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いじめられてみた  作者: ケト
いじめられてみた
21/65

21話 自殺してみた

 画面のカウントダウンが0分10秒00を表示した。

 9秒、8、7、6、5、4、3、2、1――



 画面は、暗転する前と同じ映像へと戻った。

 画面には既に真っ黒いぼかしが二か所に表示されている。

 ただ、前とは一つ、絶対的に異なるものが映し出されていた。


 映っているのは、青白い顔をした少年……だろうか。

 目を涙で腫らし、死相感の漂うその顔。

 男性なのか、女性なのか、幼いのか年をとっているのか、その全ての判別が難しい。


 震えた口が開くと、涙とともに、細くかすれた声が溢れ出る。


「っ……うっ……あっ…………

 お、かあさん……おとう、さん……ごめ、ん……なさい…………

 もう、な、何、も……考えたく、ない…………

 産んでくれて……だ、大事に、育ててくれて、ありが、とう……」


 泣きながら、嗚咽とともに声を絞り出すと振り返り、画面上部の真っ黒いぼかしへと歩み始める。

 

 誰も、止めるものはいない。

 誰も、止めることは出来ない。



 椅子の上へと上がる。

 服装はいつもと変わらない、大きめのグレーのパーカーに、濃紺のスウェットパンツ。


 椅子の上に立つと、首から上が真っ黒いぼかしに隠れた。

 泣きすする声と嗚咽が、ぼかしの中から小さくだが、聞こえる。

 

 少しの間、静止画のように、その人物に動きは無かった。


 死ぬ覚悟を決意したのであろうその時間――本人には絶望的に長く感じたであろうその時間は、たったの二十秒だった。



 配信時間は残り約四分。

 足が、椅子を蹴飛ばした。

 椅子は横に倒れ、下部のぼかしの中へと吸い込まれるように消えた。


 その瞬間『うっ』という声とともに、その人物の体が宙に浮いた。

 

 少しの間、足がバタバタと動き、手はぼかしの中で激しく動いているようだった。

 やがて足の動きが止むと、手がぶらりと垂れ下がった。

 すぐに足先も、床に向かってまっすぐに垂れ下がった。


 その人物は、一切動かない。

 天井から吊られた、ただの動かないモノへと変わった。



 配信時間、残り三分――映像は変わらない。

 残り二分――映像は変わらない。

 残り一分……一秒……ゼロ。

 

 画面が、暗転した。

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