25話 動画調査(二)
四月二十四日、十一回目の動画。
ニューケッチャンとやらに変わってからは二回目の配信だ。
情報量が多くなるのでは、と推測し、ここからは動画の概要もおさえてみることにする。
ここからの三回分は『比べてみた』というシリーズが続いた。
十一回目は『百メートル、走るのと落ちるのとはどちらが速い?』という実験番組のようなもの。
ただし、Kが実際にやってみたものではない。
過去にテレビで放送されたオリンピックの百メートル決勝と、高さ百メートルのバンジージャンプに挑むお笑い芸人の動画を並べ、ヨーイドンで比べるものだった。
落ちるほうが速い――という結果で、この回は終わった。
十二回目は『アニメキャラの最強は誰?』というもの。
国民的アニメのキャラクター三人の強さを解説し、実際に三人で戦ったら誰が生き残るか。ケッチャンの独断と偏見で決定するというもの。
選ばれたキャラは、ヤサイ人のマゴゴソラと、麦汁のノレフイ、亀無の警察官リョウツーであった。
星が爆発して宇宙空間に放り出されても生き残りそう――という理由で最強キャラに選ばれたのは、ただの警察官だった。
十三回目は『事件遭遇数・死体遭遇数が多いのはどっち?』という動画。
人気漫画の探偵キャラ二人、どちらが事件と死体に遭っているかをカウントし、比べるものだった。
一人目は、見た目は小学一年生、中身は高校三年生という超絶童顔の名探偵コナソ。
二人目は、ジッチャンが名探偵、じゃあお父さんは何してる人? でお馴染みの名探偵、カネダイチハジメちゃん。
原作コミック全てに目を通してカウントしたというその結果は――かなりの頻度で外出し、そのたびに事件と死体に遭遇する童顔の勝利であった。
犬も歩けば棒にあたる。コナソが歩けば事件にあたる、という言葉で動画が締められた。
このシリーズ――というよりも、ニューケッチャンとやらになってから、動画には二つの変化が見られた。
一つ目は、画面の右下に登録者数のカウンターが追加されたこと。
おかげで、今やわかりようがないと思われた当時の登録者数を知ることが出来るのだ。
ちなみに十一回目は『1人(泣)』、十二、十三回目はそれぞれ『53人(喜)』『2598人(歓喜)』と表示されていた。
そして、二つ目。
字幕や別の動画を表示させたりと、動画の編集がされるようになったのだ。
シロとネロという、顔だけのゆっくりボイスのキャラが登場したのもこのシリーズからだった。
なお、この三回の動画で購入リストに追加されたモノは、『漫画約二百冊(電子書籍の可能性あり)』だけだった。
その後は、
『超でかい紙で等身より大きい鶴を折ってみた』
『もやしを育てて一週間過ごしてみた』
『豆苗を育てて一週間過ごしてみた』
などの動画が続き、視聴は六月までの二十回分を終えた。
結局、この六月までの動画でメモに追加されたモノは、片手で数えるほどしか無かった。
その中で、最も大きいモノは十九回目、六月十九日の動画に登場した。
そのタイトルは『いろいろ凍らせてみた』というもの。
タイトルのとおり、いろいろなモノを凍らせるというもの。
通常だと冷凍庫には入れないようなもの、例えば、小さいものではリップクリームやスティックのり。大きいものではスイカ丸々一個や、濡らして長辺で丸めたバスタオルなどが凍らされた。
見事に凍り、棍棒のような凶器と化したバスタオルを無邪気な様子で振り回すK。
ここで初めて下半身も映ったのだが、最後の動画と同じで、体型を一切予測できない濃紺の、大きめのスウェットを着用していた。
また、背景に壁以外のモノが映り込んだのもこの回だけだった。
画面右奥には、シングルサイズと思われるベッド。白のフレームに厚めのマットレスがのった、何の変哲の無いもの。
そして左奥には、スーパーやコンビニの冷凍コーナーに置いてあるような、業務用の大きい冷凍庫があった。
この冷凍庫こそ、最も大きく値段も張りそうなモノだったのだが――まさか、この動画のためだけに購入したものなのだろうか。
御手洗は『業務用冷凍庫』を追記すると、どうでも良い情報だが『ベッド派』ともメモをしておいた。
七月に入ると、御手洗が目にしたことのある動画が続く。
イラストキャラの掛け合いに、何度も笑いのツボを押される御手洗。だが、メモを取ることで任務中であることを意識し、何とか堪えることに成功する。
画面に食い付くように観ていたところ、時間はあっという間に過ぎ去り――四本の動画を残すのみとなった。




