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いじめられてみた  作者: ケト
捜査されてみた
38/65

38話 富田家(一)

 携帯電話を耳に当て、片平かたひらは、富久山ふくやまに視線を送っていた。

 顎で「結果を聞いておけ」と指示をすると、富久山は自分の携帯電話を取り出す。

 結果によっては、すぐに本部長に電話するというサインであろう。

 それを見た御手洗みたらいも、すぐさま鍵屋に電話できるよう準備をする。


「――はい。隣に富久山警部がいるので、聞いたまま伝えますよ。えぇ――はい――空き家には――何も無かった、ですね!」



 結果を聞くや否や、御手洗と富久山それぞれが電話を始める。


 まず、御手洗。鍵屋に、事前に知らせていた富田家の住所へと直ちに向かうよう指示した。

 そして、富久山。本部長へと結果を報告すると、直後にゴーサインが出たようだ。

 電話を切ると、すぐさま部屋にいた六人に指示をする。


 その場には、富久山を含む捜索班四人が揃っていた。

 そのうち二人には、連絡調整のため部屋に待機するよう指示。

 まだ電話中の片平には「行くぞ」と促しつつ、電話の相手――聞き取りに出ている二人には、富田家へと直行するよう指示させた。


 富久山、片平、御手洗、捜索班の一人である河津かわづは、全速力で車に乗り込むと、富田家へと急行した。



 午後三時半。

 四人が現場に着くと、先に到着していた大槻おおつき安積あさか、そして鍵屋が会話をしていた。


 富久山は、安積と河津の二人に「家の正面と背後の路上に車を配備して、車内に待機」と指示。

 家の敷地内、裏手の二角には、大槻と片平の二人を配置した。

 残る富久山と御手洗が、鍵屋と共に玄関へと 向かう。


 早速、玄関の施錠の確認を始めた鍵屋に、富久山が問い掛ける。


「どのくらいで解錠できそうだ?」

「穴を開けていいなら、数分で開きますよ」


 鍵屋の素っ気なくも心強い回答に、富久山は間髪いれず、穴を開けることへの許可を出した。

 鍵屋は、工具箱からドリルを取り出すと、鍵穴のすぐ近くに穴を開け始める。


 清閑な住宅街に、金属の擦れる音が響く。

 ものの一分もかからずに穴が開くと、鍵屋はドリルを工具箱に戻し、別の工具を取り出し始める。



 そのとき、僅かではあるが、御手洗の耳に何かが聞こえた。

 それがドアの内側からだと気付くと、鍵屋の邪魔にならないよう、ドアに耳を付ける。


 内側からは何者かが戸を叩く音。そして、「助けて」という声が聞こえた。


 防音性がかなり高いのか、耳を付けてやっと聞こえる程度。

 中の人物も、おそらくだが、ドリルの音で外の様子に気付いたに違いない。


 中に閉じ込められている人物がいることがわかり、気がはやる警察官二人。

 そんな二人を余所よそに、鍵屋は落ち着き払い、精確な作業を続けていた。

 鍵付近に聴診器のようなものを付けると、何かの音を聞きながら、何やら細い工具で鍵穴をいじり始める。

 

 たかだか三分程度の作業時間。

 だが、二人にとっては、ひどく長く感じられる時間だった。


「開きました」


 待ち侘びた台詞とともに、鍵屋は工具を片付け始める。


 富久山は、鍵屋に礼を言うと、署に請求書を出すよう伝える。

 そして、速やかにこの場を離れるよう指示した。




 富久山が、玄関のドアノブに手をかけた。


 中から働く力があったのか――富久山がドアを引く力を込める前に、勢いよくドアが開かれる。



 ドアが開いた直後――御手洗が見たのは、中から勢いよく飛び出す裸足の少年。

 

 ドアが開いた瞬間――御手洗が聞いたのは、『カチッ』という無機質で小さな音。

 そして、すぐあとに続いた『ボンッ!』という、衝撃を感じるほどの大きな音であった。

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