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いじめられてみた  作者: ケト
捜査されてみた
36/65

36話 聞き取り結果(四)

 八手やつでは『実は、元旦那から浮気調査を依頼されているのは自分である』と言った。

 そして、元嫁に対しても、『自分に浮気調査を依頼してみないか』と勧めてきたのだという。


 元嫁も、初めは何を言っているのかわからず、何が目的なのかを聞いた。

 すると、『自分はただ、あなたにとって有利になる情報を得ること』そして『相手にとって有利になる情報を偽造して提供し、あなたとあなたの夫、両方から相応の報酬をもらうことが目的』と言ったらしい。


 そして、もしも調査を依頼するのであれば、二つのことを実施する、という話が続いた。

 うろ覚えではあるが、概ねこんなことを言っていたという。



 まず一つ目。

『五月十五日に、一泊でツアーに行くと思うが、その日、わたしはあなたの尾行を依頼されている。

 そして、良い写真が撮れたなら、報酬は弾む、とも言われている。

 一緒に泊まる相手が女性か、はたまた男性かはわからないが、男性とホテルに入る写真を撮影したい。

 もちろん、あなたが有利となるよう、それが後々に嘘の写真であることを証明できるよう、偽造する』


 二つ目。

『あなたが不在の五月十五日に、あなたの息子さんが友達の家に泊まるとしたら――きっと、あなたの夫は女を家に連れ込むでしょう。

 許可が得られるのであれば、寝室にカメラを仕掛け、撮影したい』


 そして、次にはお願い事について話があったという。


『まずは、自分に調査を依頼してもらいたい。

 次には息子さんに、五月十五日に友達の家へと遊びに行くよう勧めること。

 あなたの夫の浮気現場を撮影できたら、わたしに報酬を支払うこと。

 もちろん、法外なお金をとるつもりはありません。

 何もせずに、あなたの夫にとられることになる慰謝料と比べれば、可愛いものだと思いますよ』



「元嫁は、間髪を入れずに全ての要求を受け入れたようだ。

 既に元旦那の浮気は察していたらしく、寝室に女を連れ込んでいるという確信もあったのだろう――」


 次にカメラの設置方法について、八手から指示があったようだ。


『設置場所については、あなたにも教えません。少しでも不自然な仕草があると、バレてしまう可能性があるから。

 だから、家に誰もいないときに立ち入らせてもらう。

 また、あなたとの接触は極力避けたい。万が一でも接触しているところを見られたら、計画を考え直す必要が生じるから。

 カメラを設置するのは、五月十三日の午前十時頃にしたいと思っています。

 あなたの夫は夕方まで仕事で不在でしょうから、あなたには九時半頃から十二時くらいまで、外出してもらいます。

 

 またお願いですが、家の鍵を1つ貸してください。合鍵でも何でもいいです。

 設置するときと、用が済んで撤去するときのため、一週間くらい貸してもらいたい。

 十三日、外出する際どこかに隠し、その場所を教えてください』



 以上が、八手からのお願いと指示。

 そして、十三日。元嫁は指示のとおり外出すると、鍵を玄関の植木鉢の下に隠し、八手にメッセージを送ったという。


 その後、元嫁はカメラがどこに隠されているか気にしつつも、何事も無いように過ごす。

 もう一つの指示にも従い、息子には友達の家に遊びに行くよう勧めた。

 一泊してくるし、元旦那はどうせ飲みに行って帰りも遅いだろう。加えて、いつもお世話になっている友達の親に何かお礼を渡したい、と伝えると、息子は素直に応じたのだという。


 そして十五日。

 ホテルに入ったところまではさっき話したとおり。

 ツアーの相棒が男性であること、そしてホテルの部屋が二人部屋であることを知った直後、八手から電話があったらしい。

 尾行しているから、状況を全て把握しているのだろう。


『その男性と普通に部屋に入ること。そして、その写真をエレベーター側から撮るから、こちらを見ないように。

 また、男性に気付かれないようにしてほしい。なお、男性にこのことを話してもらっても構わない』


 元嫁はその男性、片桐かたぎりには話さなかったらしい。

 自分達夫婦のどうでもいい事に巻き込みたくないし、何より楽しく語り合えない気がしたから、と言っていた。


 その後、夕食に出たときに、再び八手から電話があった。


『部屋にカメラを仕掛けたい。もちろん、何も無いとは思うが、確実な証拠があった方がいいだろう。

 ただし、これは強制ではない。せっかくのツアー、最後まで楽しむのにカメラが邪魔になるのであれば、断ってくれてもいい』


 元嫁は、八手からの依頼に素直に応じた。

 何もやましいことは無いし、昨日までの二日間、カメラがある寝室で何事もなく過ごせた経験もあったから、だそうだ。


『部屋に忘れ物をした。友達が代わりに取りに行ってくれるから、鍵を渡してほしい。と、ホテルに電話するように』


「――これが、八手からの最後の指示だったという。その後のことは、今まで話したとおりだ」



 富久山ふくやまの長い説明が終わった。

 説明というよりは、まるでテレビドラマのように感じていた御手洗は、現実に戻り、ここまでの内容を振り返る。


「この話のポイント……まずは、浮気調査を持ちかけたこの『八手』という男。

 建築会社から聞いた防犯工事の依頼者と同じ名前ですから、KかあるいはKの協力者で間違いなさそうですね」

「そうだな。そしてこの八手という男の浮気調査をする目的――元旦那と元嫁から相応の報酬をもらう、と言っているが……実際は違うだろう。

 最後の動画の準備、あるいは中津江将太を連れ去るための準備、と考えてもいいのではないだろうか」

「……浮気調査の結果からわかるのは、この夫婦が離婚した、ということ。離婚に当たっては元嫁が有利になるように情報を偽造した、というところでしょうか?

 目的は、何でしょう……離婚をすることで中津江家の環境を悪化させて、中津江将太がいじめ加害者となる確率を高めるためでしょうか」

「それも一つあるかもしれない。だが、本当の目的は別にあると思っている。

 これらのことから、俺なりに、とある仮説を考えてみた。これは、あくまでも考えられる可能性の一つだ」


 富久山は、まるでドラマの続きを語るように、話を再開した。

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