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いじめられてみた  作者: ケト
自白してみた
60/65

60話 対処してみた(一)

 動画撮影を一回で終えた恵子。動画での通話状態を続けたまま『担任に電話をする』夫を見守っていた。


 自分の名前を名乗り、自分の気持ちそのままにいじめを訴える夫は、少し感情が先走っているようにも思えた。

 だが、誰が聞いても、それはまさしく『いじめられたその日に担任に電話する父親』そのものであっただろう。

 ――まぁ、演技でもなんでもない、楽な仕事なのだが。

 

 でも、やっぱり……Kの提案そのままに使ったメールアドレス『mitapapa-to-mitamanma-lovelove@……』は、場の雰囲気をぶっ壊してしまうのでは、と少しヒヤヒヤした恵子であった。



 午後九時半。

 満を持して『猫を飼ってみた』動画を投稿する。


 登録者数は順調に増え続けており、猫動画に頼らなくても、あと一週間もあれば目標の十万人に到達するだろう。

 それでも投稿した理由は一つ。『ケト』という名前を出すため。


 今後、中津江なかつえ将太しょうたを誘拐、軟禁したら、警察の捜査が入るだろう。

 ここまでの準備で使った『ケト』というユーザー名とケッチャンを結びつけるためであった。


 だから、皆さん、「結局、最後は猫頼みかよW」「ネタ尽きてて草」などと思わないでほしい。

 というか、猫を被っている時点で、最初から猫に頼っているのだし。




 十月三日、土曜日。

 午前二時。いかにも怪しい、真っ黒い出で立ちの夫が、空き家へとやって来た。

 冷凍庫に籠る息子だけを自宅に残し、二人はまたしばらく、空き家での生活を続けることになった。



 十月四日、日曜日。

 午前九時に、夫の携帯電話が鳴った。

 息子の担任の先生からだった。

 録音ボタンを押し、念のためパソコンのカメラでの撮影もしながら、通話を開始する。


 学校が下した、いじめっこ三人への処罰。それは『一か月間の停学処分』であった。

 息子を死へと追いやった三人であるのだが、表向きはただのモノ盗りなのだ。仕方がないだろう。


 当然だが、前回盗んだモノも含め、全てが返品されるという。

 担任には返却先として、自宅ではなく空き家の住所を伝えた。



 十月七日、水曜日。

 全ての盗品が返されたことを確認すると、夫は、荷物の送り主に電話をかけた。


 弁護士を装った夫から、


「依頼主の富田様から、損害賠償の請求について話をするよう、依頼されている」

「今週の土曜日、十月十日に訪問したい。都合の良い時間を教えてほしい」


 そう伝えると、三家族とも午前中であれば都合が良いと言うので、『阿倍アー山部ベー中津江ツェー』の順に九時、十時、十一時に訪問することにした。



 十月十日、土曜日。

 午前八時四十五分。弁護士を装った夫が、いじめっこ宅へと向かった。


 ここ半年間、二人は法律、特にいじめに関することを勉強した。

 また、いじめに詳しい弁護士に実際に相談するなどして、対処法を熟考していた。


 世間体と真面目さだけが取り柄の夫だから、きっと問題無く、いじめっことその両親を脅してくるだろう。

 そういえば――整形で少しイケメンになったから、先ほどの取り柄に『外面そとづら』も追加しておこう。



 十二時過ぎ。

 コンビニ弁当を手に、夫が帰宅した。

 ようやく見慣れてきたイケメンの夫がニコニコ顔をしているので、どうやらうまくいったようだ。


 中津江家がヤンチャだった、というネタバレを含む概要を聞きながら、録ってきた音声を聞かせてもらった――




「いじめられるほうが悪い……? クソ野郎が! でも、これで心置きなく誘拐できるね」


 口は悪いが、Kの言い分はもっともだった。

 中津江将太の誘拐、そして軟禁は、我々が犯す罪の中で最も重いもの。

 多少の不安と大きな躊躇いを抱えていたのだが、少年の言葉は、それらを綺麗さっぱり消してくれた。

 それどころか『むしろ早く誘拐したい!』という気持ちを抱かせてくれたのであった。



 十月十六日、金曜日。

 午後八時半。ケッチャンネルの登録者数を確認する。

 その数『106101人』であり、目標数を超えていた。

 実際は先週の時点で目標を達成していたのだが、計画どおり、いじめの二週間後に生配信することに決めていたのだ。



 午後九時二十五分。

 生配信まで、あと五分を切った。

 一階のリビングに移動した夫は、あとは配信を観るだけなのだが、かなり緊張している様子だ。

 そんな中、すでに猫を被り、あとは配信ボタンを押すだけの恵子。Kといつもどおり独りガールズトークを繰り広げていた。


「大丈夫かなぁ……あぁ、心配だわ。あたしが生配信なんかしちゃったら、本当にK子教団ができちゃうんじゃない?」

「その教団の教えが『いじめは良くない』なら良いけど」

「ふんっ、小さいわね! あたしが教えるのは『いじめる方が悪いに決まっている』よ!」

「いや、あんまり変わらないし。でも、その教えは大賛成」

「あっ、でもさ、相手が喜ぶいじめなら悪くないのか……例えば、鞭とかロウソクで」

「はい、5秒前」

「ちょ、せめて10秒前に……」

「3、2、1――」


 生配信、スタート。

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