居るのは五番隊隊長の[スマツ]だった。彼はフォールと同期だ。眼光鋭く整った顔立ちに体格に恵まれ身長は190cm、引き締まった体に剃り込みの入った髪型で威圧を感じ正にお手本の様な軍人を表している。が、彼の一番の能力は頭脳だ。あらゆる戦術を駆使し「負けない」 戦いを得意とする。

「確かに第二駐屯地からの報告でおかしな点はありませんでした。まぁこれはあくまで報告書上での話なので報告自体の真偽は判りかねますが」


「でもそんな事言ったら軍に不届き者がいるって話ですよね?そんな奴いないっすよね?」

食い気味に横入りしたのは八番隊隊長の[テス]だ。ベンダーの息子で少しお調子者だが誰からも愛される明るい性格の持ち主である。狙撃の腕があり、速さと正確さで右に出るものはいない。頭はお世辞にも良いとは言えない。


「疑いたくはないけどこうなった以上は調査すべきじゃないの。第二駐屯地以外でももしかしたら何かあるかも知れないよ」

冷静に言葉を発したのが四番隊隊長の[ハン]。四番隊は医療班だ。彼の的確な処置と判断力で多くの兵士が命を救われている。


両手を頭の後ろで組んで椅子に仰け反りながら話を聞いていた六番隊隊長の[ワンダ]が驚いた様子で言った。

「えっ。マジっすか。この時期に軍全体を調査って結構ハードになりますよ」

ワンダは槍の名手であり、極度の面倒くさがりである。槍を持った際には相手を自分のパーソナルスペースには近付かせない。槍を置いた時には独特の雰囲気で相手を近寄らせない。それは面倒だからだ。


「た、確かに。他の業務もままならなくなるこの時期にやるのは負担がだいぶ…」

目をきょろきょろさせながら弱気な声で言うのは九番隊隊長の[タック]。身長は軍で最小ながら様々な武器でそれをカバーする。最も得意とする武器は短刀で、相手の懐にさっと入り込み正確に急所を突く。見た目通りで気も小さく声も小さいが純粋無垢な性格で憎めない。


イライラしていた気持ちを抑えきれず机をダンと叩き勢いそのままに

「調査なんてもんパパッとやってサクッと終わらせちゃえばいいじゃないですか。怪しい奴なんてこの軍にいたら浮いてしょうがないですよ。ササッと解決でしょ」

と言い放つは十番隊隊長の[ロサリオ]。


「バカみたいな事言うな。まぁそれくらい単純な結末になるならそれに越したことはないけども。存外厄介な案件かもしれないぜ?」

続いたのは七番隊隊長の[メルシオ]。ロサリオとは兄弟でメルシオが兄だ。メルシオは手先が器用で機械にめっぽう強い。弟のロサリオは大雑把な性格だが武器を作る才能に長ける。職人だ。


各人一通りの意見を出したところに遅れて一人部屋に入ってきた。

「悪ぃな。鶏が一匹逃げ出しちまって捕まえるのに手間取っちまった」

頭に手拭いを巻き、作業着姿で入ってきたのは[サンダ]。少数精鋭の騎兵隊をまとめる軍の最年長だ。動物や植物に詳しく畜産業を営む。彼の飼育した馬は強く、速く、機敏でタフだ。


ザワザワとした空気の中、マークは言った。

「わかったわかった。とりあえずこの件に関してあまり時間をかけたくないのが本音だ。確かにこの時期にあまり事を荒立てたくはない。と言っても有耶無耶にはできない」

もうまもなく雪が降り始めようというこの時期はバス国の建国記念日が近付いている事を意味する。建国記念日には様々な催しが行われるが、その分警備もより一層緊張感を持って務めなければならない。


マークは続ける。

「一回各隊の見周りに行くから直近の動向がわかるようにそれぞれ資料をまとめてくれ。それだけでも大変なのは重々承知だがそこを何とか協力してほしい。この件に関してはあまり良くない真相が隠れているような気がするんだ」

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