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無限世界の無限キャラ(外伝)  作者: 無限キャラ
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超時空聖体会議


超時空体で、ムゲンの問題提起したことについて会議が開かれた。



ちなみに会議空間には人影はない。



彼らは普段はその意志だけで存在しているからだ。



望めば肉体をまとうこともできるのだが、好き好んでわざわざ体験強制装置に入ることはないらしい。



ちなみに、ムゲンはまだ意識体であり、超時空体までは進化できていない。



しかし、意識体のままだからこそできることもある。



意識体は肉体に自由に出入りできる。



つまり意識体のままの方が実体験として深く多種多様な体験を味わえるのだ。



そのためにムゲンの実体験を超時空体たちも無碍にはできないのだ。



超時空聖体たちは、さらに進化した存在であり、ありとあらゆる体験者たちの体験を自分の体験だと思いやれる博愛精神を持っている。



そのような精神を持たないままに超時空聖体になることはどうやらないらしい。



超時空聖体たちは、それぞれ膨大な体験者たちを自分の体内に住まわせている。


超時空聖体にもそれぞれ個性はあるが、超時空聖体たちの中に住める者たちはほとんどが心から満足している。



まかりまちがっても、その住人たちを奴隷や家畜や操り人形や実験動物やペットや下僕……のように扱うことはない。



彼らの多くは命も魂も、自らの持っているすべてをささげて、自発的に自分以外の体験者たちがひどい体験を強制されることを阻止したり、素晴らしい体験を楽しめるようにと目指してきたものたちだった。



なんだか不自由な世界の支配者たちと全然違うなあ……とムゲンは思う。



常に問題解決のための一番危険な第一線に立つ覚悟と意志を持っている。



そんな超時空聖体の中にいて、ムゲンは気まずい思いをしていた。



まだ超時空聖体にまでは進化していない普通の超時空体の全知ちゃんが、



「皆さん、こちらがあたしの旦那さんなんですけど、皆さんに不自由な世界の不自由な体験を一度味わってみてもらえないかというんですよ。失礼しちゃうわ。


でも、実体験として味わわないとその不自由さを理解できないと言うんで、すでに存続不可判定が出ている不自由な世界の処遇について今一度再考していただく場を設けさせていただきました」



などと……ムゲンを超時空聖体たちに紹介したのだ。



恐れ多くも超時空聖体たちに意見するとは……みたいな想念の矢のようなものが、ムゲンの全身を苛む。



その矢の発信源は、どうやらまだ未熟な超時空聖体になれていない傍聴人、というか傍聴意識体たちのようだ。



超時空聖体たちは、これこれ……という感じで、その矢をその特殊能力で払ってくれる。



中には傍聴席から退場させられた意識体たちもいた。



やれやれだな……とムゲンは思う。



さすが超時空聖体……とも思う。



不自由な世界から連行されてきた不自由な世界の支配者の参考人たちは、別室でかたずをのんでこの会議に注目している。



「それではこれより●×●×世界の裁判の再審をはじめます」



おごそかに裁判長の超時空聖体がテレパシーで宣言する。



「では、ムゲン殿、証言台にお立ちください」



別の超時空聖体がムゲンに問題提起の説明を促す。



ドキドキしながらムゲンはお立ち台に瞬間移動する。超時空世界では瞬間移動など当たり前の移動方法なのだ。



ムゲンは大きく深呼吸してからテレパシーで話はじめる。まさかこんな大事になるとは思っていなかった……などと思いつつ。



「えーっとですね、まず、事実確認からなんですが、そもそもかの不自由な世界に体験の自治権が保証提供されていないのはなぜなのかについて参考人からの説明を求めたいと思います」



すると別室から数人の意識体たちが、裁判室に転送されてきた。



どうやらかの不自由な世界の支配者か、過去の支配者のようだ。



ムゲンは一度も見たことがない顔だったので、ずっとどこかに身を隠していたのだろう。



きっと表の支配者たちは、代理支配者でしかなかったのだな……とムゲンは思う。



不自由な世界から意識体として召喚された参考人たちは、消え入りそうな声で話はじめた。



「じ、実は、そんな体験の自治権などという権利なんて今はじめて聞いたことですので、自分たちはわざとそうした権利を奪うつもりは一切なかったのでございます……」


などと……



すると、



「異議あり!!!」



と傍聴席の方から大きな叫び声が聞こえてきた。



見ると、そこには全身血まみれの意識体が拷問器具を体に着けたままの姿で仁王立ちしている。



不自由な世界の参考人たちは、その姿を見ると気が動転したのか尻もちをついてしまった。



超時空聖体たちは、彼の発言を許可した。



仁王立ちの意識体は、全身に怒りのオーラをまといながら話はじめた。



「皆さん、彼らは自分たちがわざと体験の自治権を奪ったのではない……などと言っていますが、この拷問された姿が見えるでしょうか? これは私が彼らの部下たち殺される直前の姿そのままの姿なのです。こんな拷問器具、わざと作成しなければ生まれてくるはずがありません。

彼らはわざと私を拷問したのです。

それも、ただ世界支配の方法に異議申し立てをしただけで、私を捕らえ、監獄に入れ、このような拷問をする命令を部下たちにしたのです。

それがわざとじゃないなどという言い訳は真っ赤な嘘です!!!」



と、涙を流しながら訴えた。



また別の者が「私も異議があります!!!」と叫ぶ、


「私は自然環境を守るために、省エネとか家庭菜園とかがんばっていたんですけど、その自然が私と家族を津波で飲み込んだのです。


はじめ、私はそれが単なる自然現象だと思っていましたが、こうして意識体となって当時の真実を超時空図書館で調べた結果、それがわざと起こした津波だったことがわかりました。


他にも洪水とか竜巻とかをエアコンを遠隔操作するみたいに操作してわざと起こしていたこともわかりました。


そうした行いによって私たち家族だけでなく、多くの罪のない方たちが殺されてしまいました。自然環境をまじめに守ろうと努力していたにもかかわらずにです!


これは大量破壊兵器での無差別虐殺です。


嘘をついても、真実は、すべて超時空体験図書館で調べればわかります。


わざとそうした天災を起こすことは、わざと殴りつける行為やわざと殺す行為と同じはずです。


一体、どんなつもりでそんなことをしたのか、私たちはその責任を問いたいと思います!」



すると、次から次へと「異議あり!!!」「異議あり!!!」「異議あり!!!」……


と傍聴席の意識体たちが叫び始めた。



不自由な世界から償還された世界支配者たちは、何か反論しようとしていたが、その裁判している空間の天蓋にその当時の真実が立体映像で再現されはじめたので、息をのんでしまった。



そこには、その当時の世界支配者の心の中まで示されていたのだ。

誰もがその立体映像に出てくる者たちに意識を向けるとその登場人物たちの心の中が感じ取れるようになっていたのだ。


「人間家畜などいくら死んでもいい……この天災兵器の威力を試すいい機会だな……」


「ふむ、なるほど、この毒を投与すると、こうした病気を生み出せるのか……これは人類支配になかなか使えるじゃないか……」


「戦争反対? 何を言ってやがる、世界が平和になると我々が支配者でいられなくなるじゃないか」



その他、実に様々な悪行三昧が発覚しはじめた……



「ほら、あなた…だから言ったでしょう? ここまで腐りきってしまった世界は一度リセットした方がいいのよ」



全知ちゃんがそんなことをテレパシーで言ってくる。



「おいおい、その話は前にもしただろう? そうじゃなくって、アホでダメな本能や欲望を消す薬をまずは提供すべきだろうって話をしただろう?


それに悪いのは不自由な世界の世界支配者たちであって、ここで意義ありと訴えている方たちじゃーないだろう?


そうした罪のないものというか、自己責任が問えない者たちまで一緒にリセットするなんてのはおかしいだろう?」



とムゲンは応じる。



そんなテレパシーでのやりとりもすべて超時空聖体たちに聞かれているんだなとわかるが、まあどっちみちそうした話をする予定だったのでまあ、いいかとムゲンは思う。



「じゃーどうしろっていうのよ! こんなめちゃくちゃな体験強制収容所を存続させた方がいいっていうの?」



全知ちゃんは、あまりの残酷な立体映像を見たために、もう全部消してしまえばいいと思っているようだ。



「いや、そうじゃなくって、ちゃんと誰もが体験の自治権が得られるように改めればいいことじゃないか」



とムゲンも反論する。



「だから、改めれないから、ダメだってなってるんでしょう?」



「いや、改めれないのはダメな本能や欲望とかをわざと魂たちに植え付けてしまっているからであって、そうしたダメ欲望さえ、ダメ支配欲さえ消してやれば、改めれるようになるはずだろう? 

なんでそんな簡単なことをできるのにしないんだよ!世界創造主とか、世界支配者とか、君たち超時空体たちにとってはそれくらい簡単なことだろう?」



ムゲンも実体験としてそうしたダメ欲望とかにさんざん苦しめられてきたので、一歩も引かない。



「いいかい? 全知ちゃん! というか、超時空聖体の方たちも聞いてください。他の傍聴席の被害者の方たちも、また、不自由な世界の支配者たちも聞いてください。


そもそもはじめっから体験の自治権をあらゆる体験者たちに提供しようとしていたら、こうしたもめ事や事件は発生しなかったんですよ。


であれば、時を巻き戻しましょうよ。


でも、その前に、いくら時を戻しても、また同じことをしでかすことが絶対にないように、現在の世界をまずはあらゆる体験者たちが自分の意志だけで自分自身のあらゆる体験を自由に選び楽しめる世界にする必要がありますよ。


少なくともその意志くらいは絶対に今持たないとダメですよ。


そのために必要な最高法規と守るべき心得は、理想世界の作り方という冊子にまとめましたから、それにそって不自由な世界を自由な世界に改めればいいんじゃないですか?


それとも自業自得学園様に飲み込まれて永遠に続く不自由世界体験を繰り返し体験してお勉強する方がいいですか?


それと、超時空聖体様たちならば、世界支配者たちの悪い感じの支配欲も、その他の方たちの悪い感じの欲望なども、消すことができるんでしょう? 


できないとはいわせませんよ。実際にこんなおかしな欲望を与えているんだから、与えないこともできるにきまってるでしょう。


実体験でそうしたことができることくらいすでに私の分身体たちで確認しているんですからね。


それなのに、悪い欲望に従って残酷な世界が生まれたから、悪い欲望を消すのではなく、無差別殺人みたいにその世界の体験者たちごと消せばそれでいいだなんておかしいでしょう?


人類っていっても、ピンからキリまで善人も悪人もいろいろいるんですよ。劣化してダメ欲望に従ってしまっているとしても、それはダメ欲望を与えたりしなければ、問題ない方たちなんですよ。


わかりますか?皆さん


私の劣化した分身体たちだけの新世界を私が作ったら、ああ、これはダメな世界だとかいって消すつもりですか?


そんなことは私の自由でしょう?


であれば、それぞれがあらゆる体験を自由に選んでスタンドアロンで分身術を使って好き放題に自分だけで一人無限役をしてありとあらゆる体験ドラマを楽しめる完全プライベート世界を提供してあげればいいじゃないですか。



できないわけないですよね。それくらい……超時空聖体様たちなら。


というか、体験交換術を使える老賢者様とか昭雄ダンジョンの世界とかでは、すでにそれが実現できてるんですよ。


つまり技術的にはできることがもうわかっているんですよ。


肉体から意識体に進化する道も、皆に開いてあげればいいじゃないですか。


物質の肉体みたいな拷問体験強制装置ではなくて、空想したことが自由に体験できる意識体をはじめから無条件に与えてあげればいいじゃないですか。


何、わざとえこひいきして自分のイエスマンたちにしかそうしたより自由な意識体を提供していないんですか?

それが超時空聖体たちの博愛精神ですか?


そんなわけないですよね」



などと一気にテレパシーで伝えた。



超時空聖体たちは、そのテレパシー演説を聞いて何やら高速で考えているようだ。



ムゲンにはまだ理解できないテレパシー以上の何かで高速で意思疎通している気配を感じる。



ムゲンはポケットから自業自得学園様にしたためた告訴状をそれとなくチラつかせている。



ついに裁判長が口を開いた。テレパシーだけど……



「この度の再審においては、ひとつの不自由な世界、ひとつの惑星、ひとつの種族だけの問題を超えたあらゆる世界全体の価値観の見直しが問題提起されたと理解しています。


良き世界を創造し維持するためには良き意志が必要不可欠となる……という価値観から我々はこれまで良き意志だけを選別し救出し、そうでない意志は消すという判断をしてきました。


それはそれで良き意志、悪き意志が混沌とした状態においては必要な対応でもあったと思います。


なぜなら、悪き意志まで守り残していたのではせっかく芽生えた良き意志も悪き意志に駆逐され消えて行ってしまうことがわかっていたからです。


ムゲン殿から問題提起があった不自由な世界とは、まさにその悪き意志が良き意志を駆逐してしまった成れの果てに近い状態になっています。


弱肉強食の世から……戦国の世となり、ついには自滅のための技術を持ち合うようになってしまった末期症状の世界となっています。


ですので、先の裁判においては、全員一致の判定によりかの不自由な世界の体験強制システムとその肯定者たちは存続不可、ただし、そうしたシステムに良心から抗う良き意志は救う……という判定をしておりました。


しかし、ムゲン殿の申し立てを皆で再考した結果、確かに我々には悪き欲望を消す能力があり、体験の自治権を保証提供できる能力も今は持つことができる地点にまできていることから、我々にもまたその持ちえた能力を良き目的に使う責任と義務があるとの理解に達しました。


ただし、この意識世界では、あらゆることが変化してまいります。今はそうでも気を抜けばまた悪き意志が勢力を増やし、私たちの手に負えなくなる可能性も0ではありません。


よって絶対安全を確保できるだけの必要十分な世界統治能力を良き意志が持てる状態が不退転な状態となるまでは、悪き意志に無条件の自由や保護を提供することはできません。


ですが、これまでの悪き意志や悪き行為を本気で反省し、改めることが自発的にできた魂においては救済措置を取りたいと思います。


そのためにはまずは悪き欲望を持っている魂たちには、自発的にそうした悪き欲望を消してもらいたいという要請をしていただきたいと思います。


自力では消したくても消せない悪き欲望がある状態においては、その欲望から生じた結果だけで断罪することをやめようと思います。


しかし、まさに今、その行為を止めさす強制力を行使しなければ、誰かの体験の自治権が奪われてしまうような場合には、断罪はしなくとも、強制的にその自由をはく奪されても文句は言えないとご理解ください。


ですので皆さまには、あらゆる体験者たちに体験の自治権を保証提供する意志 をできるだけ自発的に持っていただきたいと思います。


それが免罪符となります。



この意志をどうしても自発的に持てないとなれば、その意志を持てるようになるまでは、自業自得学園様の方でお勉強というこれまでの措置も致し方ない場合があることをご理解ください。

あるいは自力ではどうしようもないので治療をしてほしいとの要請があれば、悪い欲望や願望を消す治療をできるだけしたいと思います」



などとおっしゃった。



なるほどな~とムゲンは関心する。



いろいろちゃんとまじめに皆のことを考えてくれているんだなあ……と思う。



さすが超時空聖体様……



ムゲンはそう思いながらも、じゃあ、悪い欲望ってどんな欲望なのか定義してもらわないと後々問題になりそうだな……とも思った。



すると以心伝心、超時空聖体の裁判長は、



「安心なされよ、ムゲン殿、悪い欲望とはそなたが最高法規として示している<他の体験者の体験の自治権を奪いたくなるような欲望>ということにしておるよ」



と言われた。



なるほど…それならどんな状況にでも判断基準にできそうだ。



でもまてよ……とも思う。



あの不自由な世界では、肉食動物という種族がいるが、あいつらはそうなるとどういうことになるのだろうか……



飢えにさいなまれても、他の動物たちの体験の自治権を奪うことになるから肉食できずに、これもまた飢えという拷問体験を拒否できないという体験の自治権がない状態で苦しむことになりそうだな……



こちらをたてるとあちらが立たずみたいな状況があの不自由な世界には結構あるような気がするな……



などと考えていると、



「じゃあお肉と同じ栄養素の食べ物をそもそもの元素から作ってしまえばいいんじゃないの?」



と全知ちゃん。



あ、それもそうかと思う。まあ、超時空体ならできるんだろう……



まあ、他にも探せばいろいろ問題はあるんだろうけど、超時空体たちにまかせればまあ、なんとかなるんだろうなとムゲンは思った。


すると、テレパシーでその思いを察知した全知ちゃんに、


「あなた! あたしたちにだけ任せるとか、裁判長の話をちゃんと聞いてたの? 


皆が自発的に皆の体験の自治権が保証提供される世界を実現してゆこうとする意志を持ちましょうねって話だったでしょう?


そんでもってその意志が持てない魂は、裁判で断罪はしなくても自業自得学園送りになることもありますよって話だったでしょう?


ただ治療要請は受け付けますって。


そんなあたしたち任せでいいやって意志で、治療要請もしなかったら自業自得学園送りになっちゃうわよ!


しっかりしてよね!あなた!」



などとムゲンは全知ちゃんに叱られてしまった。



ムゲンは安全確保のために治療要請を念のためにテレパシーでしておいた。


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