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いじめられてみた  作者: ケト
捜査されてみた
27/65

27話 K班(一)

 午後七時七分。

 残りの動画、『いじめられてみた』四十五分、『対処してみた』八十八分を観終えた御手洗みたらい

 立ち上がり大きく背伸びをすると、何度か屈伸をした。


 隣の席では、相棒も動画視聴を終え、自筆のメモに目を通している。

 捜査本部のある会議室内を見回すと、捜索班の四人が面と向かい、今日の成果確認をしているようだった。


 トイレに立ち、本部に戻ろうとした御手洗は、帰ってきた先行捜査班の二人と廊下で出くわした。

 捜査の収穫があったかどうか、その表情からは判断できない。


 一緒に会議室へと入ると、二人はそれぞれが手に持った大きめのビニール袋を顔の前に掲げた。

 どうやら、捜査本部への差し入れのようだ。

 袋からおにぎり三十個、菓子パン十個、ペットボトルのお茶八本が取り出されると、会議室内からは感謝のどよめきが上がったのだった。



 御手洗を含む、Kの素性捜査班の四人。おにぎりを食べながら、本日の捜査の進捗と今後の進め方について、軽く話し合った。

 およそ十分の後、それぞれの班で本日の成果をとりまとめ、明日の朝九時から四人での報告会をすることに決まった。


 その後、相棒と約十分をかけてメモの突き合わせを終えると、分担してメモのデータ化に取りかかる。

 データのまとめかたは、メモをした捜査対象となるモノ、事柄を表にリストアップし、登場した日にち、入手できる場所や方法などの情報を付け加えることにした。


 午後九時半。

 それぞれの作業が完了し、二人のデータをひとつに統合したところで、今日の作業は切り上げることにした。

 先行捜査班の二人は、十分ほど前に作業を切り上げ、既に帰宅していた。



 

 十一月十二日、木曜日。午前九時。

 捜査本部の一角で、K班の報告会が始まるところだった。

 なちなみに『K班』とは、Kの素性捜査班の略称。昨夜の作業中の、何気ない会話で決まったものだった。


「まずは先行捜査班の報告から始める。じゃ、片平かたひらさん、よろしく」


 まとめ役を務めるのは、警察本部刑事部捜査第二課の大槻おおつき警部補。

 そして、報告役を請け負った片平は、氷山ひやま警察署警備課の警部補で、御手洗の直属の上司だ。


 片平は、自身のパソコンを本部に支給された三十二インチのディスプレイに接続すると、報告データを映し出した。

 このスタイルは、会議での紙の使用を極力減らそうと署内で勧められているもの。捜査本部でも暗黙の了解として取り入れられていた。

 第一回本部会議の資料こそ、警察本部により紙媒体で作成されていたが、第二回からは紙の存在が消失するに違いない。



「では、報告を始める。明日の本部会議での報告を想定したつくりにしているから、捜査内容の概要からの報告となる。加除修正するところ、気になるところがあれば、その都度教えてほしい」

 

 片平はそう言うと『K素性捜査概要』と書かれた画面を表示させた。

 

「まず、K素性捜査の目的は『Kの素性を明らかにすること、ひいては、Kの生死を確認すること』だ。

 この捜査の結果からは、捜査本部設置の目的である『行方不明者の捜索』に関する有力な手がかりが得られる可能性が高いと考えられる。


 Kの素性を明らかにする手段としては、まず、Kが残した手がかりである『配信動画』を全て確認することが挙げられる。

 具体的には、Kが購入したもの、接触した人物、関わった事柄を洗いだし、その情報からKの素性を辿ること。


 動画でピックアップした捜査対象に優先順位をつけたのが、この一覧表。今は空欄だが、今日の二人の報告結果を使う予定だ」


 御手洗たち二人の報告結果と、今日の捜査結果を追加すれば明日の会議資料にもなる――という構成に仕上げているあたり、さすがは警部補達と言ったところだ。

 そして、片平からの説明は続く。



「先行して始めたのは、『富田一家』の身辺調査だ。

 Kと接触した可能性が極めて高く、Kの企画動画に大きく巻き込まれているこの一家への聞き取りを優先事項と捉えた。

 現在は世界旅行に発ったとされるため、まずはその足取りを追うことになる。加えて、この一家の周りにもKに繋がる手がかりがあると考えた。


 富田一家が現在どこにいるのか、動画の情報ではわかりようがない。

 よって、一家の足取りを追うために、一家の周りで変わったことがないか、情報を得ることにする。

 まずは富田家の近隣住人、そして、富田家の家族や職場、友人等への聞き取りを行うことにした。


 報告は、富田一家に関する情報から始める。これらの情報は、全てが聞き取りにより判明したものだ」


 画面には、富田家三人の顔写真、氏名、年齢などの最低限の情報が表示された。

 聞き取りでは、さらに詳細な情報を掴んだに違いない。

 ただし、あくまでも、富田家は容疑者ではないのだ。だから、このくらいの情報が妥当なのであろう。



「父、富田大介。四十四歳。福須磨ふくすま市出身。氷山市役所の上下水道課に勤務しており、役職は総務係長だ。

 次に母、恵子三十九39歳。海津かいづ市出身。出版社に勤務していたが、出産を機に退職し、現在は主婦である。

 そして長男、恵介十五歳。氷山高校の一年二組。四月から半年間、不登校が続いていた。


 富田家は、氷山駅から北北東、約二キロメートルに位置する住宅地内にある。

 新築建て売りの一戸建てを五年前に購入。家の出入り口側は市道に面し、その他の三方向は住宅に面している」


 富田家の概要説明が終わると、次に、聞き取りの結果報告へと移る。

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