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いじめられてみた  作者: ケト
自白してみた
47/65

47話 四月十三日(二)

「なら、あたしが代わりに『ケッチャン』を演じてやろうか? 投稿王になる、なんて向上垂れたのもあたしだし。

 まぁ、急にしゃべれって言われても、面白いこと言う自信はあるけど……ネタはあんたに任せるわ」


 なんということだろうか。どうやら、Kとの会話ができるようだ。

 口の奪い合いなので、当然だが同時にはどちらか一方しか話せない。

 

「じゃあ、あなたにお願いするけど……動画撮るときにだけ現れるなんてできるの? 今までは恵介のこと考えたり、見たりしないと出てこなかったよね?」

「うん、本当ほんとはいつでも出れるんだけどね。でも、ほら、あの人の絶望的な顔、あんまり見たくないじゃない? 二回も見ちゃったけど。

 だから、よっぽど表に出て言いたいことが無い限り、出ないようにしてたの。これでも一応、我慢強いんだからね」


「もしかして、体も乗っ取れたりする?」

「あぁ、あれはあのときだけだったみたい。あんたがよっぽどショックを受けたからか、ぶっ壊れてすぐだったからか。まぁ、そのおかげで金曜の映画ショーを録画できたけどね!」

「いや、あのとき、視聴予約しかしてなかったよね?」

「ガーン! ……まぁ、いいや。でさ、実はあたしもネタ考えてるんだ。ほら、見損ねたコナム君関連でさ、今まで遭遇した事件数と死体の数を数えてみようよ。漫画全部に目を通して」

「なるほどね。数えてみた、ってやつね。でもそれ、かなり大変そうじゃない? だってあの漫画、百巻くらい出てなかった?」

「まぁ、限られてるとはいえ、時間はたっぷりあることだし。それに、ちゃんと読まなくても数えるだけだからね。

 あ、あとさ、カネダイチハジメちゃんの方も数えてさ、どっちが多いか、ってやればいいんじゃない?」

「そのネタもらった! じゃあ、早速漫画買う……のは大変か。よし、電子書籍にしよう。早速購入じゃ!」


 その後も、恵子とKは一つの口で喋り続けた。

 いったいどんな原理なのかはわからないが、一人で二人分考えられるのは都合が良すぎるのであった。



 その日の午後八時。

 夕飯を食べ終えた二人は、恵介の部屋に集合し、今日の成果を話し合った。 


「とりあえず、『ナカツエ』って名字の家は市内に一軒しか無いことがわかった。漢字は、中大兄皇子なかのおおえのおうじの『中』に、津田梅子つだうめこの『津』、江戸川乱歩えどがわらんぽの『江』で『中津江』だ」

「あのさ……人の名前の漢字を説明するのに、人の名前出しすぎ。そっちの漢字思い出すので精一杯だったわ。まぁ、わかったからいいけどさ」

「住所もわかったから、あとはどうやって調べるかだな」

「やっぱり、ここは探偵にでもお願いしとく? ほら、浮気調査とか称して『うちの夫と中津江の嫁が関係を持ってそうだ』なんて言って。そうすれば、子供の情報を含めて、中津江家のこともわかるんじゃない?」

「そう、だな。何の情報も無いし、もちろん対象の写真も持ってないし……でも、そんな人の調査なんてしてくれるのか?

 あぁ、でも、中津江って名前珍しいから、そこは名字だけでいけるか。でも、やっぱり、後々にそういう動きがあったってバレないか?」

「探偵だから、そういう個人情報とか、事情とかは守ってくれるんじゃない? それに、電話だけで、しかも匿名で依頼できるかもしれないよ」


「わかった。じゃあ、どうする? どっちの浮気調査にする? 別に、俺でもいいけど」

「うーん……中津江家の親、どっちを攻めるか、だね。どっちかというと、母親の方が安全かもね。

 だって、いじめっこの親なんてどうせロクでもない奴らでしょ? もしも接触する必要が出てきたら、男の方だとガラ悪そうだし、暴力なんかで訴えてきたら太刀打ちできないし」

「わかった。じゃあ、俺が浮気してるってことで。俺が中津江家のことを調べてれば、都合良く、何か怪しい行動してるって思われるかもしれないしな」

「じゃあ、決まりだね。明日、市内の探偵事務所を調べてみて、電話かメールか……わかんないけど、依頼してみるわ。

 ――あなた、くれぐれも怪しい行動をするように気を付けてよね!」



「……あの、さ。さっきからずっと……恵子、だよな?」

「ん? そうだけど……あぁ」


 恵子は、夫の言わんとすることがわかった。

 日中ずっとKと喋っていたせいか、きっと、発言がそっち寄りになっているのであろう。


「ほら、キャラ変えなきゃだし、慣れるために日常から、ね? 敵を欺くために、まずは味方から、って言うでしょ」

「そうか、お前も頑張ってるんだな。よし、中津江家のことは探偵に頼ることにしよう。

 次は――というか、これから実行すること、必要なことを俺なりに考えてみた。挙げてみるから、過不足あれば教えてくれ」



『十月一日以降、恵子が変装して学校に行く』

『いじめられる』

『カメラをどこかに仕込んで、いじめの様子を撮影する』

『撮影した動画を投稿する』

『百万人以上に視聴される』

『動画を証拠にして、いじめっこに制裁を加える』

『いじめっこが死ぬほど反省する』

『俺たち、死ぬ』



 夫が淡々と、端的に挙げた内容。

 全てがうまくいくためには、死ぬ気でやらなければならないだろう。

 でも、死ぬ気でやるだけでいいのなら、簡単なこと。


 だって、『死ぬ気』じゃなくて、『死ぬ』のだから。

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