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いじめられてみた  作者: ケト
捜査されてみた
35/65

35話 聞き取り結果(三)

 パソコンを操作すると、富久山ふくやまは、ある映像データを再生した。

 どこかの家の寝室だろうか。ベッドが二つ映っており、片方のベッドには一人の女性がうつ伏せになって、携帯電話をいじっているようだ。


「これは、元嫁から借りてきた。五月十七日、中津江なかつえ家の寝室の映像だ。

 元嫁もとよめがとある事情で、元旦那には内緒で撮影したというもの。

 夫婦喧嘩をただただ映したものだが、気になる点があったから、データを提供してもらった」


 寝室にもう一人、おそらく中津江大悟であろう男性が入ってきた。

 男は部屋に入るや否や、女に向けて怒鳴るように問いかけた。


沙妃さき、お前、一昨日のツアー誰と行ってたんだ?』

『なに? 友達と二人で、って言ったよね?』

『これはなんだ?』

 

 男は、手にした封筒のようなものから一枚の紙切れを取りだし、女に見せる。

 富久山が説明してくれたが、それは、元嫁と片桐かたぎりがホテルの同じ部屋に入る瞬間を捉えた写真だったという。


『これはなんだって? こっちが聞きたいわよ。なに……勝手に付いてきたわけ? 趣味悪っ、最低』

『うるせぇし、俺じゃねぇよ。なんか、郵便受け見たら入ってたんだよ』

『なにそれ……誰が、なんのためにこんな……』

『本当のことなのか?』

『……でも、何も無かった、のよ』

『はっ。信じられっかよ。いかにもお前が好きそうな男だよな。良かったじゃねぇか、帰ってからもずっと楽しそうだったもんな、この淫乱が』

『はぁ……。あんたにだけは言われたくないわ。あんたが昔から女癖悪いのは知ってる。仕方がない、これは病気なんだと思って我慢してきた。でも、もう我慢できない。

 あんたさ、あたしのことばっか言ってるけど、一昨日、この部屋に誰か入れなかった?』

『……あぁ? 入れてねぇよ』

『ここ半年くらいかな……掃除の度に、自分のじゃない女の髪の毛、何回か捨ててたわ。でね、何か嫌になって、仕掛けてみたの――カメラ』


 元嫁はそう言うと立ち上がり、化粧机の引き出しからDVDのようなものを取り出した。

 元旦那は部屋のなかを見回している。どうやらカメラを探しているようだ。


『んだよ、盗撮でもしやがったのか? カメラどこだ』

『さぁ。どこにあるのかはあたしも知らない。すごいよね、全然わからないんだもの』

『誰かに頼みやがったのか……ちっ。んだよ、面倒臭ぇなっ』

『あたしさ、自分で言うのも何だけど、結構我慢強いのよ。この映像、思い出したくもないけど、あんた達の気持ち良さそうな行為がしっかり映ってる。

 凄いと思わない? こんな映像観ても、あんたにあの写真見せられて、淫乱呼ばわりされなければ……今回も我慢してやろうって、そう思ってたのよ?』

『……』

『でも、もう無理。あんた、あたしと別れたいんでしょ? 今付き合ってる女と一緒になって、あわよくばこの写真突き付けて慰謝料でも取ろうと思ってたの? ほんと、最低』

『ちげぇよ、この写真は……まぁいいや。別れてくれんならありがてぇよ。KPOPだかのアイドルポスターとか、もう見たくねぇんだよ』

『……良い機会みたいね。じゃあ、離婚届、あんたが用意して、あたしの実家に送ってくれる? そのくらいしてよね。あたし、もうあんたの前には顔出さないから。荷物は……あんたが仕事行ってるときに取りに来るから、鍵は当分持っとくわ』


 そう言うと、元嫁はクローゼットからキャリーバッグを出し、服や化粧品など、目につくものを入れ始めた。

 何も言わずに苛立った様子で立つ元旦那を、こちらも何も言わずに睨みつけると、部屋を出ていったのだった。



 そこで、富久山により映像が停止された。


「この後、慰謝料やら親権やらの問題で、揉めに揉めた。結果、八月十日、親権を中津江大悟に譲り渡し、離婚が決まった。

 元嫁は、息子を引き取りたいという思いは強かったようだ。だが、元旦那は女癖だけでなく手癖も悪かったらしい。息子を引き取り今後も関わり続けることによる身の危険を感じたようだな」

「それで、気になるところと言うのは――元旦那の持っていた写真と、隠しカメラですか?」

「あぁ。まずは隠しカメラのことだが。元嫁に聞いたところ、設置されたのは五月十三日、水曜日のことらしい。

 そして『どこにあるのかはあたしも知らない』と言っていたように、設置を別の人物に依頼し、設置場所は知らされていなかったらしいな」

「別の人物……もしかして、富久山警部が言っていた重要な出来事のひとつ『浮気調査』ですか?」

「そう。元嫁は元旦那の浮気を知り、とある人物に調査を依頼していたらしい。その経緯を聞くと、依頼したっていう表現は正しくないのだが――」


 富久山はそう言うと、パソコンの画面に、別の画像を表示させた。



 何やら、いかにもなホテルに入る男女が写っている。

 男の方は、先ほど映像で見た中津江大悟であることは間違いない。

 一緒に写る女は、派手な服装で、二十代前半くらいだろうか。男とは一回り以上は年齢が違いそうだ。


「元嫁が言うには、五月に入ってすぐくらいに、見知らぬ相手からこの画像が送られてきたらしい。そして、併せてこのメッセージも送られてきたという」


 パソコンの画面が、メッセージのやりとりを写した画像へと変わる。

 送り主からはまず、端的なメッセージが三つ、送られていた。


『あなたの夫は半年以上前から浮気しています』

『あなたの夫は探偵に、あなたの浮気調査を依頼している』

『あなたから慰謝料をふんだくって離婚できたらいい、と公言している』


 そして、次のメッセージは、元嫁との接触を図るもの。


『こちらから電話をしてもいいですか?』


「元嫁が『はい』と返信するとすぐに、電話がかかってきた。

 電話の相手は男性で、八手やつでと名乗ったという――」

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