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いじめられてみた  作者: ケト
捜査されてみた
31/65

31話 富田家(一)

「あと、Kが発言したもので、どうでもいい情報が二つあります。整理してみますか?」

「お前の言うどうでもいいことが、本当にどうでもいいことだとわかった。答えは『要らん』だ」

「ひとつ目は、Kのメールアドレスです」

「言うんかい! ――それって、あれだろ? パパとママ、ラブラブ、ってやつ。もしそれが本当のアドレスでメールを送れたとしても、どうせ一方通行だろう」

「ですよね。『生きてますか? 生きてるならどこにいるか教えてください!』って送ったところで、『返事がない、ただの屍のようだ』で終わるのは目に見えていますよね。

 じゃあ、次に、ふたつ目ですが……火炎瓶事件のことは、どこまで報告に含めますか?」

「あぁ、既に終わった事件だからな。何の情報も無いし、それこそどうでも良いだろ」



 ――十月十六日、Kの生配信動画のあと、富田家に火炎瓶が投げられたその事件。

 動画でKが言っていたとおり、氷山警察署には監視カメラの映像データが保存されたDVDが送られてきたのだ。


 どう見ても、鋭意捜索中である『中津江なかつえ将太しょうた』の姿が映っていた。

 明確な動機があり、且つアリバイも曖昧なその少年。だが、証拠映像を前にしても断固として否認し続け、結果、罪を問うことができなかったのである。

 何の情報も得られず、納得のいかない結果に終わったため、まさに『置いといて』がぴったりな、もはやどうでも良い事件なのだ。

 


「あと、Kの居場所、あるいは遺体の場所に関してですが。やっぱり『富田家』の中が怪しいと思うんですよね。もしかしたら中津江将太が監禁されているかもしれないですし」

「俺もそう思うし、捜査本部のみんなが思っていることだろうな。でも『事件に巻き込まれた』『容疑者じゃない』一家だから、そう簡単には家の中に立ち入れない。

 もしも、昨日の捜査で富田家の足取りが掴めていれば――聞き取りと同時に『鍵をこじ開けて家の中を確認することの許可』も得られたかもしれないけどな。

 それが難しい以上は、家の中に入るには『中津江将太の行方』あるいは『K』に関する情報がそこにある、という蓋然性がいぜんせいが必要になる」


「とにかく。Kが賃貸契約した空き家の捜査結果を待ちますか」

「あぁ。結果として考えられるのは『Kを発見』『遺体を発見』『何も無い』の三つだな。

 中津江将太の捜索に進展が望めるのは、Kを発見した場合だけだろう。

 もしも遺体を発見したら、第三者が関わっている可能性が高くなる。捜索の範囲をさらに拡げる必要が出てくる。そしてこれは、何も無かった場合にも言える。

 ただし、何も無かった場合、『富田家の中に何かがある』という疑いが大きくなる」

「Kの素性に関する情報が得られず、空き家の中にも何も無かったら――すぐにでも富田家の中を確認すべきでしょうね。あとで富久山ふくやま警部に提案してみましょう!」


 警察本部刑事部捜査第二課の富久山は、捜査本部では捜索班の班長的な立場であり、全体のとりまとめも担当している。

 富久山から警察本部の部長へと伺いを立て、緊急的な捜査であると認められれば、家に立ち入ることも可能となるであろう。



「今は十一時ちょうど、か――おそらく、空き家捜査にはまだしばらく時間がかかるだろう。それまでの間、俺らも今できることをするか」

「今できるのは、大手防犯会社と建築会社への聞き取りですかね。主任はどっちに電話しますか? 防犯会社でいいですよね?」

「どっちでもいけど……たぶん、防犯会社のほうが楽だぞ? 電話して『関係無い』って言われて終わりだろうからな」

「建築会社も、電話ではとりあえずアポとるだけですから。電話だけして、一緒に聞き取り行きましょ」


 御手洗が建築会社への電話を終えると、すぐに聞き取りに向かうことになった。


 現在の時刻は十一時五分。

 十二時までなら、富田家の工事を担当した社員が出社しているということだったので、急ぎ車で向かう。

 ちなみに防犯会社のほうは、車中の会話で『ぼ』の字も出ないほど何も無かったのは言うまでもない。



 十一時二十五分。

 佐藤建築に到着すると、窓口の女性がすぐに担当者を呼んでくれた。

 やって来たその人物は、借りた名刺に書いてあったとおり、亀田かめだと名乗った。


「まずは確認ですが。八月に富田大介宅の防犯工事を請け負ったのは、佐藤建築。そして、担当したのは亀田さんで間違いないですか?」

「はい。八月一日に工事を請け負いましてね。終わったのは、九月十一日でしたね」

「工事契約の手続きから、完了までのことをお話いただけますか?」

「七月中旬くらいですかね。八手やつでと名乗る方から電話がありまして。防犯工事をお願いしたい、という内容でしたね。

 工事の中身を聞くと、何やらえらく頑丈にしてほしい、というざっくりとしたものでしたので。一度詳しく話をしましょう、ということになりましてね。ここで話をしたんです」


 亀田は、今いるテーブルを指さした。

 てっきり、電話や書類だけでの契約かと思っていたのだが、直接の接触があったようだ。


「外壁とか雨戸とか、カタログを見ながら話をしたんですが。どれも一番頑丈なものを選んでいましたね。値段もかなりお高くなりますよ、と言ったんですが、『プライスレス』と、にっこり笑って言っていたのを覚えています」


 御手洗は、どんな人物だったかを聞きたくて仕方が無かった。

 だが、まずは話を全部聞こう、という片平の目線に止められた。


「現場には、八月三日に入りました。外壁は足場を組み立てれば、外から作業できるんですが――雨戸とか、一部の工事は家の中から施工する必要がありました。ですので、家に立ち入る日時を決めたい、と相談したんです。

 そしたら、『工事している間は近くの空き家を借りることにしたから、自由にやってほしい』と言われました」


 空き家――ここでその単語が出るとは思わなかった。

 どうやら、いじめられる舞台として使うだけの箱モノでは無かったようだ。


「結果、いろいろと制限無く工事できましたね。当初は十月までかかる予定だったんですけどね。九月十一日に竣工できたんです」


 ゆったりと間をとり話をする亀田に、我慢ができなくなったのか。

 ついに、片平が質問を始めた。

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