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いじめられてみた  作者: ケト
自白してみた
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44話 四月十日(三)

「制裁って言うけど……そもそも、自殺の原因っていじめなの?」

「それは、部屋を見回せばわかる――と思う」


 部屋に入ってから、パソコンとベッドしか目にしていなかった恵子。あらためて部屋の中を見回してみる――と、すぐに気が付いた。

 いろいろと、無くなっているのだ。


 恵介がこれまでのお小遣いの九十九パーセントを費やした、ゲーム機、ゲームソフト、漫画。それらがほとんど見られない。

 いくら息子の心が寛大でも、こんなに大量のモノを人に貸すとは思えない。

 何より、息子が遊ぶモノがほとんど残っていないではないか。

 これでは、ゲーム屋とか家電量販店のチラシを眺めるくらいしか楽しみが無い――

 

 ふと、恵子は思い出した。

 買い物から家に帰るときにすれ違った、息子のクラスメイトと思われる三人。

 嫌悪感を覚えるニヤニヤ顔――それは置いておくとして。その手には、それぞれ手提げ袋を持っていたのだ。

 何となく角張ったものも入っていたし、おそらく、アレは息子の部屋から持ち出したモノではないだろうか。

 恵子は、そのことを夫に伝えた。


「三人か……やっぱり、間違いないな。これ、見てくれ」


 夫は、机の上に置いてあったノートを開いたまま、恵子に差し出した。

 最後のページのようだが、息子の筆跡でそこに書かれていたのは、三人の名字と思われるもの。


 『アベ』『ヤマベ』『ナカツエ』


「パソコンの横に開かれたままで置かれていた。自殺する直前に恵介が書き残したもの、だと思うんだ」


 名字だけなのは、たぶん、下の名前を知らなかったからであろう。まだ入学して三日目だったのだから。

 入学後、間もなく命を絶ったのだ――恵子が改めて息子の死を痛感していると、またもや恵子(壊)に口を奪われた。


「アー、ベー、ツェー……ね。よし、どうやって殺す?

 そうだ、いじめっこの足に縄をくくり付けて、結婚式のときに空き缶引きずって走る車に取り付けよう!

 空き缶のガラガラって音と、いじめっこの悲鳴が奏でるハーモニーやいかに! 血痕式、なんちゃって! ヒューっ……寒い!」



「――あと、恵介のパソコンを見ていて気付いたことがもうひとつあったんだ」


 何も聞こえなかったかのように、自然に恵子(壊)の発言をスルーした夫。

 パソコンに保存されていた動画データを再生する。

 画面では、リアルな猫の被り物を被った『ケッチャン』と名乗る人物が、何やらウエハースの開封を始めていた。


「これって、もしかして……恵介、なの?」

「恵介のパソコンに保存されていたんだ。何より、この被り物――今年の正月に買った雑貨屋の福袋、たしか一万円だったと思うけど。そこに入ってたやつじゃないか? まぁ、クローゼットを覗いたら入っていたから間違いないんだが」

 

 デスクトップに貼られた『ケッチャンネル』と名前をつけられたフォルダの中には、他にもいくつかデータがあるようだ。


「データは全部で九個あって、全部観てみたんだけど。恵介――ケッチャンが何かをやってみる、っていう動画だった。

 もしかしたらと思って、ネットで『ケッチャンネル』って検索してみたら――ほら、動画投稿サイトに投稿していたらしい。

 最初の動画が今年の一月三十一日で、最後は……四月三日、先週の金曜日。どうやら、毎週金曜日に投稿していたみたいだな」

「こんなことしてたのね、知らなかった……ていうかこの動画、全然観られてないね。これなんか視聴回数八回だって……」



 恵子が動画を観て視聴回数を増やしてあげている間、夫の話は続いた。


「いじめっこの名字のうち、『ヤマベ』と『ナカツエ』は比較的珍しいな。電話帳とか、もしダメだったら俺の職場で水道の顧客情報でも調べてみるか……何にしても、まずは住所の特定かな」

「クラスの連絡網とかあればいいんだけどね。ま、しょうがないか。探偵に依頼するとかは考えてないの?」

「そう、だな。どうやっていじめっこに制裁を加えるかとか、そのための準備とか――まだちゃんと考えてないけど、他人には頼らないつもりだ。法に触れることもあるだろうし、『共犯者』を増やしたくない」

「そっか……ほら、いじめ被害者の関係者とか、協力してくれる人もいるかな、なんても思ったんだけど。まぁ、最終手段としては考えとこうか」


「じゃあ、いじめっこの情報はこれから集めるとして。次は『どうやって』『どんな』制裁を加えるか、だけど。

 殺すとか、外傷を与えるようなことはしたくない。自分がしたことが犯罪だってことを認識してもらうのと、死ぬほど反省してもらえればいい、と俺は思ってる」


 外傷と言ってるということは、精神的な傷は負わせてもいい、ということであろう。

 普段、人の気持ちを考え過ぎるほど優しい夫の決意を、恵子はあらためて感じる。


「それで、恵介の動画を観てて思ったんだけど――恵介をいじめた奴らが『いじめ加害者』、つまり『犯罪者』だってことを証明できる映像を撮影して、動画として投稿したらどうかな?

 映像を証拠にすれば、いじめっこを停学処分にさせることもできるだろうし、親には損害賠償だって請求できるだろう。加えて、投稿することで大多数の人に観てもらえれば、普通の生活を送れなくなるんじゃないか?」

「えっと……三人が『いじめっこです』って、動画で広めるってこと? 尾行して誰かをいじめるところを撮影するとか?」

「そう、だな。まだ具体的には考えてないんだけど……そんな、うまくはいかないか」



 三人のニヤニヤ顔を思い出した恵子。

 もしも――そうだ、あと五分でも早く帰っていれば、何かが変わっていたかもしれない。


 ハンバーグを食べて、笑顔で「美味しい!」と言う恵介に、「至極当然」と、どや顔していたかもしれない。

 コナム君を観ながら、男二人で推理合戦をしているところに、「こく。犯人は、この中にいない!」と、その邪魔をしていたかもしれない。

 ――などと感傷に浸っていると、またも恵子(壊)に乗っ取られる。


「あたしが恵介のふりして学校に行けば、またいじめられるんじゃない? ほら、中身は残念なくらいあなた似だけど、外見はほぼあたし似よね」

「なるほど……ケーの案、良いかもな。恵子はどう思う?」


 恵子(壊)の発言に初めて反応した夫に驚く恵子。


 あと……Kって、何?

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