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いじめられてみた  作者: ケト
いじめられてみた
3/65

03話 記念動画の前に説明してみた(一)

 ――暗転した画面下部の両側から登場したのは、顔だけのイラストキャラ。


「こんばんはー、ゆっくりシロだぜ」

「ネロよ」

「この動画の進行役を任されたんだぜ。二人でケッチャンの配信動画を、このゆっくりボイスで説明したりつっこんだりしていくぜ。あと、さっきまでの猫被り配信主のことを毎回ケッチャンて呼ぶの面倒臭いから、いつもどおり『ケチ』って呼ぶぜ。ケチはその名のとおり守銭奴だからな、しっくりくるんだぜ」

「そうね。ワタシは本当なら『ケ』って呼んでもいいくらい面倒臭いんだけどね」

「どんだけですか。臭すぎませんかね? ――って、進まないから早く観ていこうなんだぜ。なんでも、今回は紙芝居風らしいな」

「そうね。ところでケチのやつ、準備費用が言えないって、どういうこと? ケチのくせに大金つぎこんでるってことかしらね。引きこもりニートボールなケチがそんなにお金持ってるわけないでしょ?」

「ニートボールって何ですか? てか、ちゃんと働いてるぞ。しかも、聞いたところによると、この半年の間は節約のために『もやし』しか口にしていないらしいぞ?」

「えっ……そ、そんな……もやしなんて買うお金あったのね。てっきり河川敷に生えてる雑草が主食かと思ってたわ」

「そのくらいあるわーい。なんならちゃんと家賃も滞納しないで払ってらーい!」

「そうなのね。じゃあ、今回の企画に、何百万円もお金かけたってことかしら?」

「えっと、ネロさん? いきなりなんて金額出してるんですか? け、桁が違うよ……」

「そりゃそうよね。ま、ケチのことはどうでもいいわ。さっさと紙芝居観ていきましょ」

「うむ、じゃあ紙芝居に戻るんだぜ」

「戻るって、まだ始まってないじゃない」

「うむ……始めるんだぜ」



 シロとネロの二人が、定位置と思われる画面下部の両側に落ち着いた。

 すると、画面の中央には紙芝居風のイラストが表示される。



~一ページ~

 タイトルである『いじめられてみた~記念動画の前に~』が記されている。

「ここはそのまんま、ただのタイトルです」

「まぁ、タイトルにつっこむつもりはないわ」

「じゃ、次いきますよ」



~二ページ~

 制服を着た男子が描かれている。

『少し昔、四月八日、水曜日。あるところに高校一年生になったばかりの男子『ミタ君(仮称)』がおりました』


「まさか『やってみた』のミタ? 安易すぎないかしら? しかもつい半年前じゃない。何、スコシムカシって。語呂はすごくいいけど」

「名前に関しては、企画の趣旨がよくわかるし、何より呼びやすいでしょ? 感情だって移入しやすいんだい!」



~三ページ~

 教室で読書するミタ君と、遠くで不気味に光る三対の目が描かれている。


『入学して二日目、まだ咳払いとため息しか口にしていないミタ君は、クラスのとある三人からの妙な視線に気づくのでした。

 引っ込み思案なミタ君は視線には気づかないフリをして、読書キャラを通そうと必死なのでした』


「必死こきすぎて本を逆さまに持ってたら面白いんだけど、普通みたいね」

「ふふっ、実はブックカバーが上下、さらに裏表逆なんだぜ、これが」

「いや、それはただの本屋のミスでしょ。てか裏表逆はさすがに気付くでしょ、ってもしかしてこれがいじめ?」

「いやいや、まだ序盤も序盤。レーベの村にも着いてないですよ?」

「ちょっと、その例え昭和臭いわね」

「じゃあなんですか、最新の例えを教えてくださいなんだぜ」

「序盤と言ったら、そりゃあ……まぁ、ルイーダさんの酒場でしょ?」

「ふんっ(どや笑い)」

「それより、妙な視線? 何……そっち系の男子なの?」

「そ、そっち系ってなんですか!?」

「ほら、四人揃えば六通り、だっけ? そんなことわざがあったじゃない」

「それって、三人寄ったらで、文殊の知恵のやつでしょ? 何を変なこと言ってるんですか。ちっちゃい子も観てるかもしれないんだぞ!」

「コンビネーション四の二は六ってことでしょ? 数学の組合せのことじゃない。ワタシの話ってば、勉強にもなるって評判なのよね」

「うっ……ま、まぁとりあえず、いじめっこっぽいのが登場したということで。次、いきますよ」



~四ページ~

 下駄箱からスニーカーを取り出すミタ君が、三人の男子生徒と話している様子が描かれている。


『高校入学から三日目。四月十日、金曜日の放課後のことだった。

 その日のノルマである、本一冊の読破もお昼休みに達成したミタ君。

 当然ながら放課後にやることも無いため、早々に帰宅しようとしていた。


 下駄箱からスニーカーを取り出したところで、ふいに話しかけられた。

 声の方を向くと、クラスメート『アー』『ベー』『ツェー』の三人がこちらを向いて立っていた。

 話しかけたのは真ん中に立つ『アー』のようだ。

 どうやら、ミタ君がゲーム好きで、しかも手に入りにくいゲーム機を持っているのを噂で聞き、プレイ画面を見たいらしい。

 高校生活初めての、そしてゲーム好きな友達ができるかもしれないと思ったミタ君。二つ返事で了承したのであった』


「うむ、今のところは悪い展開じゃない気もするわね。ゲイむ仲間ができそうで良かったじゃない。ところで三人の名前、普通にエー、ビー、シーで良くない? なんでドイツ語なのよ」

「ただ単にカッコいいからですよ。てか、さらっとゲイむとか言うの止めい」



~五ページ~

 部屋でゲームを囲む四人の男子生徒が描かれている。


『ミタ君の部屋へと三人を招き、ゲーム機をお披露目したミタ君。

 映像の綺麗さ、そして面白さに、アーベーツェーの目はずっと輝いていたそうな』


「うーん、まだいじめられないの? 早くしないと見てくれてる人に飽きられちゃうわよ」

「まだ五ページ目なんですけど。結構さくさく進めてるし、もうちょっと我慢してくれません?」

「あっ――ほらっ、視聴者の大半が金曜のロードショーを観る時間が長くなってるわよ」

「げーっ! つ、次いくぜ」

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