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いじめられてみた  作者: ケト
自白してみた
51/65

51話 準備期間(二)

 午後七時、夫が帰宅した。

 職場から中津江家の前を経由して帰ってきたらしく、いつもより遅い帰宅であった。


 中津江家は、息子の通っていた氷山高校から北東、約二キロメートルに位置しているそうだ。

 一方で、我が家は高校から西に約一・五キロメートルに位置している。

 つまり、いじめっこたちはあの日、まず我が家に約一・五、そしてそこから自宅まで約三・五、合計五キロメートルという、なかなかの距離を歩いたらしい。


 きっと『遠かった』という記憶だけはしっかり残っていることであろう。

 そんな記憶を薄れさせるためにも、半年の準備期間を設けたのは正解だったのかもしれない。




 四月十七日、金曜日。

 またもや午前十時ちょうどに、仁井田からのメールを受信した。

 内容は、一昨日追加したばかりの依頼に対する報告。『嫁のSNS情報』そして『ライブチケット二枚』を入手したというものであった。


 すぐさま仁井田に電話し、K子から暴言に似た労いの言葉を浴びせると、「ありがとうございます、ケイコ様!」というお決まりの感謝の言葉が返ってきた。

 

 さらには、旦那の情報も掴んだらしく、しかも不倫情報を入手したというのだ。

 どうやら少し前から若い女と関係を持っているようで、


「不倫を確定付ける写真を撮ってきますぜ」


 と明るい声で宣言した仁井田に対し、


「そのときは望みどおりの台詞で罵ってあげるから、考えておきなさい」


 とK子が言うと、いつもよりも元気な感謝の言葉が返ってきたのであった。

 どうやら、報酬のことなど忘れている様子の仁井田。K子の浴びせる暴言が報酬の代わりになっているのだろうか……深くは考えないようにした。

 


 仁井田から報告のあった、嫁のユーザー名『kisaki』を検索してみる。

 検索すると、二人のユーザーが表示される。うち一人のアイコンが例のアイドルグループの写真であったため、きっとこちらで間違いないだろう。

 最新のつぶやきから過去のものまで目を通すと、やはりアイドルグループのつぶやきばかり。そこからは特にお気に入りの一人がいることがわかった。

 

 一昨日に『ケト』というユーザー名でアカウントをつくった恵子は、アイドルグループに関するつぶやきを続けていた。

 嫁のお気に入りを知るやいなや、SNS上でアイドルを中心にイラストを描いている絵師を見つける。アイコン用として、そのお気に入りアイドルのイラスト作成を依頼したのだった。



 嫁のつぶやき全てに目を通した結果、おそらく嫁の渾身のつぶやきであろうと思われるものを、ひとつ抽出する。

 少し考えると、全身全霊の媚びコメントを残してやることに。

 すると、その三十分後、嫁から返信のコメントがあった。


 今までのつぶやきから、嫁の性格や趣向は概ね把握していた。

 そして、その返信コメントには、最上級の感謝が込められていると判断。すぐさまフォローしてみた。

 すると、すぐにフォロー返しされる。

 予想どおり、まさに入れ食い状態というやつだな、と感じた。


 いじめっこを産み、いじめっこを育てた――すなわち元凶と呼ぶべき女などとは仲良くしたくない恵子。嫁とのやりとりは全てKに任せることにした。

 ただし、Kは口しか動かせないため、恵子はKの言った通りのコメント、つぶやきを入力するだけのマシーンへと化したのであった。



 午後九時半。

 いよいよ動画初投稿の時が訪れた。


 記念すべき第一回目の投稿ボタンを、Kの『ドーン!』という発声とともに押下する。

 

 素性のわからない人物が、ただただ志を語る動画。余程の暇人か、手違いでもない限り観ないだろう。

 ただ、今回はあくまでも『とある計画のためにキャラを変える』ことを宣言する回であるため、視聴回数のことは気にしない。

 

 ということで、登録者を増やすのは次回からである。

 ネタは既に幾つか考えており、マスコット的なイラストキャラも登場させる予定だ。

 ゆっくりなボイスをつけて、動画に対するコメントをしたいと考えているのだ。

 イメージとしては、夫の言うことに恵子とKが突っ込む――そんな感じである。

 とりあえず夫には、「そんな感じのことをしたいから、技術を習得してね」と頼むと、「う、うん」という心弱い返事をもらったのであった。




 四月二十日、月曜日。

 午前十時、仁井田からのメールを受信する。

 中津江大悟の浮気現場を押さえた、という報告であった。


 メールには画像ファイルが二つ添付されており、そのうちの一つを開く。

 ラブホテルと思われる建物の入り口で、体を密着させて楽しそうに笑う一組の男女が写っていた。

 そして、もう一つの画像は、その建物に入っていく様子を写したものであった。


 仁井田に電話をすると、約束どおり、K子に言われたい台詞を聞いてみる。

 すると、「色々考えたけど、ただ普通に、依頼とは関係の無い会話をしたい」という仁井田。

 

 そんな彼に、K子は一分程度の『無言』という仕打ちを与えた。 

 結果、「ありがとうございます、ケイコ様!」という、いつもの五割増の感謝が返ってきたのであった。


 今後のことを考えてか。K子は仁井田への別れの言葉として、「また用ができたら、会いにいくよ。電波ヤックルに乗って」

 という謎の台詞を残し、ひとまず探偵への依頼は終わった。




 四月二十一日、火曜日。

 午前三時半だが、いつにも増してテンションの高いKの、たってのお願いを聞いた恵子。とある文章をしたためた。

 どうやら、次回予告をしたいらしい。


 さーて、次回の『自白してみた』は?


 K子です。


 あくまでもいじめっこへの制裁のため、悪魔にでもなると誓ったあたしたち。

 準備を進める中で、諸悪の根元、中津江家の崩壊に向けた動きも本格化してきたのでした。

 

 さて、次回は、

 

『カメラつけるよ鍵貸して』

『ライブと男子に羽目外す』

『中津江家崩壊』


 の三本です。

 次回もまた見てくださいね!

 

 カウィバウィボ!

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