21話 自殺してみた
画面のカウントダウンが0分10秒00を表示した。
9秒、8、7、6、5、4、3、2、1――
画面は、暗転する前と同じ映像へと戻った。
画面には既に真っ黒いぼかしが二か所に表示されている。
ただ、前とは一つ、絶対的に異なるものが映し出されていた。
映っているのは、青白い顔をした少年……だろうか。
目を涙で腫らし、死相感の漂うその顔。
男性なのか、女性なのか、幼いのか年をとっているのか、その全ての判別が難しい。
震えた口が開くと、涙とともに、細くかすれた声が溢れ出る。
「っ……うっ……あっ…………
お、かあさん……おとう、さん……ごめ、ん……なさい…………
もう、な、何、も……考えたく、ない…………
産んでくれて……だ、大事に、育ててくれて、ありが、とう……」
泣きながら、嗚咽とともに声を絞り出すと振り返り、画面上部の真っ黒いぼかしへと歩み始める。
誰も、止めるものはいない。
誰も、止めることは出来ない。
椅子の上へと上がる。
服装はいつもと変わらない、大きめのグレーのパーカーに、濃紺のスウェットパンツ。
椅子の上に立つと、首から上が真っ黒いぼかしに隠れた。
泣きすする声と嗚咽が、ぼかしの中から小さくだが、聞こえる。
少しの間、静止画のように、その人物に動きは無かった。
死ぬ覚悟を決意したのであろうその時間――本人には絶望的に長く感じたであろうその時間は、たったの二十秒だった。
配信時間は残り約四分。
足が、椅子を蹴飛ばした。
椅子は横に倒れ、下部のぼかしの中へと吸い込まれるように消えた。
その瞬間『うっ』という声とともに、その人物の体が宙に浮いた。
少しの間、足がバタバタと動き、手はぼかしの中で激しく動いているようだった。
やがて足の動きが止むと、手がぶらりと垂れ下がった。
すぐに足先も、床に向かってまっすぐに垂れ下がった。
その人物は、一切動かない。
天井から吊られた、ただの動かないモノへと変わった。
配信時間、残り三分――映像は変わらない。
残り二分――映像は変わらない。
残り一分……一秒……ゼロ。
画面が、暗転した。




